4-7 三人目、森人とする旅
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さすがに自分がエルドレッドと言う、面倒を押し付けているのが分かったのか、里長は俺に旅費を少し用立ててくれた。
親方からの旅費は借りなので大変有り難い。でもどこかで稼げる方法を探さないと後で苦労する事になるかもなぁ。
旅の経路は親方達がイヒシンに帰るのに合わせて、王都まで乗せてもらうことになった。出来れば王都には入りたくないが、余計な事を言うのも面倒だし、どちらにしろ乗り合い馬車を探さなければいけないので、仕方ないと諦める。
エルドレッドも森人族として、面倒事があるのでは? と心配したが、本人は王都は初めてでもないのに観光気分なのか、冒険者組合に行くと胸を躍らせているみたいだ。まだ行ってなかったのか?
……でもそうか、獲物を狩って、毛皮なり肉なりをエルドレッドに金に換えてもらえばいいのか。ちょっと俺の中のヤツの価値が上がったかも。
色々と旅の準備をし、ついでに森人族が作った弓矢を仕入れた。思ったより軽く、手に馴染む良い弓だ。森の中で弓を試し撃ちしてるとエルドレッドがちょっと驚いてた。まさか使いこなせるとは思ってなかったらしい。
出来れば槍も欲しいんだが、それでは完全に冒険者に見えてしまうので諦めた。でもエルドレッドの弓と魔法、俺の弓と剣で大丈夫だと思いたい。ある予感がして、狼の長に付いて来ないでね? と先にお願いしておいた。
ちなみにエルドレッドがエルドと呼んでいいとか、ふざけたことを抜かしたが、絶対呼ばない。
準備が終わり、親方達がこの里に来てから六日後、親方達の馬車に乗り込んで出発した。里長とウェルが見送りに来てくれて、必ず帰ってくると心に誓った。
ウェルとの輝かしい未来のために!
◆◇◆◇◆◇◆◇
里からアチクの西の村まで、森の狼の縄張りの為か魔獣は見ないし、熊などの獣も居なかった。親方に来る時に通ったアチクの様子を聞くと、冒険者や傭兵は多かったが、兵士や軍の関係者は少なかったと言われた。
やはり勇者が北の戦線を退いた事が影響しているらしいな。魔獣は冒険者と傭兵、他に森人族に任せればいいし、戦人族からの攻撃も無いんだから、軍は居なくたって問題ないからな。
まだ太陽が高い早い時間に西の村に着いたので、どうするのかと思ったが、このまま先に進んでも宿を取っても、どちらにしろ一回は野営しなくてはならないからと村で一泊する事になった。
森人の里では手に入らなかった塩や香辛料とか、保存食等を仕入れておいた。その後は宿の酒場でほどほどに酒を飲んだ。飲み比べてはいけないヤツが居るからね。
その翌日、村を出ると完全に樹木が無い道を進んだ。あるのは収穫が進んでいる麦畑くらい。狩りをする機会も無く、途中で質素な食事で野営をし、次の日の夕暮れ近くにアチクに入った。
初めて入ったアチクは人が多いが、その人種は戦闘職の者ばかり、この街に入る前から俺はヒゲを伸ばしていたが、ついでに眉も薄く剃り、髪の毛も短くしておいた。親方に眉が薄いと怖えなと言われて凹む。
さりげなく街の中を見渡しても知らない顔ばかり、まあ今は魔獣狩りが主な仕事のはずだ。腕に自信がある者しか居ないのだろう。エルドレッドも魔獣狩りに行きたがったが、先を急ぐと言って諦めさせた。
街の酒場で耳に入った噂話によると、盗賊に襲われた東の村は、魔獣の討伐が本格的になった頃、勇者の活躍で盗賊は捕まり、その後は復興しているようだった。捕まって奴隷にされた者や、逃げて遠くに行ってた者が戻って生活を始めたらしい。
イマニアムの東の村に避難してた村人達ももしかすると、今の話を知って自分達の村に戻ったかも知れないなと脳裡をよぎった。どちらにしろ勇者は今までも活躍してたらしい。出来ればそのまま勇者らしい行動をして欲しいと思う。
アチクの街の雰囲気で、王国軍が積極的に行動してないことを確認し、次の朝早く王都に向かって出発した。
狩りなんてあてに出来ないから、パンとか塩漬け肉とか少しまともな食材を仕入れておいた。保存食だけだと味気無いから。
道中は親方達に食事を任せると酒のつまみみたいになるので、試しにエルドレッドに任せたら、シンプルと言えば聞こえはいいが、工夫の無い焼いただけの物を出された。女子が居ないだけでこんなに地味な食事になるとは……
すべてを諦め、俺が食事を作った。お前ぇ、料理人の方が向いてるかもな。と親方に言われて泣けてくる。でもそっちでもいいなと思い直す。俺、ウェルと結婚出来たら料理人になるんだ。
途中、例の現場の森が見える場所を通った。そう言えば、あれからどうなったのだろう? 未だに熊の魔獣でも探しているのだろうか? 頑張ってケイン君(仮)のかたきを討って欲しいものだ。
ちょっとあの森で狩りしよう! と五月蝿いエルドレッドを黙らせて、『北の門』の城郭都市を抜け、王都に入る。
◆◇◆◇◆◇◆◇
親方達は王都の鍛冶組合本部に行くと言うので、俺もそっちへ行きたかったのだが、エルドレッドが冒険者組合に行きたいと駄々を捏ねる。おまえは子供か! 一人にさせると何か危険な予感がしたので、親方達とイヒシンでの再会を約束して別れる。
さすがに建物の中には入りたくなかったので、エルドレッド一人に行かせる。何をしたいのか分からなかったが、絶対余計な依頼を受けるなと厳命した。あいつは大丈夫だろうな?
近くの食事が出来る酒場で待ってると、何人かの見覚えがある冒険者が視界に入る。顔をそちらに向けないように気をつけていると、エルドレッドが戻ってきて、あれやこれやと依頼が沢山あったと興奮していた。
やはり森人族は狩人として有名なのであろう、組合でも注目されたようだ。今でも酒場に居た冒険者が、チラチラとエルドレッドを見ているのが分かる。一緒に居る俺まで注目されては堪らないので、急いでそこを離れる。
とりあえず東に向かう乗り合い馬車を探し、適当な宿に泊まった。馬車でそのまま東の街イグザギまで行くかどうするかと話し合ったが、その手前の東の村までにして、そこから狩りをしながら向かう事になった。
久しぶりに泊まる王都の宿は、さすがに高級な感じで代金は二人合わせて銀貨三枚を取られたが、食事は旨いしベッドもふかふかだった。エルドレッドのテンションが異常なくらいに高いのが気になる。鼻血出して倒れなければいいが……
朝起きると、エルドレッドがもう準備を終えていて、すぐに出発しようと急かしてくる。朝食もまだ取っていないし、第一、馬車の時間にはまだ余裕がある。子供のようにはしゃぎ回るエルドレッドを落ち着かせるのに苦労した。
朝食を取った後、パンに燻製肉とチーズを挟んだ物を二人分とぶどう酒を用意してもらい宿を引き払う。まだ馬車の出発する時間には早かったので、朝の王都の中を露店を見ながら散策する。
エルドレッドは何かと露店で立ち止まり、小物を買っていた。どうやら里の者へのみやげにするらしい。……それは良い考えだね。俺も慌てて髪飾りなどを物色した。あの髪の色に合うのはやはり緑系統な方がいいのかな?
途中で真剣な買い物になってしまい、馬車の出発に遅れそうになってしまった。俺がしっかりしないと二人とも締まりが無くなってしまうな、気をつけよう。
荷物を積んだ荷馬車に客四人が乗り込む。俺達と、村に帰るのかそれらしい服装の父親と男の子の親子二人だ、子供はまだ十に届いて無いように見える。家族におみやげでも持って帰るのであろう、持っている袋がいっぱいだった。
エルドレッドの格好は弓と腰にある剣、俺も同じだが、ぱっと見は職人風に見えるかも知れない。いや、実際に見習いとはいえ職人なんだが。一緒に乗り合わせている俺達を冒険者とでも思ったのか、男の子がチラチラ見てくる。
飴は……持ってないなぁ、こういう時はどうすればいいんだ? ふと隣を見ると、エルドレッドが指先から水を出したり、それを凍らせたりして子供を驚かせている。父親は遊んでもらっているのが分かったのか、にこにこしていた。
くっ……! 顔のいいヤツが子供の扱いも上手とか。いつもは残念なヤツなのに……、何故か俺は敗北感でいっぱいだった。もしも子供が女の子だったら、エルドレッドを間違いなく殴っていたであろう。嫉妬の怒りで。
途中での野営の時、御者と一緒に五人で食事した。材料を俺達からだして御者に料理してもらった。金は要らないと言ったからか父親は申し訳なさそうにしていたが、気にするなと言っておいた。
べ、べつに子供に好かれようと思ってやった訳じゃない。
次の日、日の入り後のまだ少し明るい内に村に入れた。村というには大きい。話では街にする予定だったが、地形的に無理だったので、イグザギまでの中継地点としての場所にしたらしい。
その後、御者と親子に手を振って別れ、さっさと宿を取り、食事して眠る事にする。明日からは狩りをしながら東の街に向かうので、それなりに大変になるだろう。出来れば馬車があるといいんだけどね。
この世界に来てから、まだ海は見てなかったので、少々楽しみではある。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。




