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異世界に召還された三人目  作者: こたつねこ
第二章 三人目の村の生活
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2-6 三人目、村の生活で大物食い

読んでいただけると、うれしいです。

 弐章ノ六 三人目、村の生活で大物食い



 来た時と同じように、村へこっそり帰った。ウェイドの所へ鏑矢を持って行く途中にすれ違った顔見知りの狩人に、何か獣臭いとか言われた。失礼な、でも気を付けよう。

 

 ウェイドに鏑矢を二十本程作ってくれと頼む。後で村の顔役達に説明して見せるから、代金は村長から出ると言うと、笑顔で了承してもらえた。ついでに二本作ってくれとお願いすると今度酒を奢ってくれと返される。ぶどう酒でもお裾分けしよう。

 

 さて、明日の虎狩りの作戦を考えなくてはならない。まず相手の機動力を奪わないと逃げ回られるし鹿でも熊でも神出鬼没で襲われる。木々が密集している所じゃ無い方がいいよな。それでも森の中に駆け込めば同じか。

 

 虎バサミで脚を捕まえるのが良いかも知れないけど、鉄製のノコギリ刃付きのハサミはともかく、生憎この村では鉄の鎖は見ないんだよなぁ。王都行けばありそうだが。

 

 少し考えて狩人に聞いてみる。川の魚はどうやって獲るのか、銛とかはあるのかと。どうやら俺が欲しかった網は無いらしい。簡単な仕掛けの釣りか、ちょっと返しの有る槍で獲る程度との事だった。

 

 網で絡めとって、槍で突く作戦は駄目。おそらく矢も効かないだろうし、狩りする時は食肉にするのがほとんどの為、肉が駄目になる毒を使う事も無い。毒自体が手に入らないので毒矢も駄目。

 

 返しの付いた杭に、丈夫な縄を括りつけて、体か脚を突き刺し逃がさないようにする。うーん、俺にはこれぐらいしか考えられないなぁ。

 

 とりあえず、出来るだけ硬い木材をウェイドに聞いて何とか手に入れ、他の村人に丈夫な縄を作りたいが、何で作ったら良いか聞いて見た。どうやら、籠を編む時に使う蔓草が丈夫だと言われた。

 

 その村人に取りに行きたいからと場所を教えてもらうと、世話になってるからアンタにやるよと、籠の材料であったらしい蔓草を何本も手渡された。……うれしいな。俺は頭を下げ、礼を言って受け取った。

 

 それからは家に戻り、ゼビュローラにちょっと睨まれてる気がしながらも硬い木材を削っていく。苦労しながらも四つの返しを削りだし、先端を尖らせて、縄を縛るの穴を開けた。それを念のために三本作る。

 

 もらった蔓草を依り合わせ編んでいく、左右に引っ張って見ると確かに丈夫そうで切れにくいだろう。それも杭一本あたり二本ずつ、計六本作り、杭にそれぞれ結び付けた。

 

 おっと、忘れてた。慌てて昨日の熊はどうなったか狩人に聞き、解体して必要な部分を取り終わった、他の部分、毛皮と、内臓とか硬くて食べない肉とかを譲り受けた。狩人達にそれどうするんだ? と聞かれ、虎狩りに使うと言うと冗談だと思ったのか笑われた。

 

 まあ、俺も半分冗談のつもりで話したので、笑って狼避けのつもりだと返しておいた。結果は似たような物だと思う。

 

 やれる事はすべてやった。虎は怖いが全力を出し切るだけだ。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 次の朝、普段通りにゼピュローラの世話をし、朝食を食べた。気負いは無いと思う。それから村長と狩人達に森とか森林狼の様子を見てくるから、心配するなと言って一人で森へ向かう。

 

 大荷物になったが、剣を腰に差し、熊の毛皮や肉・内臓と仕掛けの杭を背負い、弓矢と槍を肩に掛けて歩いて行く。気休め程度の硬い革で作ったベストも着た。鏑矢も二本ちゃんと矢筒に入ってる。

 

 見張り小屋の者に、話は村長に通してあるからと手を振り、川を渡り森の中に入って行く。しばらく進むと案内の狼が来て……? 俺の周りを回ったかと思うと、クンクン背中の匂いを嗅ぎ、『おみやげですか?』みたいな顔をする。

 

 ちがうわ! さっさと長を呼んで来い! と怒鳴るとキャインキャインと鳴いて森の奥に駆けて行った。俺の中にあった君らのイメージが駄々下がりだ。

 

 長が現れ、その周りの狼達は何故かそわそわしてる。自分達で獲った物しか食べないんだよね? これはおみやげじゃ無いんだからね? 

 

 気を取り直し、虎の場所を聞く。今はこの森の南西部に居るらしい。長にその近くで木々の少ない開けた(ひらけた)場所は無いかと質問すると、あると答えた。その場所に向かってもらう。

 

 

 その開けた場所は、直径で村の大きさよりちょっと狭いくらいの広さだろう。あらかじめ聞いておいた虎の場所へ向かって風が吹いていると思う。熊肉の匂いがそちらに流れて行けば良いが。

 

 まず、狼達には二頭ずつになってもらい、虎の居る方向を開けるような感じでこの広場を囲んでもらう。囲んだ者達は虎を逃がさない為の包囲網で、持ち場から動くなと長から説明してもらった。

 

 包囲網になってもらう狼達は二十四頭。その他五頭と長は虎が誘き寄せ(おびきよせ)られて、餌に食いついたら俺が大きな音を出して合図するから、すぐに来てもらい攻撃してくれと言っておく。

 

 その後、俺はその広場の中心辺りに人間一人がしゃがんで隠れるくらいの穴を堀り、その周辺に熊の内臓をぶちまけ、肉を置き、毛皮を穴には入らない槍と穴に入った俺に被せて準備が完了。返し付きの杭は縄の反対側に持って来た暖炉の薪を横向きに縛りつけ、深く土に埋めて抜けないようにした。

 

 ちょっと待ってると、外から何かを引きずる音がする。毛皮の隙間から覗いて見ると、狼の一頭が血だらけの鹿を咥えて、ここに持って来るようだ。念の為なのか、俺の作戦に不安を抱いたのか分からないが、手伝ってくれるようだ。手間かけさせてスマンね。

 

 その鹿の血の後と、熊の匂いに釣られて虎が来るのを待つだけだ。

 

 ……出来れば早めにお願いします。血のニオイがすごくて俺の胃液が逆流しそう。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇



 そう言えば虎って夜行性? 昼間は寝てる? 虎を殺す事しか考えてなくて、生態の事は忘れてたなぁ。二、三日? もしかしたら、もっと掛かるかも知れんなぁ。と穴の中で保存食をかじり、辺りが暗くなっていく中で自分の考えの浅さに悔やむ。

 

 さすがに一匹で狼達の住む森の中で生きてきたんだ。警戒心は強いだろうし、こんな穴だらけの作戦はお見通しかもと思っていると何か外から呻き声がする。そーっと隙間から覗くと記憶より遥かに大きい虎が見えた。

 

 ……警戒心が強いんじゃなくて、今まで死ななかったから気が大きくなっていたのかもなぁ。

 

「グルルルルゥ……」


 なるほど。熊が鹿を襲い、ここまで引きずって来たとか思っているのかも。虎は目が良くないんだっけ? ここまで近づいたのは不注意だよなぁ

 

 虎は鹿の死体を引っかいて、少し齧った後、熊肉を見つけ食べ始めた。俺の隠れてる穴から、もう二メートルも無い。穴の外、それでも熊の毛皮の下にある返し付きの杭にそっと手を伸ばす。

 

 心臓がドクドク五月蝿い。虎の向きが変わるのを静かに待つ。狼達には虎が居るのは分かっているだろう。でも、俺は遠吠えは出来ないからな。もうちょっと待ってね。

 

 虎が後ろでは無いが、横を向いて伏せて食べ始めた。完全にリラックスをしている様子……その時、風向きが変わって狼の匂いがしたのか、俺とは逆の森の方へに顔を向けた。

 

 俺は心を無にして、毛皮を跳ね上げ穴から飛び出し、返し付きの杭を後脚の太腿辺りに全力で突き刺す。直後に反対側へ飛び、転がって逃げた。

 

「グオォォォッ!!」


 俺の攻撃に虎は驚きながらも攻撃した直後に、すぐ反撃の爪が来た。──背中に熱いモノが走り抜けたのを感じた。

 

 虎が追撃の爪を伸ばすが、脚が引っ掛かり俺に攻撃出来ない。それを見た俺はすぐさま鏑矢を取り出し天に向けて射た。

 

「ビョオオオォォォ……!」


「……ウォオオオン!!」


 高い音を引きながら矢が飛んで行くと、遠くから何頭もの遠吠えが聞こえてくる。すぐにでも長達が来るだろう。それまでの間、俺は自分の槍を構えて虎に攻撃する。熊は瞬殺できた槍術だったが、虎相手には爪を防ぐので精一杯だ。

 

 冷や汗を流しながら爪を捌いていると、虎の背中の方向から虎より大きい銀狼が現れ、虎の首に噛み付いた。他の狼達も現れ、少しの隙を付いて各々が虎に噛み付き、虎はそれを爪で攻撃し、振り払ってる。

 

「グルアアアアッ!!」

「ガァアアアッ!!」

 

 しかし、さすがに今まで森で生き残った虎だ。長の噛み付きを身を捩って抜け出し、逆に牙や爪で攻撃してる。虎も必死だ。その爪は長には通じてなかったが。

 

 返し付きの杭が壊れそうになってる。このまま下手をすると、また逃げられるかも知れない。俺は隙を伺い、別の返し付きの杭を突き刺そうと試みるが、虎も警戒して近寄らせない。

 

 想像以上の身体能力だ。このまま逃がしたら、包囲網も突破されるかも知れない。焦った俺が強引に突き出す槍も、長と戦いながらも爪で弾く。周りの狼の噛み付きにも毛皮を血だらけにしながら振り払っている。

 

 そんな事をしてる内に、刺さった杭の縄がねじ切れ、俺の必死で突き出した予備の返し付きの杭も弾き飛ばされ手から離れた。それを好機と見たのか、長の噛み付きを身を捻って避けると森に向かって逃げ出そうとする。その前へ俺は立ち塞がる。

 

 虎は俺くらい、鎧袖一触のつもりか、何の逡巡も無く向かって来る。俺の手にはいつもの槍。虎の体の中心線を狙って突き出すも、噛み取られ、そのまま折り砕かれてしまう。

 

 残った槍の残骸を手放し、次の瞬間、腰の剣に手を伸ばす。

 

「ザシュッ!」


 抜いた剣は虎の首の中心より少し外れた場所に刺さっていた。

 

 だが、虎はまだ生きている。爪で俺の顔や腕を引っかき、頭を噛み潰そうと牙が迫る。少し呆けてた俺は痛みで我に返ると、慌てて押し倒されないように足を踏ん張り、剣を両手で掴んで強引に振り抜く。

 

 ブツッと音がしたと思ったら、首の皮の一部が繋がったまま、虎の頭を落としてた。まだ虎は痙 攣(けいれん)してたが、これで終わりだ。

 

 はぁー、やっと倒せたと俺は地面に大の字になり、暗くなった空を見上げながら意識が遠くなっていくのを感じた。

 

 背中、痛ぇ。

 

 

 

自分にはこれが精一杯……


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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