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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第二章 三人目の村の生活
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2-8 三人目、村の生活からの出世

今回も読んでいただけると、うれしいです。

 弐章ノ八 三人目、村の生活からの出世

 

 

 騎士様に、ちなみに噂はどなたから? と聞いて見ると、冒険者組合のイマニアム支部の職員のミゲルだ。と聞かされてやっぱりなと納得した。……絶対コロス。

 

 俺から不穏の空気が漂ったのを感じたのか、騎士様は眉を(ひそ)めるが、すぐに何事も無かった様に話し出す。

 

「どうやら貴様が噂にあった冒険者らしいな、なるほど。噂に違わず良い腕をしてる」

「いえ、これは狼に襲われ死に掛けていたのを、後から仕留めただけでございます」


 俺の必死の弁明も、『ふっ』って鼻で笑って聞いちゃいない。くそぅ、演技スキル(自前)が無効化されるとは! 王国の騎士は只モンじゃないな? その後は聞きたくなかったが名前を聞かされ、言いたくなかった名前を言わされた。

 

 レスト・ステュワート、様。イマニアムを治める伯爵に仕え、騎士の爵位を持つ。一応の貴族様らしい。今までは北の魔獣討伐で国の軍隊が三割参加していて、それに従軍してたとか。それで戦える優秀な者を探してると言った。

 

「ステュワート様、それで私は北の魔獣討伐に参加すればよろしいので?」

「レストでよい。魔獣討伐だけなら、軍隊なり傭兵なり冒険者達に任せれば良い。北西の森人族の話は聞き及んだことはあるか? そこでの交渉に腕が立ち、頭が回る者を探してた。そこに見つけたのが貴様だ。ぜひ森人族との交渉役になって貰いたい」


 森人族……、い、行きてぇ。本当ならすごく行ってみたい。もう、最終目的地と言っていい。だがしかし、うーん。何も無い旅で行くのと、戦争の為の交渉で行くのとでは俺の印象が違いすぎる。

 

 ──これからの事、今の状況、自分の立場、色々考えて決断した。

 

「分かりました。今日の内に準備を済ませ、明朝王都へ向け、出発致します」

「ほう! 決めるのが存外早いな。貴様の説得には、もう少し時間が掛かると思っていたぞ。さすが決断が早いと噂通りという訳か。よし、ならば最初にイマニアムを経由して王都へ向かい、北部遠征軍作戦本部へこれを持って行き、指示を仰げ」


 そう言って、一巻きの封蝋付きの羊皮紙を渡された。これを持って行けば本部で指示が出るのだろう。しかし、俺ってどんな噂を言われているんだ? 何か大げさな話になっていないよな? なっていないといいなぁ……

 

「承りました。それで、レスト様はこれからどうなさるので?」

「我は他に回る所があるのでな。貴様には一人で彼の地へ行き、その力を存分に振るって欲しい」


 無理です、そんな力無いですから!


 俺の心の中の慟哭を余所に、騎士レストは案内役の狩人と共に村に帰って行った。その時の狩人の顔は、俺に何か言いたげな、済まなそうな表情をしてた。まあ騎士様が来てしまった事はしょうがない。気にしないで欲しい。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 虎の魔獣の毛皮は他の者にはもちろん内緒にした。なめしの前工程だけは今日の夜にでも、こっそりやるつもりだ。後は王都に行った時に組合に持って行き、職員に任せて売り払ってしまおう。


 村に戻った俺は、村長の所へ行って話しを聞いた。どうやら俺が森に向かって直ぐ後に護衛もつけず、騎士様が一人で来た。

 

 適当に村を見て回っていたと思ったら、狩人の一人に森までの案内を頼んだ。森林狼が出て危険だからお止めになった方が良いと、ご忠告申し上げたが、意にも介さず狩人を道案内に連れて森に向かったらしい。

 

 面倒な騎士様だ。よりにもよって俺が虎の魔獣を捌いてるタイミングで来るなんて……、ああもう、次だ次。


 俺は騎士様に頼まれ、北西の森人族との交渉に向かう事になった。そう説明する。驚きの表情の村長に続けて、少なからず命の危険がある、戻って来れないかも知れない。そう気落ちした表情で、これからの予想を話した。


「・・・・・・村長に頼みがあります。ゼピュローラ──俺の馬ですが、村に置いて行きますので後を頼みます。どうか可愛がってやって下さい」


 ふっ、と自嘲気味の笑みを作る。戦争に巻き込まれるかも知れないから、愛馬だけは道連れにしたくない。という設定を作った。村長は感極まった顔で快諾してくれた。俺の演技スキルも上達したかな?

 

 事情を知った他の村人から、行くなとか、元気な姿で帰って来いとか、涙ながらに言われた。あの狩人が皆に話しをしたらしい。俺は何も言わず、笑顔で皆と握手して家に帰った。

 

 ぶどう酒の樽をウェイドにやった。色々世話になったからな。家に戻り、残っている食料と、槍は無くなったけど、弓矢と虎の毛皮の防水コート、他にある程度の旅の準備をして荷物をまとめ、日持ちしない肉を処分のつもりで焼いて夕食とした。

 

 馬小屋に行き、ゼピュローラのブラッシングと餌やりを終え、掃除してると、何で私も連れて行かないのよ、と言わんばかり頭を噛み付かれた。色々考えた末の事なんだよ。そう言い、顔を撫でて謝る。

 

 明日はこの村から一旦イマニアムの街に行き、そこから王都行きの乗合馬車で向かう。イマニアムまでの行きは、ゼピュローラとの最後の旅になるだろう。

 

 俺は夜遅くまで虎の毛皮の汚れをこそぎ取って、村での最後の夜を過ごした。



 次の日、朝の準備を終え、村の出口に向かうと村長と何十人かの顔見知りが見送りに来てくれていた。村長からは昼食代わりのパンと、それから金貨五枚を渡された。馬と馬車の借り賃らしい。馬は村に置いて行くのにな。

 

 こんな大金受け取れないと返そうとしても、今まで世話になったからと頑として受け取らなかった。俺は今まで世話になりました。礼を言います。と答え、頭を下げるしか出来なかった。

 

 見送りの村人達に手を振り、それから帰りの御者代わりの村人を一人馬車に乗せ、村を後にする。ゼピュローラに任せ、手綱を握った。今まで手綱は何も気にしないで掴んでいるだけだったな。

 

 イマニアムまでの道中、村での事を考えてた。結局、乗馬の練習はしなかった。鏑矢の使い方はちゃんと分かるのだろうか? 槍も折れてしまったなぁ。ああ、森の狼達に挨拶が出来ないのが心残りか?

 

 途中のイマニアムの西の森で、狼を見ながら考える……狼!?

 

 しかも、森林狼。なんでここにいるんだ?


 何故かその狼はこっちを見て、『これから先、お供させてもらいます』みたいな顔をしてた。まさか、これが長が言ってた礼じゃないだろうな?


 あー、しかし俺、狼の表情が良く分かる様になったなぁ。森の中に見える灰色の狼を見て、軽く現実逃避をしてた俺を乗せて馬車はイマニアムへ進んだ。



 道中久しぶりの野営をした。村人には慣れて無いだろうから、と馬車の中で寝るように言って休んでもらった。どうせ見張りなんて要らないし。ゼピュローラが何故か怒っていてなだめるのが大変だった。あの泥棒狼! って言ってるような気する。


 ──あの狼は俺のせいじゃない。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 次の日は、まだ昼中よりも早くにイマニアムに着いた。ここに来るのも久しぶりだ。

 

 付いて来た御者代わりの村人に、餞別代りの虎の防水コートと銀貨五枚を渡した。もう使う事はないからな。そして良い宿に泊まってみやげでも買い、明日の朝は早めに村へ帰るようにしろと言った。途中で野宿しちゃうと見張りが大変だからね、普通なら。

 

 そして最後にゼピュローラを撫で、元気でな、と声を掛ける。……顔を噛まれた。宿に向かう彼らを手を振って見送り、王都行きの馬車を探す。

 

 北の門付近に行くと、何台かの乗合馬車が並んでた。荷物がある代金の安い馬車、幌だけ付いた八人乗り、六人乗りだが豪華な箱馬車、余計な面倒は御免だと八人乗りの所へ行って話しを聞く。

 

 まだ人数が少ないので、出発は明日。代金は銀貨一枚とか。俺は認識板を出して見せ合い、明日の予約として代金を渡した。

 

 ……冒険者組合に向かい、ミゲルを探す。建物に入ると俺の尋常じゃ無い雰囲気に、何人か居た冒険者がぎょっとして自分の得物に手を伸ばし、俺の顔を思い出してひそひそと話し合う。


 

「熊殺しのケインじゃねーか、西の村へ移り住んだって聞いたけど、何があった?」

「あの血走った目! すげぇ怒ってるな、こりゃ死人が出るぜ……」

「誰かを探してるな。誰だよ怒らせたのは、化けてでねぇで安らかに眠ってくれ……」



 ひどい言われようである。ええぃミゲルを呼べぃ!

 

「よお! ケイン、久しぶりだな! 元気だったか?」

「──会いたかったぜぇ、ミゲル。ちょっとこっち来いよ」


 建物の奥に居たのか、ミゲルが現れて俺に声をかけてきた。そのままカウンター外へ呼び出す。受付カウンターから出て来たミゲルを部屋の片隅に呼び、肩に腕を回し小声で話す。

 

「俺が噂になっているって、村に騎士サマが来たんだけど?」

「おお! 俺が王都の組合本部にすげぇヤツが居るって推薦しておいたからな!」

「……俺、森人族の交渉に行くことになったんだけど?」

「そりゃすげぇ! 大出世じゃねぇか、俺が推薦した甲斐があったな! ガハハハ──ぐほぅっ!」


 組合の職員だからね、顔はダメな訳よ。狙うなら捻りこむようにボデーに一発だ。ピクピクと床で痙攣してるミゲルを見て溜飲を下げ、外に出て宿に向かう。

 

「やりやがった……やっぱり兄貴は半端ないぜ」 後ろから誰かの声が聞こえたが、『お兄ちゃん』じゃないから俺の事では無い。


 それから俺は、この世界で初めて泊まった宿に部屋を取り、おかみさんから懐かしい料理をいただき、久しぶりのベッドで眠りについた。

 

 いい夢見れそう。

 

 

 

一期一会を大切に……しない!?


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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