新潟娘 VS 長野娘
──さあ、イチローさん注目の第八試合、新潟娘 VS 長野娘の対決ですが、いかがでしょう。
「タローさんは山派ですか? 海派ですか?」
──い、いきなりなんですか?
「答えてください」
──そうですね。強いて言うなら海派ですね。
「そうですか、新潟娘派ですか」
──ど、どういうことですか?
「以前までは山派? 海派? と聞かれた際は山が好きか海が好きかという質問だったかと思いますが、最近では山派? 海派? と聞かれたら長野娘派? 新潟娘派? という意味合いが強いらしいんですよ」
──そうなんですか。ちなみにイチローさんはどちら派なんですか?
「どちら派でもありません、都道府県娘派です。というより、どちらが好きかという質問自体ナンセンスですね」
──……いや、先にどっちが好きか聞いてきたのイチローさんなんですけど。
「まあ、遊びに行くなら山ですね。海は怖いですから」
──山も怖いですよ。クマとかいるじゃないですか。
「海にだってサメがいますよ」
──自分は断然、海ですねー。
「山の雄大な景色を眺めたら、そんなこと言えないと思いますよ」
──さあ、そうこうするうちに新潟娘と長野娘が入場してまいりました。
「特に北アルプスは……」
──イチローさん、少し黙っててください。
「………」
──まずは新潟娘、なんとチューリップのスカートを履いた女の子です! これは可愛らしい!
「………」
──そして長野娘はスキーウェアを着た女の子だ! 肩にスキー板を担いでいます。動きづらくはないのでしょうか。
「………」
──この二人の対決も面白そうですねー。あ、イチローさん。もうしゃべって大丈夫ですよ。
「特に北アルプスは大自然の迫力がこれまた素晴らしくてですね……」
──(まだ続けるんかーい!)い、いえ、イチローさん。山の話はいいのでこの戦いの見どころを教えてください。
「そうですね、まずは長野娘の【アップルパンチ】がすごいですね」
──アップルパンチ。ネーミングがまんますぎてダサくないですか?
「ダサくはありません。【アップルパンチ】は音速の拳とも言われ、その威力は山を吹き飛ばすそうです」
──山娘なのに山を吹き飛ばすんですか?
「さらに【御柱落とし】が強力ですね」
──【御柱落とし】。なんだか柱が落ちてきそうなネーミングですね。
「柱が落ちてきます」
──(まんまかーい!)そ、そうですか。対する新潟娘はどうでしょう?
「新潟娘も強いですよー。さすがは長野娘のライバル。【ライトニング魚沼ヒップアタック】が強烈です」
──【ライトニング魚沼ヒップアタック】?
「腰が光るんです」
──あ、腰が光るんですか。
「光った腰が大量に襲い掛かります」
──ち、ちょっとイメージが沸かないんですが……。
「あとは有名な【燕三条・包丁マシンガン】が恐ろしいですね。切れ味抜群のステンレス包丁をマシンガンのように放つ恐ろしい技です」
──こ、怖いですねー。殺す気満々じゃないですか。あんなに可愛らしい女の子なのに。
「見た目に騙されてはいけませんよ。ああいう可愛らしい子が危険なんです」
──確かにこの大会、見た目と技のギャップがすごいですよね。ということは、あの新潟娘も?
「ホラー寄りですね」
──ホラー寄りとか言わないでください。さあ、新潟娘 VS 長野娘。準備が整ったようです。それでは第一回戦第八試合、バトル開始です!
カーン!
──おっと! 長野娘、早くもスキー板を装着しました!
「長野娘はスキー板をはかせたら最強ですよ」
──動きづらくありませんか?
「そんなことはありません。見ててください」
──あーっと! 長野娘のまわりに一気に雪が降り積もってきた! いや、会場全体が雪で埋まってきた!
「長野娘にはりんごの妖精、アップルくんとアップルちゃんがついてますからね。その二人が長野娘のまわりに雪を降らせるんですよ」
──まさに雪の娘! 降り積もるパウダースノーに乗って長野娘が新潟娘に突撃をかますー!
「スピードに乗ってますねー」
──対する新潟娘、降り積もる雪で身動きがとれません! これは早くも決着かー!
「いえ、新潟娘も雪には慣れ親しんでますからね。ほら、見てください」
──な、なんと! 新潟娘、降り積もった雪を超高速でかき分けている! まさに雪かきの達人!
「降り積もった雪の対処法は全都道府県娘の中でも随一です」
──さすがは新潟娘。雪への対応力がずば抜けています。さあ、そんな新潟娘、迫りくる長野娘に腰が光った魚を大量にぶつけたー!
『ライトニング魚沼ヒップアタック!!』
──これはなかなかの攻撃! 絵柄はシュールですが、なかなかの攻撃です! 襲い掛かる大量の魚の腰に、長野娘の突撃がストップしてしまいました。
「チャンスですよ」
──おーっと、ここで! 新潟娘、チューリップのスカートの中から巨大なマシンガンを取り出したー!
「あの笑顔が逆に怖いですねー」
──新潟娘の可愛らしさとは真逆の巨大なマシンガン。『新潟娘とマシンガン』という歌ができそうです!
「それを言うなら『チューリップ娘と機関銃』でしょう」
──どちらでもいい! 果てしなくどちらでもいい! さあ、そんな新潟娘、長野娘に向けてマシンガンをぶっ放すー!
「大量のステンレス包丁が襲い掛かりますよ」
──わああああ! 長野娘、スキーで滑りながらなんとかかわす! 新潟娘の乱射をかわしまくっています!
「素晴らしいウェーデルンですね」
──さすがは山娘、いや長野娘といったところでしょうか。コサックを踊るかのように優雅に滑っています。ところでイチローさん。先程から新潟娘の海の要素がまったくないのですが?
「そんなことはありません、まだ新潟娘は本領を発揮してないだけです」
──本領を発揮してない?
「新潟娘がなぜ海娘と呼ばれているのか、もうすぐわかりますよ」
──そ、そうですか。
「ですが、その前に長野娘のほうが仕掛けてきましたね」
──本当ですね。スキーでかわしながら何やら頭上に大きな柱を作り出しはじめました。
「【御柱落とし】です。これは強烈ですよ」
──さあ、そんな長野娘にどう対抗するのか新潟娘。おーっと! ここで! ステンレス包丁を乱射していた巨大マシンガンをしまって、両手で印を結び始めた!
「出ますよ! 新潟娘の真骨頂。【日本海・新潟の海はばかいいねっかてー】です!」
──日本海・新潟の海は……なんですか?
「ばかいいねっかてーです。すごくいいねという意味です」
──な、なるほど。(っていうか、新潟娘の技のネーミングセンスってダサくない?)
『日本海・新潟の海はばかいいねっかてー!!』
「出たー! 出ました、新潟の海! 日本海! 生命の神秘!」
──なんと! 新潟娘の背後から日本海の荒波が水しぶきをあげて押し寄せてきました!
「思わず泳ぎたくなってきますねー! 浮き輪ないかな、浮き輪!」
──イチローさん、本当に山派なんですか? テンションが海派のそれですよ。
「そんなことありません。海派に近い山派です(キリッ)」
──そ、そうですか。さあ、会場が雪山と日本海に別れてしまいましたが、長野娘、冷静に頭上に柱を作り続けています!
「いや、よく見てください。チラチラと日本海を見てますよ」
──ほんとです。長野娘、海に対する憧れが強いのか、チラチラと日本海に目を向けています!
「新潟娘がそんな日本海で遊び始めましたね」
──もはやこれはバトルなのか!? バトルというのか!?
「これが新潟娘の作戦なんですよ。長野娘は海に対する憧れが人一倍強いですからね。ですがあの日本海に入ってはいけません。入ったが最後、捕まってしまいます」
──つまりあの日本海は長野娘をおびき寄せるための罠だと?
「そういうことです」
──あーっと、長野娘、ふらふらと誘い込まれるように新潟娘の作った日本海に向かって行くー!
「やはり海の魅力は効果絶大のようです。ちなみにこの技は海に面している娘には効果がありません」
──でしょうね。
「さすがは日本海! まさに神秘の海! このバトルが終わったら私も新潟の海に行きたいです!」
──大会が終わってからにしてください。
「さあ、そんな日本海に長野娘が飛び込もうとしてます」
──あーっと! しかし長野娘の妖精アップルくんとアップルちゃんが長野娘に渾身のパンチ!
「【アップルパンチ】です」
──あ、アップルパンチは妖精のほうが使うんですか。てっきり長野娘の技かと……。
「長野娘も使いますよ」
──我に返った長野娘! 今まさに日本海に飛び込もうとしていた矢先! すかさず新潟娘が日本海に引きずり込もうとするー!
「ホラーですね」
──しかし我に返った長野娘、その手を振りほどいて頭上に作り上げた柱を新潟娘に落としたー!
『御柱落とし!!』
──【御柱落とし】です! これは強烈ー! まさかまさかの長野娘、危機一髪の逆転勝利でしたねー!
「なぜ我々は山を登るのか。なぜならそこに山があるからだ」
──(何言ってんの、この人)
×新潟娘 VS 〇長野娘【決め技:御柱落とし】