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帝国参謀将軍ベルモンド

スイーツではない、スウィーツだ。以後、気をつけたまえ。


「なんだと? 一夜にして村人全員が殺された? 野盗の仕業か?」

「いいえ、ベルモンド様。金品などを奪ったあとは無く、村人たちにもほとんど抵抗はなかったようです。野盗の線は薄いかと」


 ふむ、となるとプロの戦闘集団か。

 誰かが我らの計画に気づき、モルモットどもを抹殺したということだな。

 まったく、もう少しで細菌兵器のデータが取れたというのに、小癪なことを。

 ちっ、また爪がボロボロになる。イラつくとどうしても爪を噛んでしまうな。

 

「分かった。村の周辺を探れ。怪しい人物を見つけ次第、拷問してでも情報を吐かせろ」

「はっ!」


 報告に来た部下が帰ると、入れ替わりに豊かな髭を蓄えた老人が入ってきた。

 魔法将軍、あるいは帝国の賢者とも呼ばれるテオドール侯爵だ。


「どうするのかね、ベルモンド卿? 次回の戦略会議までに細菌兵器の有効性を実証するのであろう。参謀将軍としての意見を聞かせてくれ」

「止む終えません。また次の会議まで持ち越しといったところです」


 主戦派の筋肉馬鹿どもの笑う姿が思い浮かぶ。

 まったく、どこの誰がやってくれたのか知らないが、このツケは必ず支払ってもらうぞ。


「分かっているとは思うが、ベルモンド卿。このまま無用に戦を繰り返せば帝国の血は痩せ細る一方だ。ただでさえ一等市民よりニ等市民以下の数が圧倒的に多いのだからな」

「はい。戦争を一変させる兵器の開発。それこそが帝国の明日を切り開く光でございましょう」


 ここ十年に渡る戦乱で、帝国は常に勝利を重ねてはいるが、兵士の数はどんどん少なくなっている。さらには帝国の領土が増えるほど、領土を安全に管理するための兵士を確保せねばならない。

 今では新兵の訓練が終わり次第、十分な演習も行わずに前線に送るほどの慢性的な兵士不足になっていた。そして素行の悪い将校など、質の悪い兵士でも使わざる負えない事態に陥っている。

 本来であれば併合した領土を完全に掌握し、消耗した部隊の再編成が終わるまで内政に専念するべきなのだが、帝国にはそれが出来ない理由があった。


「ところで閣下。ヴァルキュリア様達はいかがお過ごしで?」

「ふむ。訓練場で稽古に励んでおられるよ。といっても、自分たち以外に相手になる者はいないようだがね」

「ははは、それはそうでしょうね」


 神が遣わせし戦乙女、ヴァルキュリア。

 ヴァルキュリア達が十年前に帝国にやって来てからというもの、帝国の首脳部は皇帝陛下も含めて、好戦派一色となってしまった。

 内政に励むべきと考えているのは、今では私とここにいるテオドール侯爵くらいなものだろう。後は変人として有名な機械将軍レオナルドがいるが、あいつは発明以外何も興味はないので除外して良い。

 帝国がこうなってしまったのも、全てはヴァルキュリアの一言が始まりだった。


「戦場で華々しく死んだ勇者の魂は、神の館ヴァルハラに招かれ永遠を手に入れる……か」


 帝国が戦争を止められない理由。それは、神々が戦争を望まれているからに他ならない。

 神々は予言にある終末の戦争"ラグナロク"のために勇者の魂を集めているのだ。

 帝国の兵士たちは喜び勇んで自ら戦火に飛び込んでいく。戦争の火は瞬く間に大地に広がり、世界を燃やすことだろう。

 果たして世界が燃え尽きた後にどれだけの人が生き残るのか。帝国はその時に存続しているのだろうか。

 死が渦巻く世界を想像して、背筋に悪寒が走った。


「兵器の導入が遠のく以上、何かしらの代替案を練らねばなるまい」

「はい、テオドール卿。もちろん代替案は考えてあります。前回検討していた傭兵部隊、それから奴隷部隊の編成を提案します。二等市民に指揮を取らせ、名誉職でも与えるとしましょう」

「ふん。攻撃した街を略奪するような蛮族共の部隊かね。やれやれ、気が重いわ」

 

 致し方あるまい。

 国の併合後に多少の問題が生じようと所詮は些細な事だ、なんとでもなる。

 全ては帝国を存続させつつ、大地を統一し、戦乱無き平和な千年帝国を樹立するためである。

 そのためならば私はどんな悪事にも手を染めよう……。


ブログで先行配信してます。

http://garmthedeath.blog.fc2.com


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