stage.6 星降山中腹 その5
「そうか、海亀は……あの人は……!」
くるりとまわるお星さま。
うさみは岩棚の端に腰かけて足をぶらぶらさせながら、両手の上でふわふわしているお星さまと話していた。るな子も横から覗き込んでいる。
お星さまとの意思疎通に苦戦していた。
お星さまができるのは、はいといいえ、それから答えられないときのくるり。それで情報を引きだすのはなかなか難題である。
質問と答えを繰り返し、手に入った成果は少なかった。
「お星さまは、星の世界から落ちてきた。山頂に降りるはずだった。でも誤ってここに落ちてしまった。上に戻りたい。でも自力じゃ戻れない」
縦に揺れるお星さま。
得られた情報はこの程度。誤って、の部分で具体的に何があったのかとか、そのあたりは想像力が及ばなく。ReFantasic Onlineはファンタジーな世界観であるので、現実の常識が通じないことも多い。ただでさえ、お星さまが手の中にいるという特異な状況である。なんでそうなったかを推測するというのは、もはやデザイナーの脳内当てであって、それはうさみの想像の範疇外であった。
なのでうさみはとりあえずわかる範囲で対応することにした。
「うーん、それじゃあ、わたしたち、山の上まで行く予定だから、そこまで一緒に行く? 多分魔力も必要だよね?」
縦に揺れるお星さま。
この山は星降山であり、お星さまも、もともと山頂へ降りる予定だったということである。
であれば、山頂まで連れて行けば何とかなるだろう。
また、先ほどのように魔力が不足して消えそうになるのではないかという懸念もあった。うさみがいれば補充は可能だ。
そう思っての提案であり、お星さまも頷いた。
「じゃあ、えーとどうしよっか。リュックに入っておく?」
手に持って運ぶのは道中何があるかわからないのでうさみとしては避けたいところだ。
しかしお星さまは横に揺れる。
ではどうしようか。うさみは困った。
すると、お星さまはうさみが身につけている腕輪へ近づき、くるりと回る。
「るな子の腕輪? 入れるの?」
横に揺れるお星さま。
そこでるな子がぷー! と鳴く。
るな子を連れだしたときはどうだったか、とうさみは思いだす。
「えっと、たしか契約?」
お星さまは縦に揺れ、るな子もぷ。っと頷いた。
「名前を付けるんだったよね。えーとお星さまだから……ほし子、おり子、ミカ子……うーん、そうだね、ヴァル子!」
星だからとか七夕のお話とか日本の神様とかいくつかの候補がうさみの頭の中を巡ったのだが、それらを抑えて十二星座からもじることにしたのだった。
というか“子”にこだわる必要はないのだが、るな子に引っ張られたのか。
お星さま、ヴァル子はそれでも構わなかったようで、縦に揺れると虹色の光になって腕輪に吸い込まれて行く。
すると、腕輪のウサギマークの横に星型のマークが浮き出てきた。
「こうなるんだ。じゃあ、ヴァル子!」
うさみがるな子を呼び出すのと同じ要領でヴァル子を呼び出してみると、目の前にヴァル子が現れた。
「これでいいね。ヴァル子は果物とか食べる?」
横に揺れるヴァル子。
それから確認したが、魔力だけでいいらしい。小さな光源という姿で固形物等を食べるのは想像しがたいのでそういうものかとうさみは思う。
しかし、ヴァル子を呼び出し続けるための魔力消費はるな子のものと変わりないように思えた。
「るな子、ヴァル子の方が低燃費だよ」
うさみがそう言うと、るな子はぶぶぶ! と鳴いてたしたしと後ろ脚で地面を叩いた。ついでにうさみに頭突きをしてくる。
「あ、ちょっと、ごめんごめんやめて落ちるー」
うさみが謝るがお怒りのるな子はおさまらない。
ぐりぐりと頭を押し付けてきたるな子に対し、うさみは体を撫でることで応戦。その判断は戦局を泥沼と化した。
結局るな子はうさみがリュックのにんじんを取り出し、捧げるまで矛を収めることはなく。
そうやって小一時間イチャついていたうさみとるな子を、ヴァル子はゆらゆらと揺れながら照らしていたのだった。




