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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第三章 三人目の物作り
24/46

3-5 三人目、物作りの仲間たち

今回も読んでいただけると、うれしいです。

 参章ノ五 三人目、物作りの仲間たち

 

 

 親方と俺とで最後の薬草酒を使ってしまった、屈辱の日からしばらくたった。

 

 エルドレッドは親方にいくらかの案内料を払うと里に帰って行った。もう諦めて二度と来ることは無いと思いたい。これは決して親方と俺の希望と言う訳ではない。……この街の鍛冶の皆の総意だ。

 

 ちなみにエルドレッドはどんな魔法剣が欲しかったんだ? と酒場で聞いてみたら、加工前の物がほしい。その後の加工は我々がするから、と変わった答えが返ってきた。そんな事が出来るのか? 親方に聞いてみると、加工できる者も居ないことも無いが、

 そんな事が出来る森人族なんて一握りだけ、しかも出来た剣は凄い物となる。それこそ火や氷は出ないが、雷を飛ばせるかも知れないと言った。

 

 おお……、かっこいい。まるで勇者が持つ剣みたいだ。

 

 まあそんな加工するなんて、剣を打つ俺達と、よーく話合ってどんな加工するか細かく聞かなくちゃあ、剣も出来ないんだけどよ。と親方はガハハと笑い飛ばしてた。いきなり来て、加工前の素の魔法剣作れなんて最初から無理だった訳だ。

 

 

 エルドレッドが帰ってから、しばらく経ったある日、工房に人が来た。

 

 見た目は親方みたいな大地人で、少し上等の服を着てる。その人は工房に居た俺をちらっと見た後、親方に声を掛けた。

 

「ダリル、ちぃーと話がある。ここじゃ何だから店まで来てくれんか」

「……なんでぇ、名匠サマじゃねぇか。儲け話って訳じゃなさそうだが、何かの面倒事じゃねぇだろうな?」

「んー、まあどっちも当たりなんだが、細けぇ話は店ぇ行ってからだな」


 二人の様子を黙って見てた俺に親方は視線を寄越すと、どうせ関係するんだから俺にも来いとおっしゃる。俺は無言でその名匠さん? に、良いんですか? と目線を送ると黙って頷いていた。

 

 出来れば俺を巻き込まないで欲しいかなぁ?



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 店と言ってもいつもの酒場である。今日は話し合いだ、間違っても薬草酒が必要となるほど飲むことは無いだろうが。俺は一抹の不安を感じてた。……あの宿に行って買ってこようかな。

 

 いつもの酒場にいつもの酒、そしてつまみだけ。酒精分高ぇな。そんな不安げな俺を無視して名匠が話しはじめる。

 

「昨日、王宮から使いの者が来た。『魔法剣を作れ』と命令書を持って。王命だから作らなくちゃならねぇ。だがよ、作れるヤツは王都にだって居る。名匠と呼ばれる者は俺様やこの街のモンより腕がイイのが居るはずだろ? 何故だって、ちびっと聞いて見た」


 名匠はそこで、のどが渇いたのかジョッキの酒をぐびっと飲む。親方も釣られたように飲む、俺は飲んだ振りをした。このペースはやべぇと思ったから。

 

「使いの人間は歯切れが悪かったが、どうも例の勇者サマが言ったらしいんだ、『魔法剣が欲しい』ってね。んで、何でこの街なのかも訪ねると、王都には材料が無くなったらしい。戦争の為に作り過ぎたんだと。そんでこっちに回って来たと」

「どうするよ? ちょっと前に森人族のモンが来て、作れるような材料が無ぇからって、やっと諦めさせて帰ぇしたってばかりなのに」

「……そうなんだよなぁ、大勢で行って頑張ったって、そんな沢山すぐに取って来れる訳じゃねぇ。だがよ、王サマの命令に出来ませんでしたって返すのもマズいだろうし、俺達の沽券にも関わる。何とかならねぇかなぁ」


 俺は話の内容で危険度が高いことに気付き、ずっと下を向いていた。どうにもならん。

 

「ダリル、お前ぇんトコの草原人の弟子、結構根性あるって聞いてるぜ。名前は何て言うんだ?」

「オスカー」

「オスカー、ダリルと相性いいんだってな? お前ぇも何か考えてくれんかなぁ?」


 無理です。俺は即答したかったが、これからの生活を考えたら少しは協力しなくちゃならんよな。しっかし、勇者めぇ、俺の生活の邪魔しよって。

 

「うっす、今出来る事は普段通りに採掘してもらって、その間に良い方法が浮かぶか考えるしかないっすねぇ」

「はぁ、やっぱりそれしかねぇかぁ、ダリルや皆に悪いけど全部の工房の人間と、協力するモン募集して掘るしかないみたいだな」


 そうして、その後のぐだぐだとした飲み合いの後、やっぱり薬草酒を買いに走った俺の鍛冶生活は、魔鉱石堀りという劣悪労働に変わっていった。

 

 ほのぼの鍛冶士ライフの為に、何か良い方法を考えねば。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 名匠さんの名前はマーヴィンと言うらしい。この街の工房をまとめる(おさ)的役割だ。

 

 五日程の準備の後に、西の村に移動して拠点を移した。村長には話しが通っていたから大した厄介ごとも起きなかったが、村長から森人族の面倒な話が別の所で大きくなったねぇ、と愚痴られた。

 

 しみじみと頷いた。俺もそう思います。

 

 それからは採掘場に天幕を張って基地を設営し、日中はそこで採掘計画を立て、昼食をとったり休んだりする。夕方になると村に帰り、酒場へ繰り出すなり村で借りた宿舎で休んだりする毎日を繰り返した。

 

 たまに怪我人が出ると俺が医者モドキの真似をやっていた。さすがにもげた腕や足を繋いだりしないが、そんな大怪我する者も出なかった。しかし、俺はそんな感じで現場での存在感が高まった。

 

「やるじゃねぇか! これからも頼むぜぇ」 そう皆が言ってくれるが、採掘が辛くて怪我人が出るとそっちに飛びついてたなんて、口が裂けても言えない。


 

 前に親方が言っていた虫だが、寒気がする程でかかった。蟻で五十センチ弱、百足なんか一メートルを超える。蟻は噛み付きと蟻酸飛ばし、百足はあの沢山の足で締め上げて噛み付いて来る。皆は慣れてるのか見つけるとさっと胴体を踏みつけて頭を一発殴る。

 これで終わりである。たまに蟻酸を吹き付けられて火傷みたいになってたが、気にもしてなかった。その時は俺も柄の長い戦鎚を持っていたので、慣れるまでは時間は掛かったが、何とか退治出来ていた。……短剣でなんて冗談じゃ無い。

 

 採掘したり怪我人を診たり、たまに虫退治をしてて、ふと考えた。蟻とか百足とかって穴を掘って、巣を作ったり餌を捕まえたりしてたはず。この虫達はどこから来てるんだ?

 

「蟲がどっから来たか? 鉱石掘ってると、蟲が掘った穴と繋がっちまう事があるんだ。その時はすぐ石乗っけて埋めちまうんだが、その繋がった穴から蟲が迷い込んで来るんだよ。だって穴を掘る蟲だからな」


 なるほど。蟲は坑道に入って来るんじゃなくて、自分達の穴と繋がったから、そこから来るのか。話を聞いた大地人の一人に礼を言って別れ、休憩の時にしばらく辺りを見てくると言って戦鎚を持ち、周りの巨木の森に入った。

 

 百足の生態は分からないけど、蟻なら巣穴があるはず。でもあのでっかい蟻は何を餌にしてるんだ? まさか鉱石を食べてる訳じゃないよな。

 

 蟻が魔鉱石を食料にしている図が頭に浮かび、蟻の殲滅を覚悟しなくてはならないかな、と思っていると巨木に張り付いている蟻を見つけた。何をしているんだ? 何かを舐めている……樹液!? 樹液が餌なのか!

 

 実に虫らしい行動に心底ほっとした。鉱石を喰われてなくて良かった。しかし、木も大きければその樹液を餌にする虫も大きい訳か。でも他に大きい虫は居ないで欲しいな。多分飛んでる大きな虫を見たら悲鳴を上げる自信がある。

 

 そんな事を考えてると蟻は食事が終わったのか、どこかへ歩いて行く。巣穴に戻るのか? と考え、面白そうだとついて行くことにする。まるで蟻を見つけた子供か、と自分に苦笑しながら。

 

 

 しばらく歩いて、そろそろ戻らないといけないと考えたその時に、何か尖った物が目に入った。尾行してた蟻が向かう方だ。十五いや二十メートルを超え、蟻塚だと思う塔みたいなのを見る。近づき過ぎると襲われそうなので、木の影からそっと様子を伺った。

 

 普段見る蟻が何匹も動きまわっている。兵隊蟻らしい八十センチ程の大きい蟻も居た。怒らせたら大惨事だなぁと思ったその時、どこか記憶にある石を運ぶ一匹の蟻。目が離せなくなってじーっと目で追い続けると、巣から五十メートル程離れた場所に石を捨てた。

 

 その蟻が居なくなるのを待ち、俺はドキドキしながらその場所にこっそり近づき、蟻が捨てた石を拾う。……まだ判断がつかなかったので、喜ぶのは後だ。俺は顔がにやけるを感じながら採掘場までダッシュで戻った。

 


 採掘場に戻り、ダリル親方を探す。何か計画を立てていたのか、人と話し終わった親方を捕まえ、怪訝な顔の親方に勝ち誇った笑顔で石を見せる。うまくいったら俺の魔法剣も作ってくれるかな?

 

「これは……若いモンが良く間違える魔鉱石モドキ、『欲深い者の鉄』だな」

 

 ──泣いてもいいだろうか。




読み直すたびに、誤字・脱字・使用間違いを見つけます。

絶対、まとめて投稿出来ない。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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