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マリーゴールドを枯らして  作者: 燐火
塵燃ゆる
6/7

フィルターの美しさ

読書をすると頭が良くなる。よくその言葉が正しい前提で会話をすることがあるが、何故頭が良くなるのかその理由について今まで考えたことも会話したこともなかった。


考え方はともかく、会話については人間関係の希薄さを証明しているのであれば、悲しいが。


当然、一部の本は高度な知識の集積であり、その吸収における知性の向上が見込めるのだろうが、今回はそれ以外について話そう。


それ以外の知識の集積でない、SFや推理、恋愛、ノンフィクションなどなどの本に対して、俺の持論としてはこう展開しよう。


認識力が育まれるからだ。


そもそも、頭の良さとは何だろうか。頭の良さとは、人間を単なる入出力機器とした際に、入力に対しより良い出力が出来ることであろう


まず、入力機器とは何か、五感とする。

では、出力機器とは何か、体とする。


つまり、頭の良さとは、この入力を元に出力を返す為の一連の処理能力の良さである。


この一連の処理とは、何か。

2つの種類があると、俺は思う。


議論展開上、求めていない種類として、反射、脊髄反射がある。入力された情報を認識も思考もせずに、直接反射という出力を返す人体に備えられた高度な機能の一つだ。


議論展開上、求めている種類としては、つまりはちゃんと考えることだ。反射でなく、思考し結果を出力する。


このちゃんと考えるという処理は、2つのフェーズに分けられる。最初に認識、次に検討。


認識、入力された情報を最初に扱うのは認識である。我思う、ゆえに我あり。哲学界における最初の証明式、自己世界における自己意識の認識による証明式と同様に自己世界における入力情報の認識、人間に対する全ての入力はそこから始まる。我があるように、入力はここで初めてある。


だからこそ、人間は認識の檻に阻まれている、認識の仕方は言語に依存する。自身の知る言語に存在しない概念は認識できない。つまり、認識の檻とは言語の檻だ。


英語圏の人間が姉と妹の区別を曖昧にするように日本人が空と地との境界線上に美しさを感じないように、認識はその人の認識できる言語内容に縛られ、知りたいようにしか世界を認識できない。


ただ、いくら言語に存在していようとも当事者が知らなければ意味はない。つまり語彙力とは、その人の世界と同一なのである。


その檻は言語だけで構成されていない。その認識のフィルターは、自分の人生によって創られる。優しい世界で生きてきた人は優しい世界に、絶望の世界に生きてきた人は絶望的な世界に、同じものを見ても全く別の受け取り方をする。勝手ながら日本の格言に続きを付け足したい。情けは人の為ならず、己が世の美しさの為なり。  



話を戻そう。明文化された入力情報、本とはその集合体である。


本を読み文章を捉え認識すること、これがそもそも人生に対する入力と同一なのである。




さらに、入力への反応方法も明文化されていることが多く、出力方法の例までついていることがある。


つまり、読書とは人生の予行演習てある。


人間は入出力装置であり、入出力の練習台として、文章を元に入力し、思考し、出力する。


漠然と半日を過ごすより、文字列を読みながら半日を過ごすことで、その入力情報量、検討情報量、出力情報量の差から、情報処理量が向上する。


そのための読書である。




俺がこの話を持って何を主張したいかというと。


そんな頭の良いと言われる情報処理能力のある人の一人である元上司、名探偵に近寄ることで、俺の情報処理量が圧倒的に向上した。ここ一年まったりとこの街のぬるま湯に使っていた俺が、悲しいことに狂気の世界の入口に帰ってきたということだ。



誰の言葉だっただろうか、多分、妹の言葉だ。


正しさの強度のみが全てを凌駕する。ただし、高強度の正しさなど、常人は求めていない。求めるのは狂人のみ。




俺が少し近づいただけでここまで思考力を情報処理量を頭の良さという正しさを持つ名探偵は一体どれほどの狂気を持っているのだろうか。










――――



「良かった帰ってきてくれた!」

「……ああ、ただいま」



残念なことに回転数の上がった頭脳はこう告げる。彼女は俺を騙していると。


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