stage.7 星降山の洞窟 その3
釣具屋のエサ売り場。
今の大広間の状況はあれに似ているなあ、とうさみは思った。
長い生き物がたくさんうじゃうじゃと絡み合っている。
それでいて動きが止まることもなく、穴に出たり入ったりしているのだが。
エサ売り場には穴はないからやっぱり違うかな。
そんなことを考えたのも、いまいち名案が浮かばないからである。
状況を打開する手を見つけなければ、先に進めない。
「リスクがある手は一つあるんだけどねえ……他に思いつかない以上やってみようか」
うさみは大石ミミズの上を駆ける速度を緩める。
大石ミミズは穴に向かって進むので、うさみもそちらに引っ張られる形になる。このままだと穴のふちにぶつかってしまうので、避けるためにジャンプ。
すると一体の大石ミミズが尻尾まで穴に入りきり。
その後を追ってうさみも穴へと突入した。
敵の移動速度はうさみよりも遅いので追いかけるのは簡単だ。あとはこのまま追いかけ続けることで、穴の内部を比較的安全に調べることが……。
「できるといいなと思ったんだけどねえ」
結論。ダメだった。
うさみが後を追って入ってきたせいだろうか。しばらく穴を進んだ先行ミミズは徐々に速度を落とし、止まってしまったのだ。
そして。
「後ろからは、こうなるよね」
背後から進行してくる次の方。
挟まれた。
「ええい、【強風】!【石板】!【閃光】!【爆音】ん!」
こうなる可能性は想定の範囲内であった。
だがそれはそれとして、トンネルの中で前方をふさがれ、後方から牙の生えた大口が寄ってきたら怖いしビビる。
結果慌てて魔法を放つうさみ。ダメで元々半分自棄だ。とはいえ情報を取るためにももっと落ち着いて一つずつ試すべきだったかもしれない。
特に最後のは余計だったと後悔した。狭い中で轟音が響いてうさみの方がくらっくらだ。
しかし短時間ではあるが、後続ミミズの動きを止めることに成功。これは成果といっていいかもしれない。風と石は完全無意味のようだったから、光か音が通じたのだろう。
だがしかし。
再度動きだした後続ミミズは色が変わっていた。灰色っぽかったのが赤へと。
そしてその勢いは今までの比ではなく一気に距離を詰められる。
「え、ちょっと」
逃げ場はなかった。
■□■□■□
「光か音か、どっちかで怒らせちゃったかな」
地下で生活する生き物が強い光に対して過剰な反応をする、というのは納得できる説明だ。ただ、目があるように見えなかったので違うかもしれない。
音に対する反応はどうだろう。彼らの移動にも結構大きな音がしているが、爆音の魔法を狭い場所でぶっぱなすのはまた格別な威力だ。過剰な反応をしてもおかしくはない。
セットだったから、という説は?
うん、まあここで考え込んで推測しても証明できないしわからないかな。
うさみは切り替えることにした。
切り替えることには定評があると自認しているうさみである。
「うーん、すぐ狭いところに戻るのもなんだし、気分転換に外を走ってこよ」
そう決めると三度、ウサギにクラスチェンジを行う。
行先は例の雲。今回は黒子ウサギのるな子はなしで挑戦だ。だいぶ慣れてきたのでそれでも行ける、かもしれない。
そして実際成功した。
危険感知の範囲の拡大は徐々にだが進んでいた。それだけでなく、行動パターンをへの慣れもあるし、フェイントを使った誘導も成功している。相手が当たらない場所を狙ってくれるのならその射程がどれだけあろうと関係ない。
彼らの学習能力を考えれば対応してくるかもしれないが、フェイントというのはむしろそうなってから効果を発揮する技術である。中途半端に賢いことがデメリットとなることもあるということを教えて差し上げよう。
なんてことを考えていたら次当たりやられそうなのでうさみは気を付けようと思った。
なお、やっぱり雲は帯電していてビリッと死んだ。
そして再び地中へもどる。
あの大広間がただの大石ミミズの巣であるとは、うさみは思っていない。
理由としては、岩棚ルートからつながるシチュエーションもそうだし、あからさまに怪しい歩きやすい地面もそうだ。
今まで見かけなかった大石ミミズの巣がポッとあるだけというよりは、大石ミミズは障害で越えた先に何かあると考えたほうが自然に思えた。
というか洞窟を通って雲のあるエリアを抜ける、というシナリオを期待している。
地道にあの雲の時間による変化を調べたりするのは大変そうだからだ。
なので是非洞窟から上へ至るルートがあってほしいのだった。
「推理や推測じゃなくて期待にすがっちゃったらだめだよねえ」
そんなことをつぶやきながら、大広間へ入る。
最初は誰もいない。
すぐに奴らの移動音が響きだし、一体目が現れると続々と増えるのだ。
ともあれ、何か手がかりを掴まなければならない。
未だとっかかりも掴めていない。何とか活路を見出さないと。
うさみは気合を入れてやってくる大石ミミズに臨むのだった。




