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初心者うさみの冒険  作者: ほすてふ


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stage.3 迷いの森 その4

「こんにちは!さっきはごめんね!」


 のそり、とお地蔵さまの広場に現れたクマさんに、うさみは声をかけた。

 その姿は有名なぬいぐるみを想起させる。

 ふわふわ毛玉なウサギさんもかわいいけれど、ぬいぐるみなクマさんもかわいいよね。

 大きさは実物大?だけれど。

 うさみはクマの実物を見たことはないので正確なところは知らないが、四足でうさみより少し低いところに頭があるというのはきっと大きい。


 ぬいぐるみのようなまんまる瞳でじっと見つめてくるクマさん。

 もちろん、うさみの足元にある蜂の巣をだ。

 しかし手を出そうとはしない。ただただ見つめるだけである。

 そして次に、うさみの方へ視線を向ける。

 見つめ合ううさみ。黒くてまんまるな瞳を見ていると妙な気持ちになってくる。真っ黒な中に吸い込まれそう。


 視界の隅っこで、るな子が虹の光になって消える。

 うさみの魔力が尽きたのだ。

 それをきっかけに、うさみはクマさんから目をそらした。


「わ、わかったよぅ、半分あげるから許して!」


 実のところ、先ほど追いかけっこをした個体かどうかはわからないのだが。

 うさみはクマさんの態度で同一個体だと認識したらしい。

 ナイフを取り出すと、蜂の巣を二つに切り分ける。ナイフはべたぁとなったのでしまうにしまえなくなった。

 ナイフを持っていない方の手で、クマさんに蜂の巣を差し出す。

 クマさんは鼻を近づけてスンスンやったあと、前足で蜂の巣を取り上げ、その場に座り込んだ。

 器用に蜂の巣から蜂蜜をほじりだし、前足につけてからそれをなめる。

 直接がぶりではないらしい。クマさんにも作法的なものがあるのかな。

 目の形がへの字になってご満悦のクマさん。


「喜んでくれてよかったよ」


 うさみはそれを見てうれしくなった。取り上げたものを半分返して喜ばれるというのはマッチポンプという奴だろうが、そんなことは考えもしない。

 世界的に有名なアニメーションのクマを思い出す。コミカルでメルヘンなクマさんの姿に、うさみも相好を崩す。

 かわいいということはそれだけで正義なのだ。


 しばしなごんでいたうさみ、自分も蜂蜜に挑戦することにした。

 といってもナイフと手がべたぁなのでまずはそこから。

 行儀よくないことを自覚しつつ、まずは手についた蜂蜜をなめてみる。クマさんとお揃いだ。


「あま~! 蜂蜜だぁ!」


 蜂蜜ですとも。

 果物とはまた違う甘みがガツンと口の中に広がる。

 ナイフについた蜂蜜を、刃で怪我をしないように気を付けて手に移し、ぺろり。

 甘い。美味しい。

 でもちょっと物足りないというか。

 できればパンか何かにつけて食べたい。

 蜂蜜だけ、というのはすこし甘すぎた。

 ひと口ふた口はいいのだが、できれば舌休め的なものが欲しい。

 あ、でももう一なめ。


「残りはあとにとっておこう」


 半分もなめないうちに満足し、保存しておくことにする。ちょうどいい容器がないが、適当に見繕えばいい。葉っぱとか。

 とりあえず、べたぁな手とナイフを洗うことにする。

 しかしこれが失敗だった。


「あっ、わたしのぶん!」


 泉で洗っている間に、クマさんがとっておいたうさみの蜂の巣を取ってしまったのである。

 先の追いかけっこの時の逆再現といってもいいだろう。

 一勝一敗でドローといったところだろうか。


「むぅ~~~~~!!」


 ご満悦パート2のクマさんに、涙目で唸るうさみ。うさ耳リボンがぴんと立ち、ふるふる震える。


「い、いいもんね。また今度貰いに行くんだから!」


 びしぃと人差し指をつき付け、負け惜しみを叫ぶうさみ。突きつけられた側はなに喰わぬ顔で、いや蜂蜜なめてる顔で気にもしていない。

 しばらくにらみつけていたが、反応がないのでだんだん萎れていくうさみだった。




「森の動物はここに来れるんだよね」


 お地蔵さまの広場には、クマさん以外の動物も顔を出すことがある。

 そして、好戦的な動物であっても、ここでは攻撃をしてこない。こちらから攻撃すれば反撃してくるかもしれないが、うさみはそれを試していない。

 水場であるからか、お地蔵さまのおかげか。理由はわからないが、安全地帯であり、どうやら不戦地帯であるらしい。

 そしてこの広場にやってくるということは行き来できているということだ。


 基本的には種類ごとに一つの広場が割り当てられている動物たち。

 そして広場からある程度森に踏み込むと、強制移動させられてしまう。

 ワープ、テレポート、もしくは瞬間移動。そう言った現象が起きているのをうさみは認識していた。

 その瞬間はごく自然で、普通なら気づかないかもしれない。

 しかし、うさみはエルフに与えられている地形補正効果により、森の中での位置を感じ取れるのだ。

 なので、移動させられていることに気づくことができた。

 次に問題になるのは、そのワープのルールである。

 現在位置がわかるのだが、それは森を抜けるのに直接寄与しない。

 ワープでどこに移動するかわからないからだ。

 まっすぐ北に向かって移動していたのに、気づけば最初いた場所よりも南の地点を東向きで歩いていた、なんてことはというのはザラである。

 通常、目標値との相対位置がわかればそちらへ向かえばいつかたどり着けるが、迷いの森ではそうはいかないのだ。


 そしてこの七日間、ワープの行先について調べている。満足に敵をかわして移動できるようになるのに手間取ったのでまだまだ情報が足りていないのだが。

 それでも判明したルールがいくつか。


 ・必ず同じ場所にワープする場所がある。

 ・どこに行くかわからない場所がある。

 ・何らかの要素でワープする先が変わる場所がある。時間帯など。

 ・ワープしてすぐもどっても、同じ場所に出るとは限らない。


 ひたすら移動して移動して移動して得られた経験則。

 検証が足りない部分もあるので、部分的に勘違いしている場所もあるだろう。

 それでも、いくつかの場所へは狙っていけるようにもなった。

 たとえば、お地蔵さまの広場まで戻るルート。タヌキさんと枇杷の樹の広場からなら、他幾つかの広場を経由して戻ってくることができる。

 そして、森の動物たちもこの広場を利用していることに改めて思い至る。


 うさみは蜂蜜をなめるクマさんを眺めながら考えた。

 動物たちはこの広場へやってくるルートと、元の場所へ戻るルートを知っている?

 であるならば。


「追いかけてみようか」


 森の動物の帰り道を追跡すれば、行先が確定している場所が新たにわかるかもしれない。

 うさみはクマさんの移動を追いかけることにした。

 クマさんが蜂蜜をなめ終え、水を飲んで、帰っていく。それを追いかける。

 そして最初のワープを超えた。

 見通しの悪い森の中。あまり離れて尾行はできない。すぐにうさみも追随する。

 ワープ。


 すると目の前にクマさんがいた。


 目が合った。

 うさみはにっこりほほ笑んだ。

 クマさんは右前脚を振り上げた。

 うさみは後ろへ跳んで逃げだした。

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初心者うさみシリーズ新作はじめました。
うさみすぴんなうとAW
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