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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第四章 三人目と森人
32/46

4-4 三人目、森人と魔法

今回も読んでいただけると、うれしいです。

 ──この世界の人間!?

 

 俺は自分でも良く出来たと思うくらい、驚きを顔に出さなかった。

 

 女神様から召還の時に色々聞いてたから、関係する話が出たからって反応するのは良くない。しかし、何だってそんな事を話し始めるんだろう?

 

「大昔の戦いの事を詳しく知ってるいる訳じゃない、代々ご先祖様からの言い伝えが残っているだけさ、昔はその時の事を記した書物があったらしいが、長い時間の間に無くなっちまった」

「……それでも、よく口伝だけでも残ってましたね、もう神話のような昔の話でしょう?」

「ああ、そういえば前来た勇者が変な事言ってたね、『耳が長くない』とか『やっぱり長命なのか?』とか、あたしらは別に長生きって訳じゃない、草原人と変わらないさ」


 俺も長く生きている種族と思ってました。千年とか二千年とか。

 

「時が経つにつれ、色々な事は失われてしまったよ。特に魔法は年々使える者は少なくなっている、さっきも見ただろう? エルドは『魔法』の加工は出来ない。少し撃てるだけ、昔の森人族は物を変質させる魔法を得意としていたらしいよ」

「物の変質? それは一体、どういうことでしょう?」

「今のあたしらが使う魔法ってのは、周りから燃える『元』を取り出して火を点けたり、水の『元』を取り出して飲み水にしたりするんだけど、昔の魔法ってのは、その『元』を捻じ曲げて、別の力に変えたって話だね」

「……例えば、どんな事が出来たんですか?」

「聞いただけでも凄まじい力さ、辺り一面を焼き尽くす『大炎』、水や風を吸い込み巻き上げる『竜巻』、地を裂き物を飲み込む『地割れ』、他にもあったらしいけどね、それが森人族が使った力って言うんだから驚きさ」


 聞いてると、まるで勇者が使う魔法のようだ。でも、昔の森人族が使えていたくらいだから、そうでもなかったんだろうか?

 

「これからが大事な所なんだ、その凄い森人達がその『元』を変質して捻じ曲げる力を使って、別の場所に人を送る力、『転送』の魔法を作ったんだ。今となってはその方法も手掛かりも無いが、その『転送』の魔法でどこかに送ったんだよ、何人かの森人族をね」


 え? 今何て言った? 送った?

 

「送ったと言いましたね? どこに送ったとか分かりますか?」

「さすがに知らないよ、生きていける場所に送ったらしいとしか言い伝えには残っちゃいないよ、魔法の技術が高かった頃はそんな事も出来たらしいって事だけ」

「送った人々はどうなったんでしょう? 無事だったんでしょうか?」

「森人を送ったのは何時だったのか、もう遥か昔過ぎて誰にも分からない。だけど無事だった事は分かる、それは今から話す昔話を聞けばね」



 今では知っている者でさえ、分からないくらいの昔、大きな戦いがあった。それは人なのか獣なのか分からないが、『破滅の者共』とだけ呼ばれている怪物と、その他の生き物との戦いだった。

 

 その『破滅の者共』は、ただ殺し、喰らい、焼き尽くして、さらに共食いをした。地上には生きているものが全て居なくなるだろうと思われた時、空に居る神が地上に降臨された。そして、遥か昔に遠い彼方に送りし我らの同胞を英雄として御呼びになった。

 

 その英雄達と銀の毛皮を持つ狼をその配下として、その『破滅の者共』と戦った。英雄達は五十にも満たない数、『破滅の者共』は目の前を埋め尽くさんばかりの大群で、他に残った人々はとても勝てるとは思わなかったらしい。

 

 そんな人々の予想を裏切り、英雄達は大地を揺らしてなぎ倒し、豪雨を降らして押し流し、火山を作り焼き尽くし、嵐を呼んで吹き飛ばした。噛み付かれても、殴られても、切り付けられても微動だにせず、その持っていた剣で切り裂いた。

 

 やがて、北の大地で最後の戦いがあり、英雄達は勝利し、『破滅の者共』は滅び去った。戦いの時に作った火山が、今のアチクの北にある山だと言われている。今も魔獣が現れるのは、その時の『破滅の者共』の残滓と言う話らしい。

 

「その後、英雄達はそのままこの地に残り、その一生をここで暮らしたと言われている。今の話が嘘か本当か分からないが、確かに北の山で魔獣が出てるし、その討伐もやっているって訳さ」


 ──どこかに送られた森人族が、戦いに呼び戻された? あれ? 俺達はどうなるんだろう? まさか、呼び戻されなかった森人の残りが今になってとか? 分からない事が多過ぎるな。でも、前の世界ではそんな勇者の『力』の記録は無いし、神話にも無いぞ。

 

「今の話を聞いて、どう思った? あたしが聞いてた昔話と、最近見た勇者とあまりに違いすぎて、信じられなくなったよ」


 考え込んでた俺に、里長は自分の考えを話してくる。昔の勇者、英雄達と俺達では、呼ばれた元の世界が違うのか?

 

「でもね、送った者を呼び戻せても、関係無い人間は呼べないって伝え聞いてる。やっぱり、あの現世の勇者はあたしらと、どこかで血の繋がりがあるのかも知れないねぇ」


 またそんな、ややこしい事を言って。混乱するじゃないですか。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 色々な話を聞いて混乱したが、冷静になって考えると自分の状況は何も変わらない。召喚されて、いや召還か? 何か女神様の話を聞いてから、特に深く考えなかったけど、子孫として呼び戻されたのかな? まあ、ここで生きていくのは確かなんだから。

 

 やっていく方針も、この世界で命の危機に会わぬように安全に生きていく。別に目立ちたい訳でもないし、穏かに住める場所があればそれでいい。──出来れば戦争なんて、止めて欲しいかな、意味の無い戦いって知っているから。

 

「勇者の存在が、呼び戻された者? と言う事は何となく分かりましたけど、王国軍や王宮? の人達は何故、勇者を呼んでまで北に進軍するのでしょう?」

「さてね、北の土地は荒地だらけ、もしも占領する気があっても、その後の開発を考えれば、ちょっと手出しする理由が無いねぇ」

「やはり魔族……討伐が目的なんでしょうか?」

「お前さん、魔族と聞いてどう思う? やっぱり魔獣を操って、王国に攻撃しようとしてると思うかい?」

「いえ、何で魔族と呼ばれているのかも知りませんし、どんな姿なのかも知りません」

「ははっ、魔族なんて呼び方は王国のヤツラが付けた名前さ、本来の昔からの呼び方は『戦人族』、変な名前だろ? 戦いなんてどこにも無いのに。でも少し考えれば何となく分からないかい? 戦う人では無く戦った人、彼らは英雄の子孫なんだよ」

「えっ!? 英雄の子孫て言うからには、それこそ王様になったり、国の重要な役割を担ったりしなかったんですか?」

「さてね、そんな話は聞いた事も無いねぇ、王にはならず、北に住み着いて子孫を残したって話だよ。それでも普通なら他の場所に移り住んだり、人と交流しても不思議じゃないんだけどね」


 どうも、他の種族とあまり交流はせず、北の土地で細々と暮らしているらしい。それが彼等の望みなのか? 何かの理由があるのだろうか?

 

「ちょっと前に、勇者が敗退したって聞きましたけど、やはり英雄の子孫だからなのか、戦人族って強いんでしょうか?」

「……本来ならありえないと思うとこさ。確かに戦人族の使う魔法は英雄から引き継がれた物に近いらしい。だけど、森人族と同じで力は弱まっているはずなんだよ。どちらかと言うと、現世の勇者に何かあったんじゃないか?」 

 

 ふむ? 前聞いた限りじゃ、勇者の力は魔獣を群れで倒せる、魔法剣は……届いただろう、戦人族は英雄の子孫ではあるが、力は弱まってるはず? 確かに負ける想像が浮かばない。

 

「戦人族の使う魔法はどんなものでしょう? やはり英雄から引き継がれたような感じでしょうか? それとも森人族のようなものでしょうか?」

「あたしらが使う魔法は、自分の周りにある火や水の『元』を引き出し、それを変化させて使う。戦人族の使う魔法は、自分に影響する力を使う、力が強くなり武器を振り回せたり、体を丈夫にして打たれ強くて怪我が治りやすい」

「英雄みたいに、天変地異みたいな事はできるんでしょうか?」

「そんな事はさすがに出来ないだろう。せいぜい風を操ったりとか、地下から水を湧き出させるくらいじゃないか? どうも土地を耕すのにも使っているって聞いたよ」


 やはり勇者に何かあったのだろうか?

 

「前にこの里に来た勇者はどんな人でしたか? 若いとか年齢が高めとか、穏かとか荒々しいとか」

「見た感じ、妙に元気があり、無鉄砲そうな若者だったよ。……そう言えば『魔獣は俺が全部いただく』とか、『まだれべるがー』とか、『けいけんちがー』とか、訳の分からない事を言ってたねぇ」


 うわー、でも気持ち分かるかも。俺も来た時、恥ずかしい事叫んでた。

 

 

 

 

やっと自分がやりたかった事の一つが達成出来ました。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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