2-9 三人目、村の生活のすれ違い
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弐章ノ九 三人目、村の生活のすれ違い
いつもより目覚めの良い朝、晴れやかな気分で宿を後にする。何でこんなにスッキリしているのだろう? お高い宿に泊まり、旨い食事を取ったからからかな? そうに違い無い。決してミゲルの断末魔の声を聞いたからでは無いはずだ。
北門近く、王都行きの馬車の所へ行って、出発は何時か聞いてみる。もう一人乗せたかったが、後太陽が三つ分だけ待って出発するらしい。何かを買い物するだけの時間があるみたいだ。失った槍の代わりを買っておくかな? 王都の方が品揃えが良さそうだが。
暇つぶし、冷やかし程度に前に槍と弓を買った武器屋に行ってみる。確かイイ人だったから、安くしてくれるだろう。そう言えば、その店にある魔法剣は王都の剣匠が作った物のはず。王都へ行けば他にもお手ごろ価格な魔法剣が手に入るかも知れないな。
久しぶりに武器屋に顔を出すと、店主が俺の顔を見て一瞬固まり、直ぐに愛想笑いを浮かべた。久しぶり過ぎて忘れているのかも。
「槍を見せて欲しい。この店で手に入れた槍に結構助けられてね。この前残念だが折れてしまったから代わりを探しているんだ」
「……そうですか、『熊殺しのケイン』様のお役に立てて、それは何よりでございます。ええ、今お目に適うかどうか分かりませんが、ウチのお勧めの品をお出ししますね」
ツッコミ所が満載である。一体どうした!? 誰が熊殺しじゃ!
ミゲルにもう一発、ブローをかましとけば良かったかなぁ。と思っていると店主が五本程、槍を持って来た。普通なヤツでいいのよ?
何か色々あるな。二百センチありそうな長い物や、普通と思ったら柄まで鉄製の物。石突きにトゲが付いてる物や、長くて先に斧が……ハルバードじゃねぇか! 戦争にでも使うと思っているのか? くそぅ、なめやがってぇ。
「あの、これ下さい」
柄も鉄製の物にした。重さも問題無く持てたし、槍先も鋭くて良い感じ。虎に噛み折られちゃったから、丈夫な槍が欲しかったんだ。さすが店主、いい仕事するね。値段を聞いたら、金貨一枚になります、と。おお、安いと思う。やっぱりイイ人だった。
何故か汗を流して、顔色の悪い店主に礼を行って店を出た。風邪かな? 今はまだ寒いから、体には気を付けて欲しいものだ。
空を見ると、もう少し時間がありそうだったので雑貨屋へ行き、道中での保存食の追加と、草の葉に包まれていた飴を買った。子供でも居たらあげようと思って。……女の子でも良いよね。
他の店先を眺めながら引き返し、結局満員まで一人足りなかった馬車に乗り込んだ。間もなく出発するとの事。馬車は横向きの椅子に座り、荷物は中央に置く。俺は一番後ろの席を陣取り、槍と剣を自分の横にを立てかけて座る。
何か有った時は直ぐに後ろから外へ飛び出す為だ。……あれ? これって護衛の仕事じゃね?
◆◇◆◇◆◇◆◇
そう言えば、この手の馬車には護衛が付きもののはず。それに気が付いて馬車の客を見回すと全員が冒険者風だった。もちろん全員むさい男だ。……飴食べる?
イマニアムから王都までは結構距離があり、四日は掛かるらしい。東の村の時に会った元盗賊達は、北の村から二十日ぐらいか、もっと日数がかかったのかもなぁ。その見た目ポロポロだった彼らの事を思い出しながら、馬車に揺られる。
御者から金を払えば一応食事を用意するとの事。 もちろん自分で作っても良いと。一回食べてから買い続けるか決めよう。
初日にイマニアムの西の森を横目で通り過ぎたら、後は何も無い道だった。盗賊どころか、熊や鹿も見ない。居てもせいぜい草原の狼ぐらいのものだ。食事は一食銅貨八枚、食べてみると普通に旨かったので、そのまま頼むことにした。食事の時に聞いて見ると、
王都とそれぞれの街の間の道は、危険は少なくて、護衛を頼むことが無い方が多い。危険が有る時も、直ぐに情報が回り、冒険者達が素早く対処するらしい。銀貨一枚は安いかなと思ってはいたんだ。
三日目に少し大きな川を越えたと思ったら、地平線の向こうに王都? らしき町並みが見えてきた。その手前には大きな川が横たわっている。でも、その町並みを見るとイマニアムの街ぐらいだ、王都と言うから、もっと大きいと思っていた。
王都、思ったより小さいなとつぶやいたら、周りに笑われた。アンタ初めてなのか、あれは南門の城郭都市だと。
どうやらその城郭都市の向こうに王都があって、その手前は門としての町らしい。それでも他の地方の街に近い大きさで一つの城郭都市の人口も二万を超えるとか。軍に関係する人とその家族が住んでいて、その人達向けの店が多い。
御者の人が丁寧にそんな説明してくれた。
その城郭都市に近づくとその東西に小さ目の町が見える。御者の人の説明によると王都やその周辺の城郭都市や町の食料に担う、麦畑農業の人々が住む町らしい。城郭都市と町はそれぞれ繋がってはいるが、町の方からは王都へは入れない。
王都に行くには城郭都市を通らねばならない。と注意された。
それにしても、王都とその周辺を含めると人口はどれくらいになるのだろうか? 軽く見積もっても十万人は超えそうだ。二十万人もありえるかも。大きな城壁がある城と城下街によって形成された一つの都市を想像してたから、結構驚いた。
昔の勇者さん達が関係しているのかも知れない。
三日目の夜に、南門の城壁都市に着いて適当な宿に泊まった。都市に入る時は槍を持った門番が、それぞれの認識板の確認をしてた。持っていない者は銀貨二枚を取られるらしい。次の朝には王都に着くと聞き、宿の外に出て夜の町を回る。その人の多さに驚く。
食堂の他に、屋台も出てる。試しに買った肉串は店主によると羊の肉らしい。ちょっとクセはあるが変わった香辛料が使ってあって旨い。王都付近では羊が居るのか、もしかすると遊牧地もあるのだろうか? 泊まった宿は銀貨二枚と高いが、ここでは普通らしい。
イマニアムの高級宿より格段に良いベッドに入って納得した。
次の日に都市を通り抜け、その向こうにあったイマニアムの倍じゃ足りない大きさに驚きながら王都に入る。城は町の中心かと思ったら北側のちょっと東よりの外壁のところに、更なる城壁の中に建っている。王都の中心は広場になっていて、
そこから東西南北に大通りが伸びていて、それぞれの通りには色々な店が並んでいる。王都の中を走る乗り合い馬車を見て、ここを回るには馬車を使わないといけないよな、と納得した。広場に着くと馬車旅の終りのようだ。俺は御者の人に銅貨を数枚握らせ、
色々教えてくれた礼だと言って手を振り、笑顔で別れた。
さてどうしよう。宿に部屋を取ってから軍本部へ向こうのが良いのだろうが、長い馬車旅は初めてだったので尻が痛いし、疲れた。ゼピュローラの馬車は良かったなぁと今更ながらに思う。部屋で寝たいがまだ日は高い。
面倒事を終わらせてからゆっくり休むことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
巡回中の兵士に場所を聞き、国軍本部の建物の中にある、北部遠征軍作戦本部の部屋に入ると、その部屋の人間が俺の事をジロリと見てくる。俺はレスト・ステュワート様からの指示だと言って封蝋付きの巻物を、一番偉そうな人間に渡した。
ペーパーナイフで封蝋を剥ぎ取り、面倒臭そうな顔で中身を確認すると、別の羊皮紙にサラサラと一書した。そのまま書名したと思ったら、羊皮紙を丸めて机の中から蝋を取り出し、近くの蝋燭の火で溶かして紙に落とし、印を押して封蝋した。
「アチクの街へ行き、そこに居る作戦本部の人間にこれを渡せ」
そう言って巻物と貨幣が入っているらしい小袋を寄越した。旅費だろうか?
建物の外に出ると、何やら城の方が騒がしい。王都民が城の方に集まって何やら歓喜の声を上げてる。少し近づいて見ると、城のバルコニーか? そこから誰か派手な格好をして者が手を振っている。うーん? ……髪が黒い!? たぶん勇者だ!
もっと近寄ってその顔を見たかったが、その手の勇者には、物や人の鑑定が出来る能力があるかも知れない。万が一俺を見て、能力で調べられて同郷の者だと分かったら、勇者に祭り上げられる恐れがある。俺は力の無い、戦場では直ぐに死ぬような人間だ。
女神様だって何もしなくて良いと言っていたんだ。俺は少しだけ勇者見た後、その場から逃げるように歩き去る。
それから俺はおもむろに布を取り出し、眉を隠す感じで頭に巻いた。バンダナ風だ。腕をまくり上げ、職人を意識してみる。適当な武器屋に入り解体用のナイフを買い、その代金をを払いながら鍛冶職人の組合の場所はどこだ? と店の者に聞いてみる。
南門の近く、東側にある大きな建物だと教えてもらった。礼を言いそちらに向かう。
目的の建物に着き入り口の上に目を向ける。看板には、(王都鍛冶組合本部)と書かれていた。
建物に入ると背の低い、ヒゲ面の樽体型の人間が多かったが、普通の人種も少ないが居た。受付カウンターに向かい、珍しく女性の(でも樽体型だ)職員に組合員になりたいと申し出る。
「いいですけど……王都では今は軍関係の仕事で忙しくて、どこも弟子を受け入れてる余裕は無いですよ? 西の街のイヒシンの方が良いかも知れません。それでも構いませんか?」
「頼む」 そう言って示された代金、銀貨一枚を払い名前を告げる。
「オスカーだ」 これで良し。
※この話が出る頃に、王国の地図が活動報告に掲載されると思います。
話のイメージの補完としていただけたらと……
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




