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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第四章 三人目と森人
34/46

4-6 三人目、森人と子と昔話

予約投稿となります。


読んでいただけると、うれしいです。

 とりあえず、怪訝そうな表情の皆を何でも無いと言って誤魔化し、それからの話を続けてもらった。

 

 王国軍は山の南側まで下がり、それからは魔獣相手の戦闘を続けているらしい、勇者はあれからは見てないとか。戦人族は監視者を置いて王国軍を見張っているが、今は静観するそうだ。

 

 そんな感じで王国軍と勇者の話は終わり、里長達は取引を始めた。森人族からは麦や芋、チーズや肉を保存加工した物。戦人族からは……驚いた事に、魚の塩漬けや干物、貝や海老みたいなのもあった。もしかして、海で漁をしてる?

 

 森人族の里では見なかったので知らなかったが、保存食として食べられているらしい。しかし、他所の人間、今の俺みたいな者には普段は見せないらしい。確かに海とは離れている里に海産物があったら変に思われるよな。

 

 今のような状況で無かったら、里に招いて歓迎しているのかも知れないな。俺は戦人族に聞きたい事があったので、里長に許可を取り、戦人族のまとめ役……クライヴと言うらしい。クライヴに質問した。

 

「戦人族は昔から北の大地に住んでいるらしいが、他の場所に移住しようとしなかったのか? 例えば他の地域に移り住みたい者だって居たんじゃないのか?」

「……強制した訳ではないが、今までそのような者は居なかった」

「北の大地が住みやすいからか? 他の地域と交流が無さ過ぎて、王国からは魔獣を操っている魔族呼ばわりされているぞ」

「甚だ不本意ながらそう言われているらしいな。我らは他の者が思っているのとは逆で、魔獣を山から出さないようにしてきたにも関わらずにだ。だが、我らも力が衰えたのか、戦える者にも限界があった」


 魔獣が山から現れやすいのは昔から、その昔から戦人族は魔獣を北側で狩っていたらしい。しかし、最近の森人族の話のように、魔獣にも強い固体が現れ始め、その魔獣によって、周辺の地域に被害が出始めたと。

 

 森人族には森の狼族が居て被害はほぼ無い、戦人族は山の近辺の魔獣は狩りはしても、自分達の地域を優先したのか北側ばかりになる。その結果、魔獣が南側に多く流れ、王国の村々に被害が出た。それにより冒険者や傭兵が集まり、軍が出てきたと。

 

 どうも話を聞いていると、誰かが北の戦人族が魔獣を操り、人々を襲わせているに違いないと間違った噂を流しているのかも。そんな気がしてくる。その間違った判断で、王宮で勇者召還? がされたのかも知れないな……。

 

 その誰かが考え無しで言ったのか、又は悪意があって言ったのかは分からない。それでも王宮は動いて勇者召還をした。うーん、山の近辺の魔獣増加の原因特定は俺の役割じゃないなぁ。

 

 それこそ勇者がやる事だろこれ? まあ、それはどうにも出来ない。

 

「戦人族が北から離れられないのは、山の魔獣が原因か?」

「我らは昔の事があり、外に出て行けなかったのかも知れない。昔から待ち続けていたらしいから」

「待っていた? 何を……人なのか?」

「我らの同胞だ」


 クライヴはそれから戦人族の伝承を語り始めた。

 

 

 大きな戦いあった昔の事、最後の戦いが北の大地で行われたと我ら以外の者は聞いているかも知れない。だが正確には最後の戦いは、今我らが居る北の大地では無く、その先の地、今では海に分断されている遥か北の大陸によって行われた。

 

 いくら強いと言われていた先祖である英雄達も、この地で戦ったのなら『破滅の者共』を逃がしてしまうかも知れない。そう考えて遥か北の大陸まで追い込み、北の大陸と今のこの大地を『土』の魔法によって分断し、そこで最後の戦いで殲滅した。

 

 今の我ら戦人族は『破滅の者共』を逃がさぬように、残された後詰めの者達の子孫。遥か北の大陸で我らの同胞がどうなったのか、今ではもう分からない。それでもいつかここに戻ってくるものと信じて待ち続けている。クライヴはそう語った。

 

 そうか、クライヴ達は残された者の子孫か……


 

「クライヴ達は北の海を船で漁をしているんじゃないのか? 船でその大地へ渡れないのか?」

「それは無駄だった。何人もの同胞が船で渡ろうとしたらしいが、この地と北の大陸の間には大きな渦がいくつも渦巻く海峡が横たわり、ある者は船をボロボロにしながら逃げ帰り、ある者は渦に引きずり込まれ二度と浮かんでこなかった」


 渦……渦潮か? どんな海流になっているのか知らないが、渦潮が消えることは無いのか? 確かめてみないとどうしようも無いけど。

 

「渦が消えた事はなかったのか?」

「少なくとも消えたと言う事は無いらしい。船は渦と渦の隙間を通ることも出来ずに巻き込まれて沈んだ」


 駄目か。考えても俺には出来ない事が多すぎるな。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 それからクライヴ達、戦人族は戦争は出来るだけしたくないと言って、自分達の村に帰って行った。勇者が引き篭もっているのか分からないけど、しばらくそうしてくれると助かる。

 

 クライヴと色々話をしてた俺を、里長は興味深そうに見てた。話をしたからって特に何か分かった訳じゃないんだけどね。

 

「色々と話を聞いてたね、何かあんたの役に立つような事は聞けたかい?」

「聞いても、自分が何も出来ないと確認しただけですよ」

「ふーん、そんなもんかい」


 そんな残念そうに言わないで欲しい。

 

「里長は……森人族は戦人族の話とか聞いた事はあったんですか?」

「多少はね、それでもずーっと昔の話だからね、向こうで子孫が残っているかも知れないし、そうでないかも知れない。戦人族は……残された者たちは結局、最後の戦いに参加出来ずに生き残った罪悪感から、今もあの場所に居るのかもねぇ」

 

 二千三百年前の戦いに自分達だけが生き残ったかも知れない、そんな昔の理由で子孫達が今の土地に縛り付けられてるなんて、何かやりきれない気持ちになった。

 

 

 クライヴ達が帰ってから二日後、王都経由の馬車旅で親方達はやって来た。

 

「おおっ、久しぶりだなオスカー、魔法剣はちゃんと届けてくれたか?」

「届けたけど、案の定、魔法の杖になったよ」


 そう言うと、ゲラゲラと笑ってた。こうなる事は分かってたくせに。

 

 俺の魔法剣も加工してもらえたけど、とんでもない魔法を付けられたと親方に言ったら、もうどっかに封印した方がいいんじゃないのか? と言われた。

 

 その後は親方とイヒシンの顔役の大地人二人を連れて里長の所に話し合いに行った。その結果、今の勇者の状況と王国軍の動きを伝えて、しばらくは戦争は起こらないだろうと言う結論になった。

 

 もしも、戦争になったら森人族の行動によってイヒシンも影響が出るかも知れなかったからな。ヘタをしたら、また蟻塚の攻略なんて話にもなった可能性がある。

 

 

 その後、顔役二人が里長と話し合っている時に、親方と二人で少し今までの話をした。魔族と言われてた戦人族は北から離れられない。それどころか海を渡って更に北に行きがっているが、大渦のために行けない事も。

 

「うーん、そうなると一回、誰かが北の果てに行ってみるしかねぇか? 何も出来なくたって見てくることは出来るだろう?」

「まさか、親方は俺に見て来いと言ってるのか? 草原人を戦人族の村に入れてくれると思うか?」


 さすがに戦人族もそこまでは無理だろう。ましてや船に乗せてくれなんてとても言えない。


「何も行く道は、そのまま北に向かう道だけじゃねぇよ。王都のずーっと東に海の街がある。東の果ての街イグザギ、行ったこと無ぇだろ? そこから船に乗ってちょっと見て来い」


 ちょっとおつかい行って来い、みたいに簡単に言ってくれる。

 

「まあ、もしも戦争なんて話になったら、このままイヒシンに戻って仕事しなきゃいけなかったんだが、どうやらしばらくは静かみてぇだし、今の内にいろいろ見てくんのも、悪くねぇだろ? 金は……貸してやるから」


 親方ひでぇ、融通してくれてもいいよね?

 

 その後も里長を交えて色々話し合った結果、東の街のイグザギに行くことになった。何故かエルドレッドと一緒に。

 

 信じられないものを見るように里長を見つめる。何がどうすれば、こんな可愛くないドジッ子、エルドレッドと一緒に行けと? もしかして、俺に苦行させたいの?

 

「ま、まあ、そんな目で見なさんな。最近エルドと一緒に魔獣を狩っていただろう? エルドが言ってたんだよ、まるで相棒が出来たようで楽しいって。」


 相棒!? あああ……チェンジさせてくれぇ、出来ればウェルさんで!

 

 どうやら俺が東に向かうと聞いた里長が、エルドレッドに一緒に付いて行けと言ったらしい。俺と一緒の旅は色々と勉強になるからと。でもエルドレッドのお守りはいやだなぁ。

 

 ちなみに森人族の女性を里の外に出すと、人攫いに会うか、貴族に召抱えられてしまうので、めったに里の外には出さないらしい。

 

 ──まぁ、それは良く分かるかな。

 

 

 

 

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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