3-4 三人目、物作りで必要な物
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参章ノ四 三人目、物作りで必要な物
魔法剣の短剣作りを目の前で見て感動した。
親方に作って欲しいと軽く希望を伝えるが、材料も金も足りねぇと一蹴される。確か金貨五十枚だったよな、イマニアムで見た魔法剣。あれは王都の名匠が作った一振りと言われてた物だった。今の俺の手持ちじゃ金貨十枚も無い。そりゃ無理だわ。
魔鉱石は? 聞いてみると西に見える山の麓に鉱山があるが、その深い場所でたまに取れる程度らしい。見つけた物を少しずつ集めてやっと使えるとか。打つヤツが居て、金もあっても魔鉱石を集めるのが致命的に難しいと親方はぼやく。
この短剣に使った魔鉱石だって、使い物にならないくらい量が少なかったから貰えたんだとか。本当は叩いて延ばす方が良い物が出来るみたいだからな。これは望みが適うのは相当時間が掛かるなぁ。その場では諦めるしかなかった。
それからも俺は親方の手伝いをして生活してた。俺は作業中というかいつも頭に布をバンダナ風に巻いているが、髪の毛は短くしてるし、ヒゲも伸ばしてる。布を外して鏡を見ると、ダレだオマエってくらいに人相が変わって驚く。今度眉も薄くしてみよう。
酒場へ行けば、色々な噂話が聞こえる。勇者が魔獣を倒しまくったとか、森人族が北に行きたがらないとか。森人族は別に排他主義という訳じゃない。弓を使った狩りが得意だから、冒険者の姿は何回も見てるし、話したこともある。女性は見たこと無いけどな!
確かに少ないが、見るのが珍しい程でもない。いっそ街中に居る森人族の者に里と交渉してもらえば良いのになと思う。やっぱり自分達の里が北に近いから、余計な争いに巻き込まれる事を恐れているのかも知れないなぁ。
巻き込まれるのがイヤか……自分みたいだ。
そんな事を考えながら、日々鍛冶の仕事をこなしてた。噂ではもう魔族と言われてる者達との小競り合いが起こってると話が聞こえる時もある。
そんな時に、とある客が来た。
見た目麗しい森人族だ。何でも魔法剣が所望との事。この街のあちこちの工房に聞いて廻っているらしい。金は出すから打って欲しいと。俺は親方と顔を見合わせて、
『これ、聞いちゃ駄目な注文じゃないか?』って考えた。親方も同じ事を思ったらしくお互い頷きあう。
「俺んトコじゃ、難しくてちょっと引き受けらんねぇなぁ」
「何故だ? 王都では注文が忙しくて材料が無いからと言われ、ならば材料が多く取れるらしいこの街に来たのに、どこも出来ないと言って話を聞こうともしない」
「その材料がこの街にも無ぇんだ、せめて材料を持って来てから言ってくんねぇかな」
やっぱり簡単に打ってもらえると思って来たらしい。親方が『ほぅらやっぱりな』って目で語ってる。俺も『厄介な客だな』って目に出してみる。うんうん、通じたようだ。
「ならば私が採って来るから場所を教えて……いや、案内人を出してもらいたい」
あ、親方の一言が余計だったみたい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
下手に言い訳すると、そこを突かれて自分が苦しむ。そんな瞬間を俺は見た。
親方が『うわ、面倒臭ぇー』って情けない顔で俺を見た。俺はそっと目を逸らせ……
「オスカー、案内してやんな」 このオヤジ……
「スンマセン親方、教えるも何も行ったことも無いし、場所も知らないんで」
「ぐぎぎ」
それでも悪足掻きか、親方は道連れにと俺を含め、三人で鉱山まで行くことになった。行ったとしても直ぐに採掘できる訳じゃ無い。一人は新人、一人はド素人だし、親方が居ても無理だそうだ。採掘道具と荷車と大勢の採掘する者が必要である。
だから今回はただの下見だ。森人族……エルドレッドは無理やりにでも鉱山に入ると騒いでいたが、親方は無理だ、多くの準備が必要だ。と説明してやっと納得させてた。ほーらやっぱり、関わっちゃいけない人だった。
街の馬車組合から一頭引きの馬車を借り、まずは西の村だ。村までは結構近くて、ゆっくり行っても半日で着くらしい。大地が芽吹き、畑の麦の芽が伸びているのが見える。
……麦踏みしたのを思い出す。あの芽はやっぱり踏むのかな?
俺と親方はやる気無し、行きたくないので馬車はゆっくりだ。出来ればこのまま西の村へは観光で行き、すぐ帰りたい。そうだ! エルドレッドを酒場で酔い潰して、うまい事誤魔化して帰ろう! 後で親方に相談しようとほくそ笑む。
──エルドレッドは酒豪だったと言っておく。
入り口近くにある炭焼き小屋を眺めながら村に入る。親方は見張りの村人と顔見知りなのか、手を振って無言でそのまま馬車を進めるが、村人も普通って感じで俺とエルドレッドをチラリと見ただけで何も言わなかった。
たぶん村長宅だろう建物の前に馬車を止めて俺達に待ってろと言って中に入る。しばらく村の中を眺めながら待ってると、草原人の村長らしい人と一緒に入り口に現れ、何やら話してたと思ったら、じゃあなと言って分かれて馬車に戻ってくる。
村長さん? は苦笑しながらこっちを見てる。ああ、なるほどな。面倒なお客サマが来たからしばらく騒がしいのを前もって説明してたんだな。
「はぁー、んじゃ行くかぁー」 親方、嫌なのは分かりますけど、もっとやる気だして。
見上げる首が痛くなる程の巨大な木の間を通りながら、採掘場まで進んで行く。炭の材料にするらしいが、さすがに何本も簡単に切る訳じゃ無い。木を倒した後の切り株もごく偶に見る程度である。木はデカイが密集してはいない。
こんな森と言うか林の場所に獣なんて居るのだろうか? 親方に聞いてみると木に登るような栗鼠とか鼠、あとは鳥ばかり。たまに熊が迷い込むらしいが、すぐに冒険者が呼ばれ、狩られる事になると教えてくれた。
どうやら日の光が差し込みにくく、下草が生えないらしい。餌が無いのね。
一応、剣は持って来た。今は弓も槍も無いけど、これだけは手放せなかったんだよね。先日親方が作った魔法剣の短剣は俺に持っておけと渡されている。その親方だが、武器なのか道具なのか判断に困る、そんなぐらい大きい金鎚を持っている。
戦鎚じゃない……よな? 普通なら柄が長くて、鎚頭ももっと小さいはず。親方にはどちらかと言うと両手持ち、両刃の戦斧の方が……あ、なんでも無いです。頭の中で戦斧を振り回している人喰い鬼を想像してたら、親方にギロリと睨みつけられた。
「鉱山には獣も魔獣も出ないが、蟲が出る。蟻とか百足だがな。でもそれなりにデカイから噛み付かれると大怪我するぞ。これ位の金鎚で頭をぶっ潰してやりゃあ一発だがな」
おお……、でかい蟻もでかい百足も遠慮したいなあ。あ、エルドレッドの顔が引きつってる。森人族は森に住んでるイメージがあるのに、虫が苦手とか? カワイソーデスネ。
「オスカー、お前ぇが持ってる剣はなかなか良い物みたいだが、蟲に普通の剣は効かねぇぞ。もし出て来たらアレ使って頭をぶっ刺せ」
アレ? ああ、魔法剣の短剣か。ここで魔法剣なんて言ったら、エルドレッドが暴走するかも知れないからね。俺は無言で頷き了解した。でも短剣で接近するのも嫌だな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
山の麓に着く。今日のは様子見で、西の村に一泊し、明日に街に帰る事になっている。結構深く掘り進められ、峡谷となっている採掘場は想像以上に広かった。その光景に辺りを見回していると親方が手招きして付いて来いと言ってる。
その後に付いて三人で進むと、広い採掘場の一部、地上から一メートルの高さに直径十メートル近くの穴が、暗い入り口を開けていた。ぽかんと見てると親方はおもむろに持って来た松明に火口箱から火を点けた。……そんな道具もあったんですか。知らんかった。
まるで地下迷宮に入って行くような気分で進んで行くと、坑道が何本も伸びているのが見える。色々な鉱石を採る場所のためか、支柱などを組んでに採掘してるようだ。とりあえず、崩れる心配をしておいた方がいいかなと考える。
「こんな感じの場所だ。荷車持って来て大勢で入って、沢山掘って持って帰る。その沢山堀るのが面倒なんだけどよ」
……希少な鉱石を掘るのだから、いらないクズ石も掘り出さなければ駄目なんだなぁ。すごい重労働だ。これは背の低い大地人が有利なのかもね。もしかしたら、エルドレッドが一人で掘り始めるかもと思っていた。
現場を見て、親方の説明を聞いて、自分がやろうとしてる事の難しさを分かったみたいだ。がっくりと肩を落としてるエルドレッドを見て、これなら魔法剣を作れという無茶な事は言わないだろうと思う。
その後は西の村に帰り、宿の酒場でエルドレッドのヤケ酒に付き合った。酔い潰す計画が無駄になった事は残念とは思わなかった。
俺と親方が先に記憶を失ったからな。
三章は書き終わりました。
続けて投稿出来るように、ネタ切れから全力で逃げてます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




