神奈川娘 VS 愛知娘
──さあ、ますますヒートアップしている第七試合。対戦するのは神奈川娘 VS 愛知娘です。この対決はどうでしょうか、イチローさん。
「この戦いも面白いですよー。なにせ優勝候補の二人ですからねー」
──確か都道府県娘最強ランキング(当社比)10位以内に入ってる二人ですよね。
「そうです。5位と6位に入ってる二人ですね。ちなみに1位はもちろん北海道娘、2位は東京娘となっています」
──5位と6位の猛者が一回戦で激突ですか。これは楽しみですねー。特徴など教えていただけますか?
「はい、まず神奈川娘はですね、なんといっても身体能力がズバ抜けてます。身のこなしが軽いんです」
──身体能力が高いということでしょうか?
「身体能力が“異常に”高いんです。ここポイントですよ」
──異常に、ですか。
「ちょっと常人離れした動きをしますねー」
──なるほど。神奈川娘は典型的な肉弾戦タイプということですね。対する愛知娘はどうでしょう?
「愛知娘は肉弾戦タイプではありませんが、とにかく強いですよー。かの有名な名古屋の剣豪エビザベース・はっちまる君が『この娘に勝つにはどうしたらいいかわからんもんだで』と言ってたくらいですからねー」
──……誰?
「おや? エビザベース・はっちまる君をご存じない?」
──すいません、まったくわかりません。
「だなーもー・かなえちゃんの身内と言えばわかりますでしょうか」
──……あ、すいません、もうけっこうです。とにかく、その……エビザベース・はっちまる君ですか? その人ですら勝つ方法がわからないと言うくらいの娘なんですね。
「そうです」
──それはさらに楽しみになってきました。さあ、両者の入場です! まずは神奈川娘。カンフーの服を着た中華風の娘が入場して参りました。
「語尾に『~~アルよ』ってつけながらしゃべってそうですねー」
──わかりますわかります。こういう中華風の娘の「~~アルよ」はもはや様式美ですからねー。対する愛知娘ですが……普通のお嬢様という感じの娘ですね。頭に金のシャチホコを乗せた面白いスタイルをしてますよ。
「金のシャチホコは愛知娘のトレードマークなので外せませんね」
──しかし神奈川娘をおさえて最強娘ランキング5位というのが気になりますねー。そんなに強そうには見えないのですが……。
「見た目で判断してはいけませんよ。それに愛知娘はあらゆる能力で全都道府県娘の1位を獲得してますからね。その能力は計り知れません」
──あらゆる能力ですか?
「例えば自動車生産能力第一位。バラと洋ラン生産能力第一位」
──バトルとは関係なさそうですが……。
「それが関係あるんですよ。自動車生産能力第一位ということは、禁断の必殺技【自動車カーアタック】が使えますし、バラと洋ラン生産能力第一位ということは、【バラの棘しばり】という地味に痛い攻撃もできますからねー」
──地味とか言わないでください。実際、バラの棘はめっちゃ痛いんですから。
「とはいえ、【自動車カーアタック】は追突安全ブレーキが自動的に発動されるので、ぶつかる前に止まるんですけどね」
──衝突被害軽減ブレーキ義務化、ばんざい。
「あとはなんといっても【味噌カツ煮込みボンバー】が強力ですね」
──どんな攻撃なんでしょう?
「両手に持った味噌カツと味噌煮込みうどんを相手に投げつける技です」
──……なんだか都道府県娘最強ランキングトップ10に入ってるのか怪しい気がしてきました。
「まあ、実際の強さは目で見て初めてわかりますからね」
──そうですね。東京娘も可愛いだけではなかったですからね! この戦いも期待できそうです。それでは神奈川娘 VS 愛知娘、バトル開始です!
カーン!
──さあ、ゴングの合図とともに最初に仕掛けてきたのは神奈川娘です。俊敏な動きで拳打と蹴りを連発しています!
「いい動きですねー。無駄がない」
──対する愛知娘、その神奈川娘の攻撃を余裕の表情でかわしています!
「さすがは愛知娘。神奈川娘の動きが見えてますね」
──愛知娘、動体視力がいいのでしょうか?
「それもありますが、頭に乗ったシャチホコが攻撃の予測をしてくれているのです」
──攻撃の予測?
「ほら、聞こえません?」
──………。
「………」
──………。
「………」
──ああ、聞こえます、聞こえます。確かに「右!」とか「左!」とか「シャチホコ!」とか言ってますね!
「金のシャチホコの【愛・地球ハク・未来サテライト】がこの愛知娘最大の能力なんです」
──未来が予測できるだなんて、とんだチートですね。
「いくら神奈川娘の身体能力が高くても、未来が予測出来てしまっては当たりません」
──剣豪エビザベース・はっちまる君が「この娘に勝つにはどうしたらいいかわからない」と言ってた理由がわかりました。
「とはいえ、反撃できなければ意味がありません。愛知娘が神奈川娘をどう攻略するか見ものですね」
『エビふりゃーパンチ!!』
──ああーっと! そうこうするうちに愛知娘の【エビふりゃーパンチ】が神奈川娘の顔面に炸裂ー! 思わずエビぞりになる神奈川娘!
「あれは痛いですよー。揚げたてアツアツの衣が乗ったエビフライが顔面を直撃するんですからね」
──毎度のことながら、これは都道府県娘がオーラで具現化した攻撃です。食べ物ではありませんのでご安心ください。
「私は本物のエビフライを顔面に受けたいですけどね」
──そういう危ない発言は心の中にしまっておいてください。
「そうこうするうちに愛知娘が【味噌カツ煮込みボンバー】を発動し始めてますよ」
──勝負をかける気ですね。神奈川娘、一度も攻撃を与えられないまま負けてしまうのかー!
「あ、いえ、見てください」
──こ、これは……! 神奈川娘の身体が七色に光り輝きはじめました!
「これはまさか伝説の……」
──伝説の?
「伝説の……」
──伝説の?
「伝説の……」
──伝説の……なんですか!?
「【港のヨーコ最終奥義・ヨコハマよこすカー】かもしれません!」
──【港のヨーコ最終奥義・ヨコハマよこすケー】!?
「カーです、カー。よこすカー。よこすケーじゃありません」
──すいません、噛みました。
「見てください、神奈川娘の顔を!」
──ああ! 顔つきが変わってます! バトル前の中華娘風の顔から、般若のような顔に変わってます!
「あれは港のヨーコです! 危険を察知して港のヨーコが顔を出したんです!」
──これはすごい展開になってきました! まさか神奈川娘にふたつの顔があったとは! 愛知娘もそんなバカなという顔をしています! ちなみにヨーコって誰だー!?
「こうなった神奈川娘は強いですよー」
──確かに常人離れした顔つきをしていますね。まるで酔っぱらったイチローさんのようです。
「そんなにひどい?」
──港のヨーコに変身した神奈川娘、そのまま愛知娘に突進していく!
「何か笑いながら叫んでますね」
──ほんとですね。「あははは、あんたはあの子のなんなんだーい」的な事を笑いながら叫んでますね。
『港のヨーコ最終奥義・ヨコハマよこすカー!!』
──出たーーー! 神奈川娘の必殺技【港のヨーコ最終奥義・ヨコハマよこすカー】! 愛知娘の反応よりも早くレインボーに彩られた観覧車の如く、七色に光った回転体当たりが炸裂ーーー! 愛知娘、たまらずダウーン!
「いやー、まさかの大逆転劇でしたね」
──ですねー。まさかここで別の顔が出るとは。
「………」
──………。
「………」
──ところで、イチローさん。港のヨーコに変身した神奈川娘、どうやって元に戻せばいいんでしょうか?
「さあ。ヨーコの恋人を連れてくるしかありませんね」
──そ、そうですか。(そもそもヨーコって誰?)
〇神奈川娘 VS ×愛知娘【決め技:港のヨーコ最終奥義・ヨコハマよこすカー】