東京娘 VS 千葉娘
──さあ、いよいよやってまいりました大本命! 東京娘 VS 千葉娘の対戦です! 応援の声が凄まじいですね、イチローさん。
「そうですね。こんなに近くにいてもタローさんの声が聞き取りにくいくらいの声援ですね。それもそのはず、東京娘は現役アイドルとしても活躍中! そして都道府県娘としてもバリバリの上位入賞者ですからね」
──対する千葉娘も、東京娘と負けず劣らずの大人気。パッと見、海外のファンが多いようですが。
「海外娘との窓口もやってますからね。国際交流も盛んに行ってるようですし、いわゆるグローバル娘と言われています」
──なるほど、グローバル娘ですか。それでは両者入場です!
『WAAAAAAAAAーーーーーー!!!!!』
──うっさ! 観客の必殺技【どでかい応援:WAー】が発動されてますね、イチローさん!
「そうですね! それだけ大注目と言う事でしょう!」
──まずは東京娘。現役アイドルとしてパンダの着ぐるみを着て入場して参りました。絶叫する観客に笑顔を向けている! これは確かに応援したくなる可愛さだ! 対する千葉娘、入場です!
『YEAHHHHHHーーーーーーーー!!!!!』
──こちらは海外のファンでしょうか。【どでかい応援:YEAH】を発動してます!
「世界的に見ると注目度ナンバーワンの娘ですね」
──さすがは海外の猛者を召喚する【成田空港大空流星群】の使い手といったところでしょうか。イチローさん的にはどちらが優勢だと思いますか?
「甲乙つけがたいですね。どちらが勝ってもおかしくないと思いますよ。強いてあげるなら東京娘のほうが若干有利かもしれません」
──東京娘ですか? それはなぜでしょうか?
「まずひとつ、東京娘はパンダの着ぐるみを着てるからです」
──パンダの着ぐるみは関係ないんじゃ……。
「それと、とにかく東京娘は技が多いんです。ひとつがダメでもその次が、その次がダメでもさらにその次が、と引き出しの多さが半端ないんです。ひとつひとつ対応していっては、いずれは食らってしまいます」
──ということは、千葉娘が勝つには東京娘が技を出す前に回避不能の技を仕掛けるということですか?
「そうなりますね」
──それは楽しみになってきました。ところでさっきから東京娘のファンたちが不思議な踊りを踊っているのはなんでしょうか。
「オタ芸と呼ばれるダンスですね」
──オタ芸……。
「私もよくは知らないのですが、ファン同士が一体になれる感覚がたまらないらしいですよ」
──イチローさんも実は一緒に踊りたいのでは?
「いえいえ、オタ芸は相当体力を使いますからねー。見てるだけで十分です」
──そう言いながらもペンライトを光らせてますが……。
「気のせいです」
──気のせいですか……。
「さあ、早く鳴らしてください。バトル開始のゴングを!!」
──(めっちゃ混ざりたがってるじゃないですか……)ということで、東京娘 VS 千葉娘、バトル開始です!
カーン!
──さあ、真っ先に仕掛けたのはやはり千葉娘! 東京娘に先手を取らせないよう、速攻で詰め寄ってきました!
「速いですねー。さすがはジェット俊足」
──両手を広げて飛行機のように突っ込んでいく千葉娘! 対する東京娘、反応が遅れたー!
「いいリズムです。これは一瞬で勝負が決まるかもしれません」
──ふところに飛び込んだ千葉娘! 渾身の【チーバ99落下斬】を発動ーーー!
『チーバ99落下斬!!』
「落花生の殻を割るか如く、ぎゅうぎゅうに身体を締め付けて99回マットに叩きつける技ですね」
──これはたまらない! 東京娘、早くも脱落かーーーー! ファンたちの悲鳴も飛び交うーーー!
「いや、よく見てください。パンダの着ぐるみが衝撃を吸収してます」
──な、なんと! まったく関係ないと思われていたパンダの着ぐるみが、千葉娘とのバトルにおいて最高の役割を果たしてくれています!
「むしろ笑ってますねー」
──さすがは東京娘! いや、現役アイドル! どんなに苦しくとも笑顔は絶やさない! まさにアイドルの中のアイドルです!
「千葉娘も負けていませんよ? 距離をとりましたね」
──これはまさか……。
「世界中の猛者を召喚する【成田空港大空流星群】ですね」
──来るのか!? 来てしまうのか!? 世界中の猛者たちが、この会場に来てしまうのかーーー!?
『成田空港大空流星群!!』
「あ、発動しましたね」
──でたーーーーー! 【成田空港大空流星群】! 空から世界中のあらゆるチャンピオンが降ってきたーーーーー!
「空手家、柔道家、ボクサー、プロレスラー、カンフー使い、ありとあらゆる猛者が降りてきますよ」
──さすがの東京娘も万事休すか!
「あ……」
──どうしました? イチローさん。
「見てください。東京娘、降りて来る猛者一人一人に握手して【萌え萌えキュンキュンビーム】を発射してます!」
──【萌え萌えキュンキュンビーム】! あのオムライスにかけると劇的においしくなるという魔法のビームですか!?
「人に向けて撃つと心がキュンとなって倒れてしまうビームですね」
──ああーーーー! ほんとだ! 東京娘に握手をされた猛者たちが次々と倒れ伏していく! これは衝撃だーーーー!
「幸せいっぱいでしょうね」
──これにはさすがの千葉娘も唖然としております! さあ、ここで東京娘の反撃開始です!
「あ、あれは……!」
──あれは伝説の!
「東京特許きょきゃ……東京とっきょきょきゃきょ……東京とっきょきょ……」
──東京特許許可局橋脚拳ですね!
「それですね」
──………。
「………」
──………。
「………」
──おや、どうしたのでしょう。発動しませんね?
「あ、噛んでますね」
──あ、噛んでますか?
「技の名前を噛むと発動しませんからね」
──ああー、そうですか。なんでこんな言いにくい名前にしたんでしょうね。
「言えると思ったんでしょうね」
──さあ、そうこうするうちに千葉娘が再度攻撃を仕掛け始めてきたーーーー!
「切り札の【成田空港大空流星群】が破られましたから、ここは超必殺技でくるでしょう」
──ということは!? ということは!? 必殺の!?
「【東京・ドイツ・ヴィレッジ・イン・バーチー・ソデガウラー・シティ】ですね」
──きたーーー! 【東京・ドイツ・ヴィレッジ・イン・バーチー・ソデガウラー・シティ】ーーーー! 東京なのかドイツなのかヴィレッジなのかシティなのか、はっきりしない技ーーー!
「あ、いや、ここに来て東京娘の構えが変わりましたね」
──東京娘の構えが変わりましたか!?
「これは……【ひよこクラッシャー】ですね」
『ひよこクラッシャー!!』
──【ひよこクラッシャー】! 可愛らしい名前とは裏腹に、ひよこのくちばしに見立てた指で相手を突き刺す恐ろしい技ーーー! 【東京・ドイツ・ヴィレッジ・イン・バーチー・ソデガウラー・シティ】を発動中の千葉娘、これをかわすことができずに直撃しましたーーーー!
「決まりましたね」
──なぜ千葉娘は【東京・ドイツ・ヴィレッジ・イン・バーチー・ソデガウラー・シティ】を選択したのか! もっと短い技だったら倒せていたかもしれません。
「東京娘にとってはラッキーでしたね」
──運も実力のうち、ということですね。
〇東京娘 VS ×千葉娘【決め技:ひよこクラッシャー】