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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第三章 三人目の物作り
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3-7 三人目、物作りの鉄鎚

梅雨があけて、段々気温が高くなってきました。

熱射病に気を付けて、涼しい場所で読んでいただけると、うれしいです。

 参章ノ七 三人目、物作りの鉄鎚

 

 

 

 親方に剣を返してもらい、出発した。

 

 月が出てるであろう巨木の森の中を八人で進んで行く。本当なら月明かりで松明も要らないかも知れないのだが、生憎木が邪魔で真っ暗なのだ。もし、この松明の光に引き寄せられて別の虫が飛んできたらと思うと気になって仕方がない。

 

 武器として、それぞれ戦鎚や大きな金鎚を持っているが、蟻塚の巣を壊すのでツルハシや木鎚も持って来ている。ツルハシを見れば、蟻を攻撃するのには、それを武器にした方がいいんじゃないのか? と思ってしまうが、刺さると抜けなくなって困るらしい。

 

 そろそろ蟻塚の近くだと思われる場所に着き、物音を極力抑えて回りに蟻が居ないのを確かめながら巣の方を見る。前に調べた通り、蟻達は巣の中で休んでいるようだ。他の者には念の為に辺りを監視してもらいながら入り口に近寄って行く。

 

 松明の光や物音で飛び出して来るなよ、と祈りながら入り口に着くと、入り口にも蟻の姿は見えない。しかし、巣の奥には確かに止まっているが、何匹もの蟻達が居るのが分かる。その光景に何か見た事のある黒光りした……慌ててその考えを振り払う。

 

 俺は蟻達を確認した後、後方で待ってる親方達に松明を回すようにして問題無しと合図を送った。そろそろと足音を立てないように歩く親方の姿に、いつもとのギャップで吹き出しそうになりながらも、それを堪えて燻蒸(くんじょう)の準備を始める。

 

 入り口にこっそり針葉樹らしい樹脂の多い薪を積みながら、そういえば入り口はここだけなのかという考えに思い当たり、準備を親方達に任せ、蟻塚の周りを一周する。ずんぐりした形だ。他に出入りの穴は見当たらないが、上の方に煙突のような物が見える。

 

 まさか本当に煙突の訳が無いし、空気穴かも知れない。どうしようかと考える。下手に登って、その音で蟻に知られるのは怖いが、せっかくの計画が無駄になるのも嫌だ。とりあえず音を立てないように少し登ってみると、ごつごつした表面で硬くて登れそうだ。

 

 登る為の道具が必要無さそうなので、今回の焚きつけに使うための木の葉が付いたままの枝を持って行き、上に登って空気穴に慎重に詰めていく。余計な作業に三十分程取られたが、成功率を上げる為だ、カンベンしてもらおう。

 

 さて、いよいよ始めるぞ! と気合を入れて後ろを振り向くと、親方が何やら持っている。顔に疑問符を浮かべた俺に、親方は少し動かして風を送ってくる。……なるほど。火力を強める為のふいごか。いつも水車でふいごを動かしてたから知らなかったよ。

 

 ──改めて、いくぞ! 火口箱の火を焚きつけの木の葉に移し、薪の中に置く。親方や他の者も一緒になってふいごを動かし、風を送ると炎が大きくなり、樹脂の多い薪から黒い煙が立ち上る。そのまま煙がふいごによって蟻塚内部に流されていく。

 

 緊張する。万が一蟻が飛び出して来るようなら、計画を中止して走って逃げる。もちろん、採掘場とは別方向に。それは皆に説明してあって了承済み。何やら後ろで逃げようとしてる気配がしてるが、逃がさないわよ! 一蓮托生、俺も逃げる。

 

 ドキドキしながら見守っていると、何やら内部でガサガサ音がして、蟻達が暴れている様子。本来なら何か危険があったら出入り口から逃げるだろうが、その入り口が燃えているのである。俺達は風を送りながら、しばらく様子を見てた。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 ──気が張っていたから時間が長かった気がするが、たぶん十分が過ぎたくらいの後。

 

 親方が無言で俺を見てくる。どうなんだ? と、俺は巣の壁に耳を当てて内部の様子を伺う。……物音は、ほとんど聞こえない。手で合図して燃えてる薪を退かしてもらう。薪の煙は流れを変えて外の方に広がっていく。

 

 内部は(けぶ)っていて良く分からないが、動く姿は見えない。ごくりの唾を飲み込み、親方達に頷いて次の作業に入る事を伝える。皆それぞれ布を取り出し、口元に当てて頭の後ろでを縛る。マスク代わりのつもりだが気休め程度にはなるだろう。

 

 ツルハシを持ってた一人に合図して、入り口を広げてもらう。ガツッ、ガツッ、低く響く壁を崩す音に、蟻が起きてくれるなよ、と思いながらその作業を見守り待つ。

 

 ああ、内部の煙の処理を考えて無かった。上の空気穴に詰めた枝を取り払うか? 蟻達の眠りかマヒかは分からないが、少しでも効果を長引かせておいた方が良いから我慢するかぁ。内部が見えにくいのが作業の遅れになるかもと心配だった。

 

 厚い入り口の壁が壊れると、内部は穴だらけ。蟻塚の外見に比べると思ったよりスカスカだった。上方に向かう穴が多い、空気穴に向かっている。辺り一面に蟻が引っくり返っているが、死んだ訳じゃ無いのかヒクヒクと痙攣していた。

 

「今のうちにやっつけておくか?」 親方が小声で言ってくるが、時間が惜しい。


 頭を横に振って、蟻塚中心に向かってツルハシを振るう。軽く掘れるので時間がかからず、奥に進める。……掘って行くのは良いんだけど、肝心の魔鉱石はあるんだろうな? 自分の不安を余所に他の者は作業を進める。俺も魔鉱石の存在を祈り、手伝う。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 まだ煙が残ってて、周りは見えにくいし、目は痛いしで苦労しながら前に進んでいく。虫がマヒしてる時間を気にしながら壁を崩してたら、ツルハシの音が変わった。怪訝な顔で壁を見つめてると、横で見てた親方達が目を見張るのが分かった。

 

「すげぇ……、純度の高い魔鉱石で出来た壁だ」


 喜ぶ以前に呆けている。驚いたが、それよりも作業を進めなければならない。無言で手で合図をする。早く掘って持って帰ろう、と。皆は慌てて頷いて壁にツルハシを振るい、崩れ落ちた魔鉱石を袋に詰めていく。そんな時に一人のツルハシが壁を突き抜けた。

 

 

 考えてみれば、そんな特殊な鉱石を壁に使っていたのだから、その向こうは特殊な何かが居るはずである。俺はある程度予想がついてたので、少々気持ち悪いモノが目に入るだろう。それぐらいしか考えてなかった。ただ、ここは元の世界では無かった。

 

 松明の光に照らされて、穴の奥には白く壁みたいな腹を(うご)めかしている巨体と、まるでそれを護衛するかのような、兵隊蟻より大きい、一メートル五十センチぐらいの近衛蟻とでも呼べばいいのか、そんな大きい蟻が二匹居た。

 

 その巨大の蟻──女王蟻は予想してた。見つかっても動けないから大丈夫だと。それ以外の二匹が埒外だった。見た瞬間、死人が出る光景が頭に浮かんだ。


 

「逃げろ!!」 鉱石が詰まった袋も、松明も投げ捨て怒鳴った。



 魔鉱石が目の前とはいえ、さすがに尋常でない空気を感じたのか、他の者達の動きは早かった。逆に一瞬でも迷っていたら死人が出た。ツルハシを右手、戦鎚を左手に俺は 殿 (しんがり)(つと)めた。格好つけた訳じゃ無い。こんな狭い所で戦いたくなかっただけだ。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 地面に投げ捨てた松明の火が今では頼りだった。


 恐らく、体の一部をそのデカイ牙で挟まれると切断される。牙でまともに弾かれてもタダでは済まないだろう。両手の武器を振り回しながら後ろに下がる。他の蟻達が寝ててくれて助かった。挟み撃ちになんて事になったら、無残な死が待ってるだけだ。

 

 どうやら親方と他の者は外に出たようだ。外に松明の火が見える。その光を目印に後退する。近衛蟻は俺の手や足、振り回してる武器を牙で挟み取ろうとしてる。それに案外素早くて、牙の突き出しを捌き間違えたら終わる。

 

 注意深く牙を防ぎながら、少し考え、外に居る親方達に叫んだ。

 

「入り口を俺が抜け出せるくらいに狭く塞いでくれ!」

「なんだと!? どうするつもりだ!」

「こんなヤツ、二匹も相手に出来ない! 一匹ずつ外に出して皆で叩くぞ!」

「──分かった! 準備するから、それまでに死ぬなよ!」


 死にたくねぇよ。

 

 ちょっとずつ下がりながら、入り口が埋まるのを待つ。近衛蟻の高さ……一メートルもあれば外に出て来れそうだな。んー、一匹出た後はどうする? 親方達だけで一匹相手にしてもらって、俺がもう片方が出てくるのを邪魔するか?

 

 そんな事を考えてたら親方から、いいぞ! と声が掛かった。ちらっと後ろを見ると俺が寝そべってギリギリぐらいの穴が見える。……失敗したら終わりじゃねぇか。親方は無茶させる。ツルハシを最後に大きく振り回し、距離が開いたのを見て穴に飛び込む。

 

 飛び出した後、転がって離れてから後ろを振り返る。近衛蟻が一匹顔を出して、親方達のツルハシやら戦鎚を弾いてる。あの重くてデカイ金鎚も弾いているんだ、どれだけ力か強いか見当もつかない。慌てて向かい、一匹外に出したら俺が片方を抑えると叫ぶ。

 

「出来るだけ周りを囲んで攻撃してくれ、真後ろに居て蟻酸にやられるなよ!」

「分かってる! テメェも気張れよ!」

「ああ!」


 いくぞと怒鳴り、一匹が外に出たのを確認したら両方に気を配りながら、入り口に立ち塞がり、もう一匹の蟻が出てくるのを抑える。外に出た近衛蟻は標的を親方達に移したのか、そちらに攻撃してる。親方達は真後ろに立たないように横から戦鎚を叩きつける。

 

 ゴツンッ! 鈍い音が後ろから聞こえる。甲羅が相当硬そうだ。脚を狙えと指示して牙の前には立つなよ、と言い添える。俺も隙あらば頭にツルハシを突き立てるが、弾かれて刺さらない。俺も脚を攻撃したいが正面を向いてるから無理だ。

 

「くたばれ、こんちきしょう!」

「硬すぎんぞ、コノヤロー! 脚の爪も鎌の刃ぐらいあるぞ?」

「蟻の毒、量が多すぎんだろ! 浴びたら体溶けんぞ!」


 ……後ろからの叫びが怖い、脚の爪が予想外に強いらしい。それでも脚を攻撃出来たのが大きいのか、六本中四本が動かなくなっている。もう少しだ。もう一本、後ろ脚を叩き壊した親方が、そのまま胴体にまたがり、頭をガンガン叩き始めた。

 

 尾を曲げて、自分に乗った親方に蟻酸を吹き付けようとする。それが回りに被害をもたらし、他の者が怒鳴る。

 

「あぶねぇな! 気ぃつけろ、バカヤロー!」

「うっせぇぞ! 黙って見てやがれ!」 怒鳴りあっているが、問題無さそう。


 そんな事をしてたら、叩かれ弱ったのか、外の一匹が地に伏せ、動きが鈍くなった。止めとばかりに他の者も皆、頭を殴り始めた。一人のツルハシが目を穿ったと思ったら、わずかな痙攣の後には近衛蟻は動きを止めた。

 

「蟻酸が怖いから、腹はそのままにして、頭を切り離しておいてくれ!」


 そう言って、もしもの事が起こらないようにしておく。そろそろ俺も腕の力が持たなくなってきた。ちょっと気を抜いたら戦鎚を牙に挟まれて折られたし。後ろは振り向けないが、どうやら頭は落とせたらしい。

 

「次、行くから、もうひと頑張り頼む!」

 

 そう言って後ろに振り向いて親方達の場所に走る。頭の落ちた近衛蟻が視界に入る。少し離れた場所まで、もう片方の蟻を引っ張る。親方達も皆、怪我をしてるし蟻酸に焼かれたか、肌が焼かれてる者も居る。危なかったんだな。

 

「キシィィィ!」 相方の亡骸を見た為か、甲高い鳴き声を上げて俺達を見回す。


 ……あと一匹だと思ってると大怪我するだろう。

 

 最後まで気が抜けなかった。

 

 

 

副題が二つあって、邪魔になっててすいません。

五話ほど並べて見比べるのに、順番が分かりやすかったんです。

四章から外します。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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