2-1 三人目、村の生活を楽しむ
ゆるーく続けていけたらと思います。
読んでいただけると、うれしいです。
弐章ノ壱 三人目、村の生活を楽しむ
雪が降る前に村に帰って来た。
荷物を村長宅へ持って行き下ろす。街へ同行した村人二人もそれぞれが自分の荷物を持っている。家族か恋人へ、おみやげも買って有るのかも知れないな。
……家族、恋人?
おおお、寒いっ、寒いよ! 誰かに暖めて欲しい、ぬくもりが欲しいっ!
急に自分の体を抱きしめ、寒そうにしてる俺を二人が不思議そうに見て、風邪に気をつけろよ? とか言ってそれぞれの家に帰って行く。
俺にも幸せを分けてください。
ゼピュローラが私が居るじゃない、と言わんばかりに顔を摺り寄せてくれる。ありがとう、と感謝しながら村の自分の家に帰る事にする。
小さ目の家を頼んだつもりだが、馬小屋付きだった為、それなりに大きい。本来は馬や牛等の家畜が五頭くらい入る建物らしい。馬と馬車が有るので助かる。
馬小屋付きの家は、ここくらいしか空いてなかったとか説明された。本当かな? もし、気を使わせたなら申し訳なく思う。
家に戻り、ゼピュローラを小屋に連れて行くと、掃除してあり、麦藁が沢山敷いてあった。馬には寒い思いをさせたくなかったので、村人の気持ちに感謝した。馬車を片付け、ゼピュローラの顔を濡れた布で拭いてやり、ブラッシング。
たっぷりの飼い葉と水、それに塩を与え、食んでるのを見ながら撫でる。この世界の馬は雪の乗馬は大丈夫なのか? 乗馬の練習出来るかなとか考える。それに答えるようにヒヒンと鳴いた。任せて、と言われた気がした。
母屋に戻り暖炉に薪に並べて火を付ける。火打ち石で火を付けるのも上手くなったものだ。暖炉の上には煮炊きが出来る様になっていてズボラの俺には助かる。銅製のケトルに水を入れ暖炉の上に置いた。今日の夕食は簡単にパンとチーズ、それに薬草茶で済ませよう。
と思ってたら、近くに住んでいる元気なおばちゃんがチキンパイを持って来てくれた。どうせこんなことだろうと笑顔で言われた。よくわかったね、でも嬉しい。礼を言ってお返しに街で買った香辛料入りの小瓶を御裾分けした。
心が暖かくなり、感謝しながらありがたくパイをいただく。ニンニクが効いた鳥肉と野菜がパイからあふれ出て香りが広がる。たまらず齧り付く。あー、うまいなぁ。何だか酒が飲みたくなって来た。
普段はそんなに酒を飲む方じゃなかったので量は仕入れなかったが、それでも街で買った、小樽に入った上等なぶどう酒を少しだけ、素朴な焼き物の器に注いで飲んだ。これはヤバイ、飲み過ぎないようにしないと。
◆◇◆◇◆◇◆◇
もう二、三日で雪が降ると言う晴れた日、収穫祭をした。
村の真ん中で古い材木や枯れ木、乾燥した木の葉などで積み上げた大きな焚き火。それの前に収穫物の麦と野菜や狩りで獲れた鹿や猪の肉、それらで作られた大量の料理、そして酒などが並ぶ。
村長が恵みの神に感謝する祝詞を上げて皆で祈る。俺は微妙な気持ちになりながらも、村の為にあの女神様に祈る。そう言えば他の神様って居るのだろうか? すごい力は無いけど案外近くに居たりするかも知れない。
どっちでもいいやと考えを振り払う。どちらにしても大した事にはならんよね。
それから俺の事を村長が説明した。村を救った恩人だとか、住んでくれる事になったとか。俺も照れくさくなりながらも、よろしく頼むと頭を下げた。もうほとんどの村人から顔見知りになっていたからか、好意的に受け止められた。
その後は飲めや歌えの大騒ぎだ。どこでもそれは変わらないらしい。のん兵衛のオヤジ達が肩を組んで陽気に歌ってる。もちろんジョッキは持ったまま。女子供は御馳走を食べまくる。俺も飲んで食べまくった。
もしも甘いお菓子とか有ったら喜ぶかな? いや、子供がね、うん子供が喜ぶかなと思っただけ。
何人もの人からジョッキのお代わりを寄越された。嬉しいが飲みきれん。すっぱぬるいエールはカンベンしてくれ。後、女の子達は酔っ払い男達から遠ざけられてた。
……そりゃないよ。
夜遅くまで続いた収穫祭は、オヤジ達が奥様方に連れて行かれる辺りで終了した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
いよいよ雪が降り出した。
雪下ろしとかもしなくてはならないかな? と聞いて見るとそこまでは降らないらしい。でも、煙突だけは注意して置かないと気が付いたら家の中の者が冷たくなってた。そんな事があるらしい。一酸化炭素中毒か? それにしてもおっかねぇ。
探すと梯子は小屋の中に置いてあったので、すぐに煙突の雪下ろしが出来る様にしておく。馬は晴れた日にでも外に出すと喜んで駆け回ると聞いた。犬か。駆け回る犬を思い出し、ついでに丸くなる猫を思い出した。
そう言えば猫は見かけないと思う。農村部ではネズミ対策に猫は飼わないのだろうか。
聞いて見ると、見たことも無いらしい。虎の小さくなったヤツだと説明すると、そんなおっかねぇ生き物を飼うヤツが居るのか、と驚かれた。俺もびっくりだ。
じゃあネズミはどうするんだ、居ないのか? と聞いて見ると、ああ、ネズミは居るよと。でかいらしい。
その対策には犬を使うと聞いた。どうも専門の犬が居るみたいだ。家具とかの上の方には登れないが、人間がネズミを地面まで追い落とすと、すごい速さでネズミを追いかけて噛み殺すらしい。
試しに見せてもらったネズミはでかかった。こりゃ猫は無理ですわ。ドブネズミの二、三倍はありそうだ。これが家の中を素早く動き回るの? 地獄ですわー
ネズミ狩りの犬は人には大人しくて、人懐っこかった。なでなで……毛、硬っ!
ネズミが俺の家には出ません様にと、祈りながら雪の村を散歩する。まだ積もるくらいじゃ無いだろう。顔見知りの村人に世間話で少し聞いていく。女性は緑が濃くて草木が伸びまくる頃に採って来た植物を使って、機を織る。
子供には今の時間を使って文字の読み書き、数の簡単な計算を教える。男共は農機具や家具の製作、修理や焚きつけに使う薪拾いが主な仕事と聞いた。雪の積もる間は狩りはするのか? そんな質問をしてみる。
兎を始め、鹿や猪は出るし、ぜひ獲りたいんだが熊が怖いと。本来熊は出ない(冬眠かな?)らしいが、雪の有る間に出る熊に見つかると、間違いなく食い殺されるから、兎以外の狩りには行けない。と説明された。
なるほどね。今出る様な冬眠しそこねた熊って食い物が足りなかった時だよね? 人間が餌に見えちゃうのか。おっかねぇ、狩りは無し無し。
俺に何か出来る事は無いかなとか考える。
狩りは頑張れば出来そうだけど、村の狩人の仕事を取るのは避けたい。もし、大物でも獲って来て、それが当たり前に頼られる様になるのは良くないだろう。
村人でも出来て、俺が出来るような事は無いかな? ふと村の井戸を見た。石が円状に積み上げていた。地面から五十センチくらいの高さだ。その上にゴミが入らない様に板が被せてある。その上に縄の付いた桶が置かれてた。
普段でも大変そうなのに、雪の間は凍りついて辛いだろう。
これを手押しポンプ式にして、ポンプは青銅にすれば……はっ!? イカン。王都で確認した訳じゃないから何とも言えないけど、農村部で手押しポンプは無いな。じゃあ、えーと、滑車を付けて縄を巻いて、両端に桶かな。四隅に柱を立てて屋根を着けよう。
滑車にハンドル付けて、手回し式にすれば手も冷たく無いだろう。とりあえず、家に戻り板切れと炭を使って設計していく。紙と筆も欲しいな。
何とか材料を村人から譲ってもらい、自分の家で作った。ああ、今度は大工道具も欲しいな、と思いながら井戸小屋一戸分が出来た。柱四本と屋根になる大きな一枚板、桶二個と長い縄、そしてハンドルが付いた滑車。
早速、近くの井戸に持って行き組み立てる。もう少し天井は高い方がいいな、とか思ったり、滑車がスムースに回るように調整したり。なんとか形には成った。近所の人達も見に来てる。試しに水を汲んでみる。うーむ、子供には力が要るかなぁ。ハンドルの長さが……
ぶつぶつ言いながら、次回の製作の時の修正点を出して行く。村人達にも勧めて見ると、おーとか、これはなかなかとか、言っている。だがしかし、微妙な顔だ。あれ、もしかして俺、余計な事したか? そんな事を思っていると、
「便利だと思うよ、雪が無くなったら、ありがたく使わせてもらうよ」
……え? 使う、今、寒い、ナイナイよ?
「普段から暖炉焚いてるから、水が必要なら周りの雪をだな……」
あっ! キャンプじゃないんだから、雪から水を作る為に火を炊くわけじゃ無い! よく考えれば当たり前の事を俺は見逃していた。ちょっと人に聞けば、こんな恥ずかしい事にはならなかった。喜ぶ顔が見たくてつい……
サプライズは失敗フラグ。繰り返す、サプライズは失敗フラグ。
あ゛ー! と叫んで言って走り去る、俺を可哀相な子でも見る様な視線を感じた。
後から、雪が無くなったら他の人に教えるから、と慰めてくれるおばちゃんに惚れかけた。
でも慰める役は若い女の子でお願いします。
ヒロイン? ヒーローの様に強くてカッコイイ……(ゴクリ)
人の夢は儚いと書きますね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




