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邪竜ファフニール

待てよ、えびせんを常に半分に割りながら食べていけば一生なくならないんじゃないか?



 二匹……いや、三匹か。

 微かに洞窟の入り口から生物の匂いが流れ込んできた。

 人が二匹、ドワーフが一匹、我が住処に入ってきたようだ。

 愚かな。また我が宝を奪いに来たのか。

 再び見せしめに村を焼かねば分からぬか? 思えば、外には久しく出ておらぬ。人間とは記憶力の悪い生き物だ。時が経つと我が恐ろしさも忘れてしまうのだろう。


 侵入者を掃除した後にどこの村を滅ぼすか考えていると、いつの間にか目の前に人の雌が二匹いた。

 馬鹿な? 一体何時現れたのだ?


「おい、トカゲ。お前がファフニールか?」

「……何者だ貴様ら。この我をトカゲと同列に扱うとは、よほど死にたいらしいな」

「ねぇ、グズル。いいからさっさとやっちゃおうよ。何かここジメジメしてるし臭いし、あんまり居たくないんだけど」


 増長も甚だしい。しばらく見ぬ間に人とはここまで愚かになったのか。

 これは村の二つ三つ……いや、国を一つ潰すくらいせねばならぬな。


「まぁ待てよ、ソグン。なぁ、お前がファフニールなんだろ?」

「左様、我がファフニールよ。そして貴様らの死でもある」

「あはは、僕達の死だってさ! ちょっとウケるんだけど!」


 竜を目の前にしてこの態度とは、どうやら人間達はよほど平和ボケしていると見える。

 我が息を吹きかけるだけで死ぬ脆弱な存在であるというのに、無知とは恐ろしきものよの。


「そうか、やっぱりお前がファフニールか! そうだと思ったんだよな!」

「あはは、こんな黒竜が何匹もいたら困るよ、グズル。臭くてたまらないじゃないか」


 あくまで我を侮るか。

 もう良い。一思いに殺してやろう。冥界で自らの愚かさを悔いるが良い!

 我は大きく息を吸った。

 

「おっと、させないよ!」


 人間の雌はそう言い放つと何やら小さな短剣を投げてきた。

 何がしたいのだこいつは。

 こんな物で我をどうにか出来ると本気で思っているのか?


「滅せよ!」


 腐食のブレス。

 どんな生物であれ、我が息吹を浴びた者は一瞬の内に腐り果てる。

 肉は零れ落ち、骨は粉々になり、分解されて塵となるのだ。

 開けた空の下ならまだしも、洞窟という限られた空間にあっては、我が息吹から逃れる術はない。

 人の雌どもに頭上から浴びせかけるようにブレスを吐きかけた。


「くっさー。おい、ソグン、お前の言うとおりだ。本当に臭いな」

「ぎゃああああ、鼻が曲がる! ちゃんと歯を磨きなよ!」


 臭い臭いとやかましい奴らだ。

 ……ん? いや待て。なぜまだ生きておるのだ?

 満遍なく我が息吹に触れたはず……。


「あははは、解せないって顔してるね。僕は沈黙の戦乙女ソグン。僕の短剣に触れた者は誰であれ能力を封印されるんだよ。君はもうただのデカトカゲってわけさ!」

「なんだと……」


 戦乙女? 

 こやつら神族か!

 面白い。いずれは神を喰ろうてやろうと思っていたところよ!


「ふはははは、我が息吹を封じたから何だと言うのだ。貴様らなんぞ押し潰してくれようぞ!」


 我は手を振り上げて、思い切り叩きつけた。

 ソグンとか言う戦乙女は躱したようだが。もう一人は潰れたようだ。

 あっけない。神族とは言え所詮はこの程度か。

 まぁ無理もない。竜の鱗は鋼も通さず、その膂力は岩をも砕く程だ。人間の形をした神族などに我がやられる道理はない。


 さて、残りの一匹もさっさと始末するか。

 さっきは二匹を同時に狙ったから外れたのだ。一匹に絞れば確実に当てられる。

 もう一度手を振り上げて……ん? なんだ、手が上がらぬ?


「言っただろ? お前はもうただのデカトカゲなんだって。よいしょっと!」


 物凄い力で引っ張られる。なんだ、なにがどうなっている?

 一瞬の浮遊感の後、地面へと背中から叩きつけられた。

 どういうことだ? この我が投げ飛ばされたのか?


「俺は鎧の戦乙女グズル。戦乙女一の怪力さ。どれくらい怪力かって言うと……これくらいだな!」


 右手に激痛が走った。

 痛い! 我が痛みを感じるだと?

 右手を見れば、グズルとか言う戦乙女が我の指を折っていた。

 再び指が折られたのか、また激痛が走る!

 おのれ、図に乗りおって!


「ちょっとお! あんまり暴れさせないでよグズル!」

「わりぃわりぃ。ちょっと待ってな、よっと!」


 指の逆関節を支点に、釣り竿を上げるかのように引き寄せられた。指から肘、肘から肩へと関節が極まる。腕を伸ばし掌を上に向けて、限界まで指を反らせた形だ。

 くそっ! 反対の手で押し潰そうとしても、その度に指で巧妙に動きを操作される。

 そんな馬鹿な……この我が指一本持たれただけで動けなくなるのか?

 だがまだ我には尻尾が――


「せいや! おお、流石は地神の名刀だね。一発で尻尾が斬れたよ!」

「あとで姉様に返すんだから、あんまり無茶な扱いはするなよ」

「分かってるって! 次はどこにしようかなー。両手両足と羽を切り取れば十分かな?」


 戦乙女達は呑気な口調で言葉を交すと、今度は我の右脚を斬り落とした。

 抵抗しようにも指を抑えられて動けない。

 馬鹿な、こんなのは何かの間違いだ!

 我が一方的に痛めつけられるなど、何かの間違い……。




「さて、こんなところでいいかな? 流石にもう十分だよね、グズル?」

「ああ、牙も危なそうなのは全部叩き折ったし、これくらいで十分じゃねえの? あんまりやり過ぎと死んじまうしな」

「くぅー、これでようやくこんな場所とはおさらばできるよ。じゃあね、トカゲ君……いや、ヘビ君の間違いかな?」

「ああ。人の気配もしてきたし、さっさとずらかるぞ、ソグン」


 戦乙女達の気配が消えた。

 た、助かったのか……。


 くそっ、くそっ、くそっ!

 おのれ、戦乙女どもめ! 絶対に許さんぞ!

 例え何年かかろうとも絶対に復讐してやる!

 この傷が癒え次第、必ず殺してくれるわ!

 あのソグンとかいう雌の不意討ちさえ無ければ、我が負けるなどあり得なかったのだ。

 次は必ず、必ず……。

 ……待て、何か聞こえるぞ。


「お、お前が邪竜ファフニールか! 我が名はシグルド! 帝国打倒のためにその命貰い受ける!」


 人が二匹とドワーフ一匹。

 そうか、戦乙女達に気を取られていたが、侵入者が居たのだった。

 まさかこやつらに我を殺させるために、我を痛めつけたのか?

 おのれ! 例え両手足を奪われようと脆弱な人などにやられる我ではない!

 一思いに丸呑みにしてくれるわ!


「シグルド様! お下がりを!」


 人の雌が剣を構えて前に出てきた。

 愚かな! 我が鱗は人の鋼など通さぬぞ!

 まずはお前から喰らってくれる!


 再び激痛が走った。

 なんだと、顎に剣が貫通しただと!

 それになんだこの力は……これではまるで……。


「シグルド様、今のうちです! 今のうちに心臓を貫いて下さい!」

「わ、分かりました!」


 顎が上がり丁度心臓が無防備になっている。

 もはやこれまでか……。

 父上、申し訳ありませぬ。私は宝を守ることが出来ませんでした。


 人の雄の剣が我が鱗を貫いた。


ブログで先行配信してます。

http://garmthedeath.blog.fc2.com/blog-category-1.html


ブクマ&評価が励みになるんで、適当によろしくおなしゃす。

16話に親衛隊長ギュスタブをステルス挿入してるので、見てない人は気をつけてください

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