死者の出会い?
いよいよ(ようやく?)話が動きます。少し強引かも知れませんが、こうでもしないといつまでたってもすすまないんで。ご了承ください。どういうことかわ本編でどうぞ。
ドカっと勢いをつけ、手近にあった座るのに丁度良い高さのガラクタの上に、腰を落とすようにして座る。
既に死んでいる為感覚が麻痺しているのか、持久力や体力が劇的に増えているのか、それとも元々オレが体力馬鹿だったのか。
何時間も足場が悪い場所を探索しながら歩き、時には登山したにも関わらず全く肉体的な疲れが訪れないゾンビボディは非常に便利ではあった。
普通の人間では即効へばってダウンするであろうペースで探索しても、体力的には全然問題無く探索を続行し、かなりの範囲を見て回ることが出来た。
おかげで幾つかの発見もあったし、重要な手がかりも入手することが出来た。これはとても大きい。
しかし、だからといって精神も疲れ知らずでいつまでも集中して探索出来るかと言われれば、答えはNOだ。
どうやらオレの精神はいたって普通の人間のレベルだったらしく、今でもすでにげんなりとしている。
見落としが無いか常に注意深く警戒し、薄暗くて何かが出そうな雰囲気の場所で集中して探索するのを数時間し続ければ、普通の精神をした奴ならば気疲れもする。
しかも、周りの景色がどれだけ歩いてもほとんど様変わりせず、常に似た様なゴミ山しか映らないのなら尚更だ。
つまり何が言いたいかと言うと・・・死者にも休憩が必要だって言うことだ。
「あ~・・・疲れたー・・・主に精神ガ」
ゴキゴキと座りながら腕を伸ばし、脱力した後に深いため息を付きながらポツリと零す。
恒例の独り言。いつもはただ呟いてそれで終わるのだが――
『大丈夫?白髪。』
なんと、今回は返事が帰って来た。幼い声が直接頭の中に響く。【念話】と呼ばれるらしいソレが聞こえて来た方に顔を向けると、そこには蒼白い、小さな火玉がユラユラと燃えて、浮かんでいた。
ソイツは大きさは精々が5cm程度の小さな球体状で、蒼白い炎がユラユラと揺れる火の玉みたいな外見をしていた。
生前の知識では、確か【鬼火】だったか?それに近い感じだ。周りのホラー気味の雰囲気に合わさって、なんだかとても似合っている。
『白髪?』
鬼火を見ながらそう思考していると、やや心配そうな声音で念話をかけてきた。
「おぉ、わぁるいわるい、ちとボーッとしてたぜィ」
『構わない。けど。休憩。するべき。』
「んだぁな~、ちと一休みするか~。ホレ、一緒に休もうゼ」
『ん。』
やや舌足らずで、どこか可笑しな口調で鬼火が答えると、ふよふよと飛んで俺の左肩にチョコンと乗っかる。見た目は火の玉だが、なかなかその仕草には愛嬌があったりなかったりで少し笑う。
意外な事に、見た目はまんま炎の塊なこいつだが全然熱が無く、むしろ触るとヒンヤリしてて気持ちが良いのだ。
服に直接触れているにも関わらず火が付かないので実際に燃えている訳では無いようだ。鬼火を素手で撫でてみる。うむ、ヒンヤリしてる。
ちなみに鬼火が先ほどから言ってる『白髪』とはオレの事らしい。理由は単純に髪の色が白だからだ。
コイツに言われるまで、髪の色が白だったのに気づかなかったのは内緒だ。というか鏡が無いから自分の姿が確認できない。
・・・まさか顔面腐って大変な事になってないだろうな?そういやなんだか少し感触が可笑しいような・・・いや、少なくとも胴体とか手足とか、さっきちらっと確認した下の息子は腐って無かったし、多少黒ずんでいたり青白かったりはしたけどいやそんなまさか・・・
まあソレはともかく。
この鬼火の事だが、コイツが探索中に発見したものの一つであり、なんと、此処から出られるかもしれない重要な手がかりを持っている・・・との事らしい。
それは大いに結構なんだが・・・まあ、初対面時は大変だった。本当に大変だった。実に大変だった。
代わり映えのしない不気味な景色にややうんざりしながら歩いていたオレは、いきなに何の予兆も無くふよふよと目の前を横切ったコイツを見て心臓が飛び出たんじゃないかってぐらい驚いた。いや、心臓無いけど。空洞だけど。それぐらい驚いた。
だって、周りのこの雰囲気・・・非常に薄暗くて、死体や白骨体や瓦礫の山々が聳え立ち、物音がゴミ滝が発生するとき以外ほとんど無い空間・・・で、なんのアクシデントも無く発見も無くで多少心が緩んでいる所にいきなりホラーな物体が音も無くスーッと目の前を通過したんぜ?
オレは岩のようにピシッと固まり、数秒間思考がフリーズ。解凍後、ゾンビとして意識が覚醒してからダントツ一位に輝くぐらいな声量で叫んだ。
そりゃあもう、ぎゃぁあぁああああアって、実に古典的で典型的でメジャーな悲鳴をあげた。もし生きた人間のままだったらその上で小便チビッていたかもしれない。それぐらいびっくりした。
そしたら鬼火の方もオレの存在を(直ぐ傍にも関わらず)認知していなかったらしく、真横からいきなり聞こえた、音量MAXで無駄に響く悲鳴に驚いてして激しく発光しながら燃え上がるわ、それを見て俺は更にびびるわ・・・後はお察しください。とにかく、大変だったのだ。
その時のオレは凄く情けなかったと思う。いちよう自身もゾンビだなんて言うホラー要素満点な存在だった筈だが、そんなこともお構いなしに叫んでた。今思い出すと恥ずかしくて死にたくなる。死んでるけど。
端から見ればゾンビと鬼火が互いに驚いているという、さぞかしシュールな光景であったことは間違いないだろう。
まあそんなこんな色々あり、ホラー映画もびっくりな対面を果たした俺と鬼火は、互いの存在を存分に数分間驚いて落ち着いた後、ようやく自己紹介をして話し合う事が出来たのだった。
鬼火が言うには、長年このゴミ捨て場に居るが話し相手が居らず、偶にオレみたいな存在(ゾンビとか生きた人間とか)を発見して近づいても誰も自身の姿が見えず、念話で話掛けても聞こえずで、誰にも気付いて貰えずに一人(匹)でずっと過ごしていて寂しかったそうな。
しかし、なぜだがは知らないが、オレには鬼火の青白くて丸い姿形がハッキリと見えているし念話も聞こえる。その事を鬼火に伝えると、嬉しそうにユラユラと炎が揺れたのを覚えている。他人に自身の存在を気付いて貰えたのが嬉しかったのだろう。
そんな経緯で、余計にオレの叫び声にも驚いてしまったようで、律儀に『御免なさい』と謝って来た。元はと言えばオレの叫び声が原因とも言えるので、オレも「悪かっタ」と素直に謝罪しておいた。
互いの謝罪も済んだ後、話し相手に非常に餓えていた鬼火と進んで色々な話しをしたのだが・・・なんと、このゴミ捨て場の出口らしき場所を知っているとの事が分かったのだ。
なので、無理を承知で案内を依頼した所、話し相手をしてくれる事を条件に、拍子抜けするほどすんなりと快諾してくれた為今こうして一緒に探索している訳だ。
「しっかし、なかなか遠いな~。まだ歩くン?」
『否。目的。直ぐ其処。』
オレが肩に乗っかっている鬼火に呼び掛けると、念話と同時にフルフルと炎を揺らして答える。どうやらあんがい近くまで来ているようであった。
ちなみに、この念話は鬼火の能力の一つらしいのだが、今まで使う機会がほとんど無く、使ったとしても相手に気付いて貰えずで使い勝手が良く分からないらしい。そのせいか、あまり会話が続かず、何処かたどたどしい口調になってしまっている。
しかし、何かを伝えようとする気持ちは強く伝わってくる。声質も(念質?)やや幼く、男の子の様な中性的な感じである為か、こっちとしては何処か微笑ましい気分になる。
そんな鬼火は、目覚めてから少し心細かったオレにとっても心の浄化剤のようなありがたい存在になりつつあった。話相手がいるだけでこうも違うとは思っていなかった為、自分でも驚いているくらいだ。
「ん、よしっと、そろそろ行くかいナ~」
『了解。案内する。こっち。』
「おう、またよろしく頼むぜィ」
鬼火と会話して、精神的にも充分回復したのを見計らい立ち上がる。鬼火も、オレの肩から浮かび上がり、目的地まで先導する為にふよふよと前にでる。心なしか、楽しそうに見えるのはオレの気のせいだろうか?
向かう先は、ゴミ山の間の向こうに見える暗闇。鬼火はそちらへと向かって、俺のペースに合わせてゆっくりと先を飛んでゆく。
この先に脱出の手がかりがあるらしいが、はてさて、何が出ることやら。できれば、なんのアクシデントも無く脱出したいものだ。
最悪、出口など元から存在しなかったって事もありえるが、そしたら、このまま鬼火とこのゴミ捨て場を歩き回って他の脱出方法を探すのも、意外に楽しいかも知れない。
まあ、そうなるかならないかは、目的地についてから判断すればいいか。最悪逃げれば言い訳だからな。
そう決意し、少し前を行くの後を追うようにしてオレは一歩を踏み出した。
☆おめでとう!鬼火が仲間になった!☆
・・・はい、すいません、こういうことです。正直なんでこんな風に描いてしまったのか・・・まあ、こんな感じな作品ですが、よろしければお付き合いください。次回、いよいよ脱出編です。