第三話 家出
私は自分でも気づかないほどすばやく、家を出ていた。
「・・・私。」
どうしてこんなところにいるの?
駅の近くまで来て、思った。
お金だって一銭も持ってない。
「どうしよ・・・」
誰もあてなんかないし・・・(万引きしたから)
その時だった。
「まだいたのか、おまえ。」
「淳平!」
そう言って私が淳平に抱きつくと、淳平は少し拒んだ。
「もう呼び捨てかよ・・・」
でも、私を引き離したりはしなかった。
私が全ての事情を話し終えると、淳平はぽつりと言った。
「それはおまえが悪いよ。」
「どうしてそんなこと言うの!?私はもう行く所もないのよ!」
淳平は私をたしなめるように睨んだ。
「あのなあ、普通親っていうのはそんなもんだ。子供が心配でたまらなくって、ついかっとなるんだよ。」
「でもっ・・・」
「それに、心配させるようなおまえもおまえだ。」
ずばりと淳平に核心を突かれて、私はちょっと肩をすくめた。
「万引きなんかして、親が心配するのは当たり前。だからすぐ帰れ。」
それだけ言うと、淳平は私にぬるいジュースを渡した。
「もしどうしても嫌なんなら、野宿でもしろ。」
淳平は私から目をそむけた。
「・・・うん。」
それから私は家に戻った。
お母さんはまだ少し怒ってるみたいだったけど、私が戻ってくると、
「・・・ちょっと悪かったわ。ぶったりして。」
そう言って、私に謝った。
別に嬉しくなんてなかったけど、なんかほっとした。
『もう呼び捨てかよ・・・』
淳平の言葉を思い出す。
あの時は必死だったから、呼び方なんか気にしてなかったけど・・・
あれ?
私、どうしちゃったんだろう・・・・
顔が熱い。