第四話 想い
あれ?
私、どうしちゃったんだろう……
どうして、こんなにどきどきしてるの?
心臓がばくばくいってる。
「そりゃあ、恋だね。」
さらりと親友の麻衣が言った。
「……恋?」
「あたりまえじゃん。」
「なんで?」
「だって、その人の事考えるとドキドキしちゃうんでしょ?」
……その通り。
「また、その人に会いたいって、思うんでしょう?」
……またまたその通り。
「そうだよ」
「なら、絶対そうだね。なんだったら、告白しちゃえば?」
「無理だよ……」
無理。
だって、そんなことを気軽に言える関係じゃないもの。
私は彼に借りがあるから、彼を混乱させたくない。
おかしいかな?
「ま、あんたがそう言うならしょうがない。私も何もしないよ。」
そう言って、麻衣は廊下へ出て行った。
もともと、私がおかしいのかもしれない。
淳平に迷惑ばっかりかけて、あげくの果てには『好き』だなんて。
私が淳平だったら、そんな女は嫌いになる。
そう考えたら、やっぱり私は無理なのかな、って思っちゃう。
私の、好きな人。
でも、叶うはずなんかない。
私はそう思う。だって、彼が私を意識してくれているはずがないから。
だから、諦めよう。
素直にそう思った。
「あ、おまえっ」
いきなり声をかけられて、私は戸惑った。
「……何?淳平さん。」
「別に『さん』つけなくていいから。……あと、これ。」
淳平はポケットから何か出した。
「?」
「あ……ちょっと、福引で当てたけど、いらなかったから。」
私の手のひらには、飴玉がのっていた。
「……ありがと。丁度ソーダ味食べたかったから。」
「あっそ。」
そう言って、淳平は手を振りながら私から離れていった。
私は、自然に笑顔になっていた。