無題
「あたし……詰んでるね」
ひどく平坦に、問いかけか独り言ともとれる口調で彼女は今の心うちを吐露した。諦念と自嘲を含む薄い笑みと、何かしかの覚悟をした瞳。そんな哀色の、我が娘。
時に、数字と言うものは雄弁である。特に、受験生にとっては残酷ですらある。
持病による欠席日数、授業や行事に出られない故に低い内申点。それを試験の点数でねじ伏せようにも、毎日の頭痛が勉学の邪魔をする……。思うように伸びない試験結果。
娘の胸中にどれだけの絶望、諦め、虚無感が渦巻いているのかなど想像もつかない。
が、数秒も経たないうちにいつも通りの娘に戻り、ダイニングテーブルに参考書とノートを開き勉強を始める。その小さな背中は闘う意思を感じさせるものであった。
であれば、私が出来る事は……。
「明日の模試の弁当、何がいいかね?」
「……砂肝の唐揚げ!」
オッサンかな? とりあえず生、的な?
まぁ、作りますけど。何人くらいが同じ模試を受けるか知らんけど、『砂肝弁当』持ってくJCはお前だけだろうよ。そんなオンリーワン、ビミョーじゃない?
近い未来、『砂肝弁当JK』が誕生しそうです。