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エルフの偵察者ベイラ


 帝国の動きは想像以上に早かった。

 ゴトランド王国は滅びはしたが、大なり小なり帝国に被害を与えているはずだ。帝国は部隊の再編成、国内の掌握に時間を費やす必要がある。その間に他国と協力し、帝国への備えをすれば良いと我々は考えていた。

 しかし、帝国はゴトランドを飲み込むや否や、進撃の速度を緩めずにドワーフ王国とエルフ王国に対して攻勢に出たのだ。

 天然の堅城で守れているドワーフ達とは違い、我々エルフ族は森に分散して生きている。領土全てを守るのは困難を極めた。

 案の定、森の砦の一角が崩され、逃げ遅れたエルフ達が捕まってしまったらしい。

 そして何よりも私にとって最悪なのは、略奪を受けた村が私の生まれ故郷だったということだ。

 村には父と母、そしてまだ幼い妹が暮らしていたはず。無事に逃げ延びていれば良いが、帝国に捕まっているとしたら……。


「ベイラ、焦りは禁物だ。我々の任務はあくまで偵察。例え目標を発見しても救出作戦は後方部隊の仕事だぞ。急いだところで直ぐに捕虜を救出出来るわけではない」

「分かっている。もしかしたら家族が捕まっているかも知れないんだ、ベストを尽くすさ」


 私はエルフのレンジャー部隊に所属している。偵察と奇襲を専門とした精鋭部隊だ。

 今回の任務は捕虜の居場所を見つけること。部隊の人数も六名しかいない。

 救出は後続のレンジャー大隊が行う。おそらく帝国はエルフを奴隷として輸送するだろうから、輸送中の馬車を襲撃して捕虜を奪還する作戦だ。

 エルフは人間にとって美麗らしく、奴隷となったものは碌な扱いを受けない。

 エルフの誇りのためにも、そして私の家族のためにもこの任務は必ず成功させなくてはならないのだ。


 私は流行る気持ちを抑えて、帝国の警備兵をやり過ごしながら、敵軍の只中にある宿営地へと接近して行った。




「傭兵達は呑気に酔いつぶれているようだな」

「ああ、仕事がしやすくて丁度良い。ここから先は二人一組で行動する。探索はニ時間。時間が来たら捕虜が見つかってなくても一旦ここに戻れ。捕虜を見つけた組はここの木に目印を付けてから撤退だ。残りの組は待たなくて良い」


 散開した後、私は相方のレンジャーと協力して探索を開始した。

 宿営地付近の樹々は切り倒されているが、仮設の木の家が点々と建てられているので、隠れる場所には困らない。

 我々エルフ族は身軽な種族だ。足音を立てずに動くくらいは子供でも出来る。さらにレンジャー部隊には潜伏のスペシャリスト達が揃っている。闇夜に紛れれば、酔っ払った兵士から隠れることなど造作もない。


 探索を開始して一時間後、遂に怪しい施設を見つけた。

 周囲が柵で覆われおり、明らかに内部からの逃走を防ぐ構造になっている。


「あれが怪しいな、ベイラ」

「ああ、だがちょっと待て、何かがおかしい……」


 妙に帝国兵が騒いでいる。

 武器を持って武装した兵士が建物の周囲を警戒しているようだ。


「どうする? あれでは侵入は厳しいぞ。もしかして他の組が見つかったのか?」

「分からん。ここは一体待機して様子を……待て、あれは!?」


 帝国兵が何かを引きずっている。丁度、明かりがあるところからは外れており、何を持っているのかが分からない。

 その奥には穴を掘っている兵士がいた。

 雲間から一瞬月の光が差した。


「……あいつら!」

「待て、ベイラ! くそっ」


 嫌な予感がする。だが、今すぐ確かめないと。

 何か取り返しのつかないことが行われているような、そんな焦燥感がした。

 的確に帝国兵の目を盗みながら、穴を掘っている兵士の下へと近づく。

 そるとそこには……。


「うっ……」


 大量のエルフの死体だ。

 穴を掘っている兵士達の側には死体の山があった。

 これから穴に落とすつもりなのだろう。兵士達が黙々と穴を掘っている。

 

 一体何なんなのだこれは?

 なぜこんなにエルフの死体がある?

 戦で死んだ者達か?


 また他の兵士が死体を運んできた。

 どこから運んできたんだ?

 ……まさか。


 私は建物の中を見るべく辺りを探索した。

 窓がある。鉄格子が嵌められているが室内は見えた。

 ……そこにあったのは目を覆いたくなるほどの惨劇だ。

 壁中に血が飛び散り、恐怖に顔を歪めたエルフ達が事切れていた。

 松明の火に照らされて、何も映さない瞳が光っている。


 訳の分からぬ衝動に駆られて、私は夢中で他の建物の中も確認していく。

 すると何軒目かで見知った顔が目に入った。あれは私の故郷の村にいた教師のエムブラお婆さんだ。その顔はしかし胴体と切り離されている……。

 私は帝国兵に見つかる危険承知で、建物の中に侵入した。

 床には血溜まりが出来ており死体が折り重なっている。

 そこにいたのは確かに私の村にいた人たちだ、そして私の――。


「お、おのれ! 帝国の糞ども! 悪魔どもめ! よくもこんなことを!」


 私の叫び声に気づき帝国兵が建物の中に入ってきた。

 殺してやる!

 私は素早く矢をつがえると、確認しに来た兵士に向かって矢を放った。


ブログで先行配信してます。

http://garmthedeath.blog.fc2.com/blog-category-1.html


ブクマ&評価が励みになるんで、適当によろしくおなしゃす。


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