高知娘 VS 愛媛娘
「こたつに欠かせない果物みかん。これがあったら冬は何もいらないと言っても過言ではない果物みかん。みかんに含まれているビタミンは風邪の予防、ストレスの低減、肌の健康を整える働きがあるそうです」
──……いきなりなんですか、イチローさん。
「次の対決は高知娘 VS 愛媛娘ですからね。愛媛娘と言ったらみかん。ですので、みかんについての豆知識を少々……」
──そうですね、愛媛娘といったらみかんですよねー。
「ちなみに私はみかんが大好物でして。なんと! 年に数回は食べるんですよ」
──(少なっ!)ね、年に数回は大好物の割りに少ない気が……。
「タローさんはどうです? みかんはお好きですか?」
──ええ、まあ。冬は毎日のように食べてますね。
「なんと! 冬は毎日のようにですか! それはすごい。ならばぜひタローさんも『みかん愛好会』に入るべきですよ」
──みかん愛好会?
「全国のみかん好きが集まる会です。集会場所はもちろん愛媛です。そして私が会長です」
──……年に数回しか食べないイチローさんが会長なんですか?
「ええ、私が会長です。みかんについて熱く語り合いましょう!」
──その前にイチローさんのみかん好き疑惑が拭えないのですが……。
「みかんのことなら私にお任せください!」
──それよりも愛媛娘の対戦相手の高知娘について聞かせてもらえませんか?
「あ、はいはい。えーと高知娘といったらカツオですね」
──はあ、カツオですか。
「カツオは栄養満点。特にビタミンB12が豊富で疲労回復に効果があり、さらにはたんぱく質もたくさん含んでいてダイエットに効果的な食べ物なんです」
──いえ、私が知りたいのは高知娘のほうで……。
「タローさんはカツオは好きですか?」
──ええ、まあ。カツオのたたきはよく食べますね。
「なんと! 気が合いますねー。私もカツオは大好物でして、年に1回は食べます」
──イチローさんにとっての大好物の定義が知りたくなってきました。
「ちなみに私、『カツオ愛好会』の会長でもあるので、ぜひタローさんにも入っていただきたいですね」
──イチローさんに愛があるのか疑問に思えてきました。さあ、高知娘と愛媛娘の情報をまったくいただけないまま、両者入場してまいりました。まずは高知娘。なんと。トライデントを構え大物カツオを背中に背負いながら大きなウミガメに乗っております。
「さすがは海神ポセイドンの娘。威風堂々とした入場ですよ」
──高知娘はあのポセイドンの娘なんですか?
「ええ、海の神といわれたポセイドンの娘(という設定)です」
──なるほど、ポセイドンの娘(という設定)ですか。それは強そうだ!
「あのトライデントの先から放たれる【カツオのたたきクラッシャー・皿鉢】は非常に強力ですよ」
──かつおのたたきクラッシャー・皿鉢。まるでカツオを叩いてクラッシュするようなイメージの技ですねー。
「カツオを叩いてクラッシュしてぶつけます」
──あ、まんまでしたか。対する愛媛娘ですが……みかん農家さんの格好をしてますが?
「今、みかんの収穫の時期ですからねー。みかんを収穫したその足でやってきたのでしょう」
──それは大変失礼しました! まさか本業がみかん農家さんだったとは!
「愛媛娘の伝説の大技、その名も【MIKAN】は相当な威力がありますよ」
──MIKAN。愛媛娘のみかん愛が感じられる技ですね。
「私とどちらがみかん愛に溢れているかも勝負して欲しいところです」
──間違いなく愛媛娘でしょう。それでは高知娘 VS 愛媛娘、バトルスタートです!
カーン!
──まずは海神ポセイドンの娘(という設定)の高知娘。自慢のトライデントで愛媛娘に突撃を仕掛けます!
「このトライデントも伝説級の一品ですからねー。まともに食らったらただではすみませんよ」
──おーっと、しかし! 高知娘、ウミガメの背中に乗っているため攻撃がものすごく遅い! トライデントを突き出して静止したまま、ぺったんぺったんと動くウミガメに身を任せている!
「まるで容量が重すぎて動作が遅くなったゲームのようですねー」
──……例えが雑過ぎます、イチローさん。
「いやあ、それほどでも」
──(褒めてません)おっと! そうこうするうちに愛媛娘、みかんの出荷の準備を始めたぞ!
「愛媛のみかんを早く全国に送り届けたい、そんな気持ちが現れてますねー」
──さすがはみかん農家さんといったところでしょうか。こちらとしてはこの隙に攻撃をして欲しいところなんですが……。
「やはりみかんの方が大事なんでしょう。みかん農家さんのおかげで、我々は毎日みかんを美味しくいただけてるわけですからね。感謝の気持ちでいっぱいですよ」
──(イチローさんは毎日食べてねーだろってツッコミたい!)あーっと! そうこうするうちに愛媛娘が高知娘のトライデントの間合いに入ったぞ!
「この位置は危険ですね」
──高知娘、ここぞとばかりにトライデントを振るうー!
【カツオのたたきクラッシャー・皿鉢】!!
──出たー! 高知娘の必殺技、カツオのたたきクラッシャー・皿鉢ー! 背中に背負ったカツオをトライデントでクラッシュさせて愛媛娘にぶつけるー! 重ねて言いますが、こちらは本物のカツオではなく高知娘のオーラが具現化したものですので食べ物ではありません。あらかじめご了承ください。
「いや、愛媛娘もこの攻撃を読んでましたよ」
──なんとー! さきほどまでみかんの出荷に専念していた愛媛娘、ここぞとばかりにみかん箱を盾にしてカツオのたたきをガードーーー! さすがはみかん箱! ちょっとやそっとでは壊れません!
「さすがは愛媛娘ですよ。みかんだけでなく、みかん箱も厳選していたようですね」
──箱をあけたらみかんが潰れていた、なんて悲劇が起こらないように固い段ボールを使用していたんですねー。まさにプロ。みかんプロ。
「どうやら攻撃がやんだようですよ」
──高知娘のカツオのたたきクラッシャーを見事防ぎ切った愛媛娘、なんとまだみかんの出荷に専念している!
「これはもう意地ですね。このバトル中になんとしてもみかんを出荷させるんだという愛媛娘の熱いプライドを感じますね」
──できればバトルのほうに専念して欲しいところ! あーっと! ここでさらに高知娘が土佐犬を召喚し始めました!
「これはまずいですよ。さきほどの高知娘のカツオのたたきクラッシャーと違って、土佐犬は生きてますからねー。みかんを食べてしまうんですよ。これではみかん箱でガードできません」
──まさかの愛媛娘、大ピンチ! みかんの出荷が仇となったか! さあ高知娘、召喚した土佐犬の頭をよしよしと撫で、愛媛娘に指を突き付けた!
【桂浜奥義・土佐犬突撃だワン】!!
──出たー! なんとも可愛らしい技名とは裏腹に、土佐犬が突撃をかまして来るー!
「あ、愛媛娘がみかんの形をしたボールを投げましたね」
──な、なんとー!? 愛媛娘に向かって突撃していた土佐犬が急に方向転換してみかんの形をしたボールに向かって突っ走っていくーーー!
「犬はボール遊びが大好きですからねー」
──召喚された土佐犬、見事空中でみかんの形をしたボールをキャッチ! そしてそれをくわえながら、高知娘のところに戻っていきます!
「なんともほほ笑ましい光景です。高知娘もよしよしと頭を撫でております」
──さあ、愛媛娘。ここにきてようやくみかんの出荷を終えたようです。おもむろに立ち上がると、農家の衣装をはぎ取りました。
「こ、これは……!」
──ななな、なんと! 愛媛娘、農家衣装の下はバッチリと戦装束で身を包んでいたー!
「みかんだけじゃなく、ちゃんとバトルのことも考えていたんですね。さすがみかんプロ」
──愛媛娘、どこからともなくヤリを取り出した!
「これは珍しい。ヤリ対決ですか」
──一気に高知娘に詰め寄るとヤリを振るうー!
「高知娘もトライデントで防いでますね」
──これは見事なヤリさばき! 両者一歩も譲りません!
「いや。若干、高知娘のトライデントの方が有利かもしれませんね」
──確かに愛媛娘の方が押され気味です。刃先がひとつしかない愛媛娘のヤリに対して、高知娘のトライデントは刃先が3つもある三又のヤリですからねー。
「あと、みかんの出荷に多大な体力を使ってしまいましたから、それも影響してるのでしょう」
──農家さんって力仕事ですからねー。さすがにみかんの出荷のあとのバトルはヘビーだったか。あーっと! そうこうするうちに高知娘のトライデントが愛媛娘のヤリを叩き折ってしまったー!
「高知娘に軍配が上がりましたね」
──これで決まってしまうのかー!? 高知娘の勝利となるのかー!?
「おや? 愛媛娘、折れたヤリを手放しましたね」
──な、なんと! 愛媛娘、素手の状態で何やら構えました! 素手で高知娘のトライデントを防ごうと言うのか!
「無謀極まりないですね」
──い、いえ、見てくださいイチローさん! 愛媛娘の周りに異様なオーラが漂っています!
「こ、これは……!」
──なんですか、これは?
「【MIKAN】です! 愛媛娘、【MIKAN】を発動しようとしてます!」
──伝説の大技【MIKAN】ですか! 確かにひしひしとヤバそうな雰囲気が漂ってきてますね! そうはさせるかと言わんばかりに高知娘がトライデントを振るうー!
【MIKAN】!!
──出たー! 高知娘の攻撃よりも早く愛媛娘のMIKANが炸裂ー!
「愛媛娘の拳からみかんジュースが放たれましたね」
──これが愛媛娘伝説の大技・MIKAN! 高知娘、みかんジュースの波に飲まれて消えていくー!
「会場中に濃厚で芳醇な香りが漂ってますねー。これはおいしそうだ」
──高知娘の皿鉢も、愛媛娘のみかんジュースにはかなわなかったようです。
×高知娘 VS 〇愛媛娘【決め技:MIKAN】




