出会い 4
現地住民の「レイ」と「スララ」に出会ったカートゥーン、レイに町を案内してもらう…。
「…あ、そう言えば…」
カートゥーンが口を開く
「まさかめっちゃ高い店に連れて行ったりしないよな?俺これだけしか持ってないんだけど……」
見慣れた千円札を財布から出して差し出す。
「…?んだこれ、金か?」
スララがカートゥーンから千円札を奪い取り、まじまじと眺める。
「いや、当たり前だろ…それが千円札だろ?」
「千『円』…?知らない通貨だ…。」
「は……?」
スララの言葉に、開いた口が塞がらない、
というか、もっと早く気づくべきだった、日本にこんな大規模な西洋風の町があるのなら、もっと話題になるはずだ。
「……なあ、ここはどこだ…?」
恐る恐る口を動かし、尋ねる…。
「どこって……そうか、説明してなかったな。
ここは海洋国家、ユグドラシオ、今の国王が1代で築き上げた新興国だ。」
信じたくもないが、『確信』が『確実』になった。ここは日本じゃない、その考えが胸を渦巻く。
だが受け入れるしか無い…、
(……まあ、戻ってもバイトと大学あるだけだし!心機一転して新しい生活するほうが楽しいだろ!)
カートゥーンは、良くないことを考えないように奥に追いやるタイプの性格だった。
「…まあつまり、その金はここでは使えないんだな?じゃあそれお前にやるよ。」
「いいのか?なんか大事そうにもってたけど…」
「いいよいいよ、使えないんだったら紙切れ同然だろ。」
(それに、どうせなら捨てるんじゃなくて『あげた』って方が聞こえがいいし…。)
そう思いながら、カートゥーンは札を手放した。
「それじゃあ、貰うけど…
…って、うおおなんだこれ!おいレイ見てみろ!」
「えっ、なになに…って、なんだこれ…?」
なにやら札を見て興奮にしているようだ…。
流石に気になってしまった。
「えっと…どうしたんだ?」
「これ…!光に向けたら絵が浮かび上がるぞ!」
どうやら『透かし』の技術に驚いていたようだ。
「それは『透かし』っていう技術で…」
「これ…貴族に売ったら高いんじゃないか!?」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。
……高い?
「こんなの見たらバカな貴族は絶対金積むだろ!本当に貰っていいのかカートゥーン!」
……………………………
『やっぱり返して』という言葉は、一度『譲る』と言った者から口にするには、余りにも情けない言葉であった。
カートゥーンは、深く後悔した…………。
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深く後悔しながら、改めて街並みに目をやると…
「へいらっしゃい!!活きの良い魚揃ってるぜェ!!」
「朝採れたてのお野菜、お安くしますよォ〜!」
…新興国だからなのか、元気の良い人達ばかりだ。
すれ違う人々、皆笑顔だった。
「なんというか…活気があるな、それで…俺はどこで飯を食えるんだ?」
先を歩くレイにそう声をかける。
道行く人々の笑顔が妬ましく思えてくるほど、食事は焦らされているからだ。
「大丈夫だよカートゥーン、もう着いた。この店だよ。」
それは…カフェっぽい上品な佇まいで、レンガ造りの屋根がなんとも味を出している建物だった。
看板があるが…日本語をかなり崩したような文字?で、読み取ることはできなかった。
そして、スララはどことなく浮かない顔をしている。
「ハァ……」
ため息まで付き始めた、そんなに悪い店には見えないが……。
そう思っている間に、レイがドアを押した。
からんからん…と響くようなベルの音が店内に響いた。
To be continued...⇛