福岡娘 VS 熊本娘
──さあ、いよいよ九州勢の登場となりました第二十試合、福岡娘 VS 熊本娘です。イチローさん、確かこの二人は因縁の対決なんですよね?
「そうなんです。福岡娘と熊本娘は昔からとにかくライバル意識が強くてですね、互いに負けず嫌いで有名なんですよ」
──そんな二人が戦うとなるとちょっと怖いですねー。
「ええ。会場もピリピリしてますよ」
──ちなみに福岡娘はどういった娘なんでしょう?
「福岡娘はとにかくバリバリのキャリアウーマンで、いわゆるオフィスレディというやつですね」
──オフィスレディですか?
「真面目で働き者、その上クールで美人で頭も切れる。全都道府県娘で上司にしたい女性ナンバー1が彼女です」
──なるほど。クールで美人な女上司は全てのサラリーマンの憧れですからね。対する熊本娘はどうでしょう?
「熊本娘は福岡娘とは対称的で、どちらかというと派手でサバサバした性格ですね」
──派手でサバサバした性格ですか。それはなんとも福岡娘とは相性が悪そうだ。
「実際、相性は悪いですよ。熊本娘はファッションモデルでもあるので、真面目で地味なスーツを着た福岡娘のことをよくからかったりしてますからね」
──あ、熊本娘はファッションモデルなんですか。それは楽しみですねー。それでは入場していただきましょう! まずは福岡娘。イチローさんの情報通り、スーツを着たオフィスレディ姿で入場して参りました!
「きっと仕事を途中で切り上げてきたのでしょう。入場しつつスマホで会社の人間に指示を出してますよ」
──さすがはキャリアウーマン福岡娘と言うべきでしょうか。
「しかも聞いてください。しゃべってる言葉は博多弁です」
──なんと! ものの見事な博多弁だ! これは萌える!
「スーツ姿の女性の博多弁は萌えますからね~。一説によりますと、博多弁は『方言がかわいいと思う女子』全国第二位らしいですよ」
──わかります、わかります。方言女子の「今、なんしよーと?」はクラッと来ますよねー。
「まったくです」
──なみに一位はどこなんですか?
「京都です」
──あー、なるほど。分かる気がしないでもないでおまんす。
「どこの方言ですか」
──なにはともあれ、さすがは福岡娘。スーツを着てても博多弁の威力も相まって可愛さが100%爆発してます。対する熊本娘ですが……。
「おや、天草四郎ファッションで来ましたか」
──天草四郎ファッション?
「熊本娘の定番中の定番の衣装ですよ。バテレンの衣装がよく似合ってます」
──言われてみれば、宣教師のような衣装を着てますね。ファッションモデルだけあって、よく似合ってますよ。
「熊本娘はこの格好でギャル語を使いますからねー。見た目と言動のギャップが受けて10代20代の女の子に大人気なんです」
──まさにメディア戦略に長けた娘ですね。
「ええ、場合によってはマスコミも味方にできるくらい存在感が強いです」
──さあ、そんな熊本娘にバリバリのキャリアウーマン福岡娘がどう立ち向かうのか。それではバトル開始です!
カーン!
──まずは福岡娘、ここぞとばかりにラーメンを取り出したぞ!?
「どこにしまってたんでしょう」
──あ、あれは! 博多名物とんこつラーメン! 白いスープにほっそりとした麺、紅ショウガにキクラゲが入った、福岡の最高峰グルメ!
「替え玉も人気の秘訣です」
──そんな博多とんこつラーメンをどうする気だ!?
「きっと【博多とんこつ・ラーメンMAN】をぶつける気ですよ」
──博多とんこつ・ラーメンMAN?
「実は福岡娘がとりだしたあの博多とんこつラーメンには、中に無数のラーメンMANがいるんです。
──ラーメンMAN? なんだか某プロレスアニメのキャラクターを想像してしまいますね。
「残念ながらタイガーマ〇クではありません」
──いや、そっちのプロレスアニメじゃなくて……。まあ、どうでもいいです。
「そのラーメンMANをぶつけられたが最後、博多とんこつラーメンの替え玉を延々と追加させられてしまうんです」
──替え玉を延々と……。いくら美味しくてもそれはキツイですねー。
「どんな猛者でも3杯が限度と言われてますからねー。しかも食べるのをやめるとラーメンMANが蹴りを入れてきます」
──意外とエグイ技だ! さあ、そんな博多とんこつ・ラーメンMAN、熊本娘はどう対応するのか!
【博多とんこつ・ラーメンMAN】!!
──出たー! 福岡娘、博多とんこつラーメンを器ごと投げつけたー! 重ねて言いますが、これらの攻撃は都道府県娘のオーラを具現化したもので、実際の食べ物を使用してるわけではございませんのでご安心ください。
「ああ、なんと!?」
──な、なんとー!? かわさない! 熊本娘、かわしません! 福岡娘の博多とんこつ・ラーメンMANを顔面で受け止めました!
「何を考えてるんでしょう」
──出て来る出て来る! ラーメンの器から中華風の顔をした男たち(妖精)がぞろぞろと出てきます! これはキショい! ……あ、失礼しました。これはすごい!
「あ、食べてますね」
──な、なんと!? 熊本娘、ラーメンMANたちが用意した博多ラーメンを次々と食べております! これはどういうことだ!?
「タローさん、これはもしかしたら熊本娘のプライドかもしれませんよ?」
──どういう意味でしょうか、イチローさん。
「冒頭でも言いましたが、福岡娘と熊本娘はライバル同士なんです。ですから、福岡娘の攻撃をかわすというのは熊本娘のプライドが許さなかったのではないでしょうか」
──なるほど。つまり福岡娘の攻撃をあえて受けたということですか。
「そうです。真正面から受けて、『お前の攻撃は利かぬわ、たわけ!』とかなんとか言いたのでしょう、熊本娘は」
──セリフはどうかわかりませんが、確かに食べてます熊本娘! ラーメンMANの用意した替え玉を次々と完食していってます! これは早い! 早食い女王だ!
「ラーメンMANたちに焦りの色が浮かんでますねー」
──おーっと!? ここにきてペースを上げたぞ、熊本娘! 早く替え玉を寄こせと言わんばかりにラーメンMANに器を押し付けている!
「これはたまりませんよ。相手を追い込ませる役のラーメンMANが逆に追い込まれてますからねー」
──あっと、逃げ出した! たまらずラーメンMANの一人が逃げ出しました! それに続いて他のラーメンMANたちも逃げ出して行く! さすがに熊本娘の早食いにはかなわなかったようです!
「ああ、でも逃げた先でも福岡娘から説教を食らってますね」
──バリバリのキャリアウーマン・福岡娘の鬼のようなお説教。ラーメンMANたちが可哀そうに思えます。
「あっと、今度は熊本娘が反撃に出ようとしてますよ?」
──今度はなんだ? 熊本娘、両手を突き出しました。
「右手が炎に、そして左手は氷に包まれましたね」
──これはどういう攻撃なんでしょうか?
「【火の国水の国・カルデラアタック】を発動しようとしてますよ」
──火の国水の国・カルデラアタックですか?
「熊本娘は火と氷を操ることができるんです。そして両方同時に攻撃するのがこのカルデラアタックです」
──なんだかよくわかりませんが、これはヤバそうだ!
「食らったらまず助かりませんね」
──さあ、どう出る福岡娘! そうこうするうちに熊本娘が構えに入った!
「出ますよ、カルデラアタックが!」
【火の国水の国・カルデラアタック】!!
──出たー! 熊本娘のカルデラアタック! 右手から炎の玉が、左手からは氷の塊が福岡娘に向かって飛んでいく!
「あ、避けませんね」
──な、なんとーーーー!! 今度は福岡娘が顔面でカルデラアタックを受け止めたーーーー!!!!
「無謀すぎますよ、これは」
──たまらず吹っ飛ぶ、福岡娘! 顔面にもろに入りました!
「さすがにカルデラアタックを真正面から受けるのはバカとしか言いようがない」
──あえなくダウン、福岡娘! 大丈夫でしょうか?
「いくらプライドが高くとも、さすがにあの大技をまともに受けては……」
──な、なんとー! 立ち上がった! 立ち上がりました、福岡娘!
「バ、バカな……」
──鼻血を出しながらも「あんたの攻撃なんて屁でもないわ」みたいな顔をしております! もちろんセリフは妄想です!
「福岡娘のプライドの高さも甘く見てましたね」
──さあ、今度は福岡娘が構えた!
「こ、これは……【柳川・川下りどっこい白秋】の構え!」
──長い竹竿のようなものを取り出しましたが?
「あれを使って、川下りをするかのごとく相手を舟に見立てて地面を滑る恐ろしい技です」
──……さっきから福岡娘の攻撃が陰湿すぎる気がするんですが?
「立派な技ですよ」
【柳川・川下りどっこい白秋】!!
──出たー! 陰湿な攻撃! さあ、そんな福岡娘の攻撃を熊本娘は……。
「やっぱり避けませんね」
──食らったー! まともに食らいました、熊本娘! 舟に見立てられた熊本娘、背中に福岡娘を乗せ、全身を地面にこすられながら滑っていくーーー!
「見てるだけで痛そうですねー」
──しかし平然と立ち上がる! まるで「あー、蚊がいるなー」と言わんばかりの表情だ! もちろんセリフは妄想です!
「今度は熊本娘が仕掛けますよ?」
【くま・もと城】!!
──出たー! なんだか説明がめんどくさい技ー!
「福岡娘もしのぎ切りましたね」
──今度は福岡娘の番だ!
【福岡ダイエー・鷹の爪ランデブー】!!
「熊本娘も負けていませんよ」
【阿蘇温泉バスター】!!
──福岡娘も反撃だ!
【博多どん・たく・ドント・タッチ・ミー】!!
【く〇モン・フリーズ】!!
【中州がわ良子】!!
【天草四郎・ジェロニモ・フランシスコ】!!
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15分後。
──なかなか決着がつきませんねー。
「互いに互いの技を受け止めて倒れない。まさにプライドとの戦いですね」
──技名も作者が思いつかないのか人の名前のような技になってますしね。
「いや、でもそろそろラストのようですよ?」
──おっと? 全身ボロボロになった福岡娘、取り出したのは大きなバズーカランチャーだ!
「あれは明太娘バズーカですね」
──明太娘バズーカ?
「相手に福岡名物・辛子明太娘をぶつける恐ろしい技ですよ」
──解説も雑になってきましたね、イチローさん。
「明太娘とは福岡娘のパートナー妖精の一人で、怒ると辛さが倍増します。それが辛子明太娘です。ものすごく辛くて美味しいです」
──さあ、そんな明太娘バズーカをセットする福岡娘。対する熊本娘もボロボロですが、正面から受け止める気だ!
【明太娘バズーカ】!!
──出たー! バズーカランチャーの砲身から明太子のような姿の妖精が飛び出して行ったー!
「やはり顔面で受け止めましたね、熊本娘」
──ボロボロの熊本娘ですが、どうやらこの技も耐え忍んだようです! いまだ決着がつきません、福岡娘 VS 熊本娘!
【明太娘バズーカ】!!
──ななな、なんとー!? ここにきて福岡娘が明太娘バズーカの二連続攻撃ーーーー!! さすがの熊本娘もまさかという顔ー!!
「なるほど! これは考えましたよ!」
──どういうことですか? イチローさん。
「福岡娘の【明太娘バズーカ】は二連続攻撃が可能なんです。一発目が不発でも二発目が撃てる仕様になっていて、福岡娘はこれを利用したわけです」
──つまり、熊本娘が一発目をしのいでる間に二発目をお見舞いしたわけですか。
「他の技とのダブル攻撃ならズルかったかもしれませんが、もともと二連続攻撃の技ですからね。福岡娘の作戦勝ちといったところでしょう」
──熊本娘、さすがに明太娘バズーカの二連続攻撃はしのぎ切れなかったか。まともに食らってあえなくダウーン!
「ここまで粘り強いプライドを見せた熊本娘も立派でした」
──やはり福岡娘と熊本娘の因縁の対決はまだまだ続きそうですね。
〇福岡娘 VS ×熊本娘 【決め技:明太娘バズーカ】




