悪夢
出シリアス!グロ風味。苦手な人はブラウザバック!
世界には巨大な悪が蔓延っていた。
魔王と呼ばれるその悪は、魔物を従え世界を滅ぼす瘴気を吐き出し光を平和を生命を呪っていた。
世界に小さな光が生まれた。
勇者と呼ばれるその善なる魂は、瘴気を浄化する力を使い世の生命に祝福を与えた。
風に聴く噂。
勇者様とやらは未だこの地に舞い降りない。
俺が住んでいるこの村は魔王の根城から最も近い場所にある。
魔物に虐げられ、作った作物を献上し、時には生け贄を捧げ、生きてきた。
長きに渡る不条理に皆、疲れていた。
村で戦える力のある若者は俺だけ。
剣士だった父を持ち、幼い頃から父と戦いごっこをしながら育った俺だけ。
戦えると言っても、剣を振ることしかできない俺だけ。
父は、村を守ろうとして皆の前で無惨に殺された。
最期まで父は皆に謝っていた。守れなくてすまなかったーーーと。
俺だけが、村の希望だった。
皆、疲れていた。
だから俺なんかにすがった。魔物を倒してくれと。
勝てるなんて思ってもいないくせに、無責任に、俺にすがった。
断れなかった。
向かいの家ではもうすぐ子どもが生まれる。
赤ん坊のために小さな産衣をこんな村でも幸せそうに笑って用意していた。
隣の幼なじみはもうすぐこっそり結婚する。
魔物に見付からないよう、ひっそりと二人だけでするのだと教えてくれた。
近所の子ども達は魔物に怯えて家から出られない。
断れなかった。
家に隠してあった、父から貰った剣を持って家を出た。
村の中を闊歩する魔物に、すぐに見付かった。
怖い。嫌だ。こんなことしたくない。
歯の根が合わずガチガチと音を立てる。
出ていけと言うんだ。出ていけと言うんだ。
自分に言い聞かせても声が出ない。
魔物はニヤァと嫌な笑みを浮かべてこちらに近付いて来た。
脚に熱い液体が伝う。恐怖のあまり失禁したのだと、気が付いた時には遅かった。
魔物は一瞬で間を詰め俺の頭を掴むと「見せしめだ」と村の中央に向かい、少しずつ力を込め始めた。
あまりの痛みにもがいて手を外そうとするも全く通用しない。
痛い。嫌だ。死にたくない。怖い。どうして。どうして俺がこんな目に。どうして死なないといけないんだ。
朦朧とする意識の中、ふと村人と目が合った。
期待外れだった。その目はそう言っていた。
ブチャッ。
嫌な音がした。
こっそりこっそりとやって行こうと思います。よろしくお願いいたします。