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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第三章 三人目の物作り
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3-3 三人目、物作りでお試し

読んでいただけると、うれしいです。

 参章ノ三 三人目、物作りでお試し

 

 

 今回、俺の相鎚で作った片手剣を親方が刃を研ぎ出し、柄を拵えて持って来た。

 

 握り具合と重さのバランスを見てるようだ。しばらく手の中で片手剣を動かしてた親方が付いて来いと工房の裏に向かって行く。慌てて裏の空き地へ行くと、ただの丸太とその隣にヨロイを乗せた丸太が立ってた。どうやら試し切りなどに使う的のようだ。


 親方は、すたすたと歩いて普通の丸太の所へ行き、持っていた片手剣を袈裟切りで叩きつける。ゴツッ! 鈍い音の後に、刃先が一センチくらい食いこんでいるのが見える。その後食い込んだ剣を抜き取ると、刃先を見て考えている。

 

「ちっ、久しぶりだったし、相鎚も良くねぇ。全然ダメだな」


 そう言って、俺の所に来て片手剣を寄越す。俺も剣を見てみると刃先がほんの少し欠けている。どうも剣の輝きが鈍い。俺でも何となく出来が良くないというのは分かった。

 

「お前ぇも切ってみて、自分の仕事で出来たモンを試してみろ。そして、もし使うことになった時の事を考えて、次の仕事に生かせ」

「……うっす」


 なるほどなぁ。自分がもしこれを狩りで使うことになったら嫌かもなぁ。自分の使う想像をしながら丸太へ向かい、おもむろに縦に切ってみる。

 

 ヒュッ……ギリッ、バキンッ!  あ、折れた。


 二人で一瞬、呆けてしまった。柄を握ったまま俺は、コレどうしよう、と固まってしまう。

 

「お前ぇ……冒険者でもやってたのか、ああ、折れた剣はもういい。どうせ売り物にならねぇし、何んかの試し切りにしか使えなかったからな」


 剣、使えたのか…… と言う親方のつぶやきと共に工房に戻る。折れた剣はどうしよう? と手の中の残骸を手持ち無沙汰にしていると、親方が無言でそれを受け取り、クズ鉄の山に投げ捨てた。それ、いいのかなぁ?



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 それからは、親方と俺の相鎚でしばらく片手剣と長剣を作った。

 

 最初の方は、相鎚の呼吸も悪くて売り物にならない剣を量産してしまった。それでも親方の厳しい叱咤激励により、少しずつ親方に合わせて打てるようになり、それなりに使える物が出来始めた。手に出来る肉刺を治しながら、鍛冶の生活をこなしていく。


 慣れてくると、体の疲れもそれほど酷く無いし、親方と一緒に行く酒場でも強い酒が飲めるようになってくる。二日酔いの薬草酒も無くなる前に必要なくなった。……最近ヒゲが伸びてるのも気にならなくなったなぁ。

 

 そんな事を続けてて二ヶ月程過ぎたある日、仕事帰りの酒場で親方と一緒に夕食兼晩酌をしてると、酒場に居た冒険者らしい草原人と大地人の鍛冶士の噂話が聞こえる。どうも王都に居た勇者が、魔獣の群れを相手にしながら勝ったらしい。


 見てた兵士の話しでは、火は見えなかったが、まるで大きな炎に焼かれたみたいになっていたらしい。焼け焦げてはいないのに、火の近くで焼け死んだみたいになっていたとか。そんな内容だった。

 

 さすが勇者というべきか、魔獣一頭でも怖いのに、それを何頭も相手にして勝つとか。

 

 他にも、森人族との交渉がうまくいってなくて、彼らの協力も無く北の敵と戦うとか、交渉に行く予定だった熊殺しだか虎殺しだかの強い冒険者が、『北の門』付近の森で熊に食われて死んだとか、その熊は魔獣だったにに違いないとか言われてるらしい。

 

 ……よし。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 それからしばらくすると、親方が変わった色の鉱石を持って来た。たまたま知り合いから少なくて使えないと言われて貰ったらしい。

 

 それは鉱石か? 聞いて見ると、俺が打ちたがっている魔法剣の材料だと言われて驚く。もちろん俺には打たせないが、これも経験だから見ておけと。これ位の量だと短剣の一部、しかも切っ先ぐらいにしか使えないらしい。

 

 そうして親方は短剣を作り始めた。魔法剣には何種類かの加工方があって、『硬化・柔軟・機敏・再生』他色々とか。再生と言っても持ってる者の怪我が治るんじゃなくて、刃が欠けてもそれが直る意味らしい。

 

 短剣には、機敏とか柔軟なんて付けてもほとんど意味が無い。だから今回みたいに硬くして切る力を強くすると言われた。炎が出たり、氷が出たりとか無いのか? と尋ねる俺を親方は一瞬仕事を忘れてポカンと見てた。

 

「そんなおっかねぇのは見たことねぇよ。出来たとしても森人族の力で、小さい雷ぐらいじゃねぇのか? 作れるとしたら」

 

 ほう? 森人族は魔法が使えるのか?

 

「知らねぇのか? 大したことは出来ないらしいが、火を飛ばしたり、小さな雷飛ばしたり。後、土から輪っか作って飛ばすとか。だから軍が協力を頼んでたって話だ」


 そう言うと、親方は真剣な顔になって、普通の鉱石を炉に入れて熱し始めた。無言でじーっと炉の中を見てる親方には話しかけられない。

 

 作り方は途中までは普通の短剣と変わらなかった。最後の油で焼き入れを行う手順になった時、改めて持って来た鉱石……魔鉱石を炉に入れてしばらく待つ。そして今まで打っていた短剣の剣身を炉に入れて、溶けた魔鉱石を刃に付けてる? 

 少し待ってから引き出すと、油を使わずにそのまま冷めるのを待つ。工房の隅に置いてあった砂みたいな物に入れてるし、冷ましてるのか? とりあえず後で親方に聞こう。

 

 しばらく待って、親方が手で触れられるくらいに冷ましたと思ったら、そのまま刃の研ぎ出しの加工に入った。焼き入れ、焼き戻しが無い。それ以外は普通の加工に見える。仕上げの磨きが終わると親方が短剣の切っ先に手を当てて、目を閉じた。

 

「……これでいいと思うが」 あれ? 今、魔法を使ったのか?


 つぶやいた後、親方はしばらく出来た短剣を目で見て調べていた。その後、立ち上がり柄の拵えを作って、握り具合を確かめたと思ったら黙って工房の裏に向かう。試し切りをするのが分かっていたから俺も付いていく。

 

 裏の空き地に行き、普通の丸太の方かと思ったらヨロイを乗せた方に向かって切りつけた。

 

 カシュッ! 軽い音と共に鉄のヨロイに綺麗にナイフの切り口が出来た。


 すげぇ、普通なら切れる前に弾かれそうだ。

 

「やって見ろ。強くやってもいいぞ」


 ナイフを受け取って刃を見る。青白く光っている。──イマニアムの武器屋で見た魔法剣と同じ光だ。

 

 これが硬化の魔法剣か。俺もヨロイの前に立ち、刃先のギリギリ先端で切りつける。

 

 ヒュッ、キンッ! ……ほんのちょっとの抵抗を感じただけで、大きく切り裂いた。


「これが『硬化』の力だ。砥ぎも大事だが、切断力が上がってる」

「すごい切れ味だ……でも、もしも切る相手に同じくらいの硬さがあると、どうなるんだ?」

「それはどうにもなんねぇな。折れるか、軽い方が弾かれて終わりだ」


 なるほどなぁ。短剣だと軽すぎだし、同じ硬さの盾なんかあったらお手上げだ。

 

 それから、しばらく切ってみたり、刺してみたりした後、工房に戻り聞いて見た。魔鉱石は刃に付けるのが普通なのか、あの砂のようなものは? 手を当て目を閉じた時に魔法を使ったのか? 五月蝿いくらい聞いてしまった。

 

「あれは冷却用の普通の砂だ。魔鉱石は溶けるのが早くて刃に塗るようにする使い方もするが、出来れば叩いて延ばし、加工した方が効きも強い。まあ、加工の仕方によって違うがな。それとアレは魔法とはちょっと違って、魔鉱石の加工の時だけ使えるモノだ。」

「魔法じゃないのか?」

「もしも、アレが魔法と言うなら、そう言う事なんだろうがな」


 そう答えてくれた。魔鉱石の扱いに最低十年、加工については、する者によって変わるから分からない。しかし、草原人でも森人族でも加工は出来るらしいから、大地人だけの技術じゃないらしい。

 

「二種類以上の力の加工ば出来るのか? 出来たら凄い物が作れそうだが」

「大変だが作れるぞ。打つモンの腕が良くないと駄目にしちまうがな」

「親方ならどれくらいの物が打てるんだ?」

「俺が今まで一人で打ってる魔法剣は、『硬化・柔軟・再生』だな。結構大変だったんだぜ」


 思い出したのか、親方は目を閉じ、しみじみとその苦労を語る。

 

 ……そんな話を聞けば、自分では打てないけど、是非とも作ってもらいたくなった。

 

 

 

 

主人公に剣を打てる時は来るのか? 来ない方に金貨一枚。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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