0話 プロローグ 後編
ヘリは旧韓国支部の真上に着くと、そのままヘリポートに着陸した。ヘリの出入り口が開くと激しい銃撃の音が聞え、激戦区に到着したのだど再認識する。ニルヴァーナ部隊はそのまま降り、武器を構えた状態で支部へと潜入した。その光景を確認後、すぐに操縦者に指示を出し離陸させる。その間、バイクの状態を確認する。その間、外では銃声が鳴り響き、爆撃の衝撃音も聞こえて来た。インカム越しからは、先ほどから部下からの通信内容が耳に入る。その情報を聴きながら、武装を確認していく。
「隊長、このままダンジョン方面へ向かいますか」
「あぁ、そうしてくれ。ワイバーン種は人間、魔物問わず捕食対象としている。ダンジョンに魔物が溢れているのなら、間違いなく喰らいに向かっているはずだ。何としても、討伐をする必要がある」
「了解!! これより、目的地へ向かいます」
操縦者はそのままダンジョンの方角へと向かってヘリを飛ばした。ヘリの窓から下を覗くと、魔物の大軍が支部へと向かっている光景が見えた。そんな中、インカムからシルバーの通信が入る。その声は、怒りに満ちた奥歯を噛みしめる様だった。
『シルバーより各位へ。先ほど、ドラゴン種の魔物について新情報が出た。対象のドラゴンの名は『アーマードワイバーン』であることが判明。早急に対応が必要だと、上層部から通達が入った。グレイブ、早急にアーマードワイバーンを排除してくれ。韓国を一夜にして滅ぼした奴だ、これ以上の被害を出さない為にも絶対に仕留めろ』
「此方、グレイブ。任務、承諾した。現在、対象を捜索中だ。魔物が出現した方向にヘリを飛ばしているが、対象が其方に居るか不明の状態だ。シルバー、対象はダンジョン方面へ向かっていると予想しているのだが、其方の情報と一致しているか」
『あぁ、グレイブの予想通りだ。現在、通信衛星から追走しているが、間違いなくダンジョンの方へと向かっている。ただ、ダンジョンに向かっている道中で魔物を襲っては喰らうを繰り返しているおかげか、かなり近づいて来ている。もうすぐ目視で確認できるはずだ。このままそこで戦闘できれば良いが、もしダンジョン内部へ進行した場合、冒険者組合との関連でグレイブ以外の潜入は不可能になる。出来るならばダンジョン内部に侵入する前に、確実に奴を仕留めてくれ。上から「ヘリ内部にある武器は、好きなだけ使って構わん」と通達が入ったのでな、好きなだけ弾丸を使用して構わない。健闘を祈る、オーヴァー』
シルバーの報告を受けてか、遠隔操作でヘリの内部に配置された箱が開く。中にはロケットランチャーやサブマシンガンなど最新式の物が用意されていた。対ドラゴン退治用のパイルバンカー等もあり、個人的にも新作武器での戦闘に俄然ヤル気が湧いて出る。
「了解した、確実に奴を仕留める。オーバー。さて、ベイルディーア。内容の通り、此処からは奴を釣る必要があらる。バイクで移動し、俺が餌になり標的を釣り上げる。戦闘に向いた場所の案内を頼む」
「了解。此処からですと、ダンジョン入り口近くの給油場が近くにあります。其方に着陸します」
「了解した。では、これよりワイバーン狩りの始まりだ。ニルヴァーナ部隊、聞えたな。これより、ワイバーン狩りに移行する。お前たちは指示通り、生存者の救出を行なえ。もし、標的がそちらに出現した場合すぐに報告を頼む」
通信を切り、すぐにバイクの座席に座る。脈動する籠手を見ながら、バイクのグリップに手をかける。脈動するこの赤黒い籠手は、ブラッドレッドドラゴンの鱗で作られている。他者の血を吸う事で強度が増すだけではなく、魔素を吸収する事で火炎弾を放つ事が出来る便利な籠手である。当然だが、腰に差している双剣も同じドラゴンの素材で作られている。腰には別とに取り付けるタイプのポーチが付いており、ポーチの中には『魔物に対する液体状の毒薬』が入った薬品瓶が数本納められている。装備を確認後に、再度だが籠手を見つめる。ドラゴンへの憎しみと魔物たちを必ず駆逐すると言う決意を込めて、車輪に付いているロックを足で外す。
「隊長、目的地へ到着いたしました。これより降下します」
「了解した。着陸後、俺が出たと同時に離陸。ニルヴァーナ部隊と救出した生存者を連れて、すぐに日本支部へ帰還しろ」
「了解しました。隊長、ご武運を」
そう告げると同時にハッチが開いたのを確認し、そのまま外へと向かってバイクを走らせる。ハッチの外は瓦礫の山になっており、ヘリが降りている場所だけ綺麗に整理されていた。走らせる中、左側にはネットフェンスが張られており、その奥には巨大な穴が開いている。アレが以前『リキッドゴーレム』が大量に出現した『ゴーレムダンジョン』である。このダンジョンは地下10階層ほどある一般的な直下彫り型ダンジョンとなっている。当時、あまりにも危険な存在だったダンジョンだった為、生き残った各国の首相たちの会議で、冒険者組合と共同で掃討したダンジョンである。
現在、このダンジョンは『ゴーレムダンジョンType-LG』と呼ばれている。LGとは『Liquid Golem』を意味している。アレの対処に駆り出された時は本当に疲れたし、狩人の俺が『何故、対応しに行かねばならないのか』と、叫んだのは言うまでもない。そもそも、ダンジョン対応は冒険者組合が受け持つのが常識なのだ。それを特例と言う理由で狩人協会にも協力を仰いだ結果、何故か俺だけが駆り出されると言う事になってしまった。
(あの時は、韓国と北朝鮮の生き残りが居て、保護するのに大変だったな。本当に、あの隕石のせいで、この世界は最悪な形で変わっちまった)
あの日の事が脳裏に過るのだが、すぐにそれを取り払いバイクを加速させる。ネットフェンスが見えなくなり、舗装されていた道も瓦礫道に変わる。魔物たちの増加によって、まだこの道は完全に舗装されておらず、2025年には舗装も完了する予定だった。だが、今回の件でこの国は捨てられるだろう。アーマードワイバーンが出現したと言う事は、この土地が『ドラゴン大量発生』するの可能性がある事を意味し、他の国々は要警戒態勢の状態になる。つまり、出現するまでは、このまま放置されると言う事を意味する。
(上の奴らが早急に対応すれば、こんな事は起きなかったろうに。アーマードワイバーン――いや、ドラゴン種が出現するのは『捕食対象の魔物』が大量に出現する場合のみだ。もっと早く情報を寄越せば、狩人側も早急な対応が出来ただろうに。ゴーレム種しかでないと言う情報が、もしかしたら誤情報だった可能性もあるが――いや、俺が向かった時はゴーレム種しかいなかった。なら、今の状況は何だ)
頭の中で整理をしながら、標的が見える位置まで移動する。インカムからは『アーマードワイバーンは、現在ポイントFで停滞。魔物を捕食している可能性があります』と言った情報が入る。サポート課のアメリカ国籍の女性である『シルビア』の声だとすぐに判断し、彼女の情報を元に更に加速させる。目視で確認できる位置まで走らせ、右側グリップの頭に付いている『自動照準装置』を稼働させるボタンを押す。すると、後部座席に取り付けられた両側の武器庫が開き、二丁のアサルトライフルが出現する。アーマードワイバーンは、外側は硬い鱗で覆われているのだが、内側は外側に比べて柔らかくゴムのような伸縮性がある。その為、銃による攻撃は効果が無く、斬撃などでしか攻撃が効かないのだ。だが、このバイクに搭載されている銃については違う。外気に存在する魔素を吸収する隕石の欠片で作られており、銃弾には『雷と炎のルーン文字』が彫られている。これは『魔術弾』と言い、現状の人間では対応できない魔物に対して有効な攻撃方法である。
「此方、グレイブ。これより戦闘を開始する。戦闘時に要救護者、生存者を発見した際の情報連携は随時頼む。場合によっては、ゴーレムダンジョンType-LGまで奴を誘き寄せる」
『此方サポート班、了解しました。現在、衛星カメラなどの情報から、生存者などは見当たりません。そのまま戦闘を開始してください。また、情報斑のシルバー隊長から、ダンジョンでの戦闘を許可されております。シルバーからグレイブへ「戦場の状況に応じて、援護が必要になれば、すぐに連絡してくれ」と言伝を貰っております』
「此方グレイブ、了解した。これより対象『アーマードワイバーン』の討伐を開始する。オーヴァー」
連絡を終え、徐々にアーマードワイバーンの姿が見えて来た。銀色に輝く鱗は太陽光に反射して眩しく、緑色の柔らかそうな内側の皮膚と翼膜。瞳の色は赤く、熊型の魔物『ブラックフレイムベアー』と言う黒炎の弾丸を放つ魔物の死骸を食べていた。鋭い牙でその肉を喰らっている姿を見えたと同時に、左側のグリップの頭に付いている『自動連射装置』のボタンを押した。アサルトライフルから放たれる『爆発属性付与』のルーンが掘られた魔術弾が、アーマードワイバーンの顔面にぶつかり、爆発を起こしたと同時に戦闘が開始される。
「――」
エミューの鳴き声に近い叫び声を上げながら、攻撃された方へと顔を此方に向ける。だが、先ほどから連射で放たれる魔術弾によって、顔、胴体、翼、足に魔術弾がぶつかり、爆発の衝撃を受けて少しずつダメージを与えている。激痛からか叫び声を上げながら、必死に上空へと逃げようとする。しかし、逃がさない様にアーマードワイバーンに接近し、旋回しながら翼の付け根へと弾丸が当たる様に走らせる。激しい攻撃に溜まらず、上空へと逃げ出し、そのまま旧ダンジョンの方へと逃げ出した。すぐに左グリップのボタンを押し、連射を止めて追跡を開始する。上空からは戦闘ヘリがやって来てゴーレムダンジョンへと導く様に攻撃をしている。
『此方、サポート班。旧中国支部から、グレイブのサポートを行なうと報告を受けました。現在、逃避する標的に対し、ゴーレムダンジョンType-LGの上空に標的を誘き寄せ、ミサイルによる同時攻撃で最下層まで叩き落すと通達がありました。グレイブは、そのままダンジョン最下層まで向かって欲しいとのこと』
「此方グレイブ、了解した。旧中国支部の方々に、援護感謝すると伝えて置いてくれ」
『此方サポート班、了解しました。オーヴァー』
通信を切り、そのままダンジョンへと戻る為に加速させる。道中に魔物の気配はなく、安全にダンジョンまで到着した。それと同時に、ダンジョン総攻撃を受けながら速度が遅くなっている姿を確認しながらダンジョン内部へと突入する為、ネットフェンスを突き破り、ダンジョン内部へと突入する。このダンジョンは、ミルフィーユのような構造をしているのだが、階段については『らせん状』になっており、そのまま最下層まで続いている為、一気に最下層まで向かう事が出来る。そして、ダンジョンの中央には巨大な穴が開いており、そのまま最下層まで続いている。ダンジョン内に突入すると、やはりと言うべきかゴーレム種はおらず、獣系の魔物が出現していた。何匹かバイクで撥ねたが、速度を緩めることなくそのまま最下層へと走らせる。上空ではミサイルの総攻撃が開始されたのか、ミサイルによる爆発音が聞こえ、目視で奴が落下する光景を確認した。
(奴の首を撥ねるなら、この武装で十分だ。だが、もしリキッドゴーレムが出現した場合、流石にこの武装で仕留められるか――いや、熱して蒸発させて核ごと斬り裂けば良いか)
そんな事を考えながらダンジョン最下層まで向かう。到着するより先に、アーマードワイバーンが地面に落下する音が聞こえる。このまま逃がさない様にと、ヘリから爆弾が投下される。爆発音とともに爆発の熱を身体に感じながらも、更に加速しダンジョン最下層へと向かう。ダンジョン内部では、上空から放たれるマシンガンによって上空へと飛び立つ鳥型の魔物を駆除していく。最下層へと落下していく魔物たちを横目に観ながら、ようやく最下層についた。周りは壁で覆われており、地面は芝で覆われており、上空からの攻撃で、薬莢などの匂いが辺りに充満している。地面には弾丸で抉られた跡もあり、かなりの数の弾丸を消費したのだろうと推測した。
(最下層は、草原のような作りになっているのか。壁の至る所に弾痕があるようだが、何故かダンジョンコアが見当たらない。本来なら最下層にあるはずなのだが、あの大きな穴がある場所に埋まっていた可能性があるな。ダンジョンコアの痕跡の形から見て星型か。まさか、盗難でもあったのだろうか)
アーマードワイバーンが落下した箇所へ移動すると、ようやく現状を把握する事が出来た。ミサイルの爆撃によって背中の装甲は少し焦げているが、それでも血痕のようなものは見当たらない。ただ、翼の付け根付近が赤く腫れあがっているのを見て、飛行が不可能なのだろうと瞬時に判断した。眼は血走っており、怒りを表すかのように此方へと威嚇とも呼べる咆哮を放っている。
「やはり、あの程度では死なないか。首を切り落とすにしても、内側の柔らかい部分しか斬撃は通らないからな。仕方がない、確実に仕留めるために臓器の何割かは諦めてもらうか」
腰に差している双剣を引き抜き、鮮血のように紅い刀身を向けながら構える。この武器を一瞬見た瞬間に、此方を明確な敵だと判断したらしく、身体の向きを此方に向けて睨みつけている。弾丸では殺せないゴム質の皮膚は、斬撃でしか傷を与える事は出来ない。その為、当時はその事に気付く事が出来ずに多くの人間が死んで逝った。故に、人類にとって、アーマードワイバーンは復讐するべき相手であり、確実に殺さなければならない人類にとっての脅威なのだ。
「さて、どっちが勝つか。勝負と行こうか――なぁ、ドラゴン」
アーマードワイバーンの咆哮と共に、その首を斬り裂く為に駆ける。口から放たれる火炎弾を避けながら懐へと潜り込み、そのまま速度を緩めずに斬り裂く。胴体から血が噴き出し、予想だにしていない激しい痛みから暴れだした。鞭のように振られる尻尾を避けながら、コートからゴーグルを取り出してすぐに装着する。噴き出した血が地面かかっているのを見て、出血量から後何時間で死亡するか判断する。
「このまま放置すると、おおよそ二時間はかかるようだな。いや、に時間は長すぎるだろ。ウォーターゴーレムが現れる可能性があるな。仕方がない、両翼を切り落として首を落とすか」
暴れる相手の隙を突き、すぐにその背へと飛び乗る。鉄のように硬い鱗で覆われている翼の付け根に向って、魔力を流し込んだ双剣で斬り裂いた。バターを切るように簡単に斬り裂き、そこから血が噴き出して上半身にかかった。だが、それでも手を緩めずにもう片方の翼を切り落とす。本来ならこんな簡単に落とせないのだが、この武器のおかげで簡単に斬り裂ける。そんな有り得ない事に驚きと怒り、そして恐怖心からか俺を振り落とそうと暴れ出し、それでも落ちない為に背中を壁にぶつけようと走り出した。それを判断し、壁が近づいたところで、ぶつかる一歩手前で飛び降りる。
『――――!? ――――!!』
勢いよく身体を壁にぶつけた事で、軽く脳が揺れたのだろう。ふらつきながら倒れるが、腹部の激痛で藻掻き苦しんでいる。斬り裂いた個所から血が噴き出し、その血によって地面が濡れる中、立ち上がれない様にアキレス腱を斬り裂いた。魔物とは言え、ドラゴン系統の魔物は回復が特に早い。その為、確実に動きを封じるために、右手に持っている双剣を地面に突き刺し、腰に付けているポーチから麻痺薬の入った瓶を取り出し、そのまま左手に握る双剣の刀身へとかける。この麻痺瓶は、ドラゴンの『小型から中型』と『ゴーレム系統以外の魔物』にしか効かないが、確実に身体の自由を封じる毒である。左手に握る双剣を右手に持ち替え、そのままアーマードワイバーンの首へと投擲する。真っ直ぐ飛ぶ双剣は、標的の首に突き刺さり、そのまま動かなくなった。麻痺の効果が効いたらしく、痙攣しているような状態になったのを確認し、地面に突き刺している双剣を抜いた。
「よく効くだろう。お前ら魔物を殺すために、人類が開発した即効性の毒だ。身体の自由が奪われ、呼吸も出来なくなっていく。怖いか? だが、お前ら魔物は、そうやって人類を追い詰め、殺し、喰らい、滅ぼそうとする。御相子だ、諦めろ」
何もできない標的に近づきながら、無情な死の宣告をする。言葉を理解できているか知らないのだが眼は物語っており、その眼には恐怖心のようなモノが見えていた。だが、歩むのを止めずにジッと睨みつけながら話し続ける。
「アメリカ、ロシア、中国、オーストラリア、その他の国々に隕石が落ち、その後お前たち魔物が現れた。繁殖能力はなく、ただ人間を殺し喰らうだけ。特殊個体すら存在しない。お前らが現れた事で、人類は衰退の一歩となった。だから、俺たち人類も、同じようにお前らを殺し、喰らう。さぁ、終わりだ。てめぇの首、貰うぞ」
返答が帰ってくるわけでもなく、そのままアーマードワイバーンの首に突き刺さった剣を抜き取る。抜き取った箇所から大量の血が流れ落ちるのを見ながら、そのまま首を切り落とす。大量の血が流れ落ちるのを見ながら、コートの内ポケットから一枚の『タロットカード』と同じ形をした白紙のカードを取り出した。表面は白紙だが、裏面には『黒い表紙に『満月』と『狼』の絵が描かれている。そのカードをアーマードワイバーンの頭に置くと、死体は光の粒子となり原形が消えてカードの中に入っていく。よく見れば、先ほどまで大量に地面に零れていた血すら消えておりいる。そして、最後には白紙のカードには先ほど倒したアーマードワイバーンの絵が描かれている。
「やはり、このカードは現代科学では証明できない性能だ。血痕の後すら消えているが、このカードは人間は収納できないんだよな。ルーン魔術で可能なのだろうか」
そんなことを呟きながら、ダンジョンコアがあったとされる場所に目を向ける。やはり何者かに抉り取られたような痕跡があるだけで、ダンジョンコアは見当たらなかった。痕跡のある場所まで向かうと、コアの破片のようなものが落ちていた。
「此方、グレイブ。シルバー、旧韓国にあったダンジョンだが、コアが抜き取られた痕跡があった。人為的に取られた可能性がある」
『此方、シルバー。グレイブ、その情報だが、すぐに裏が取れた。どうやら、旧韓国支部の連中が、ダンジョンコアを回収し、新たに新設される海上都市に運ぶ予定だった。そこで、無理やり外したことで今回の事件が起きたようだ。盗賊と思われる者たちは、旧韓国支部の者たちだった』
「そうか、確かにこれは普通に外すのは無理だな。どう見ても星型のダンジョンコアのようだし、専用の抜き取り器具で星型は見た事が無い。突然変異したんだろうな」
一度バイクのある方へと向かい、備え付けられている透明の円形の入れ物を取り出した。これは、魔石等を回収するための物である。その入れ物の蓋を取り、その中にダンジョンコアの欠片を入れて行く。その間、ダンジョンに潜入しに来た旧北朝鮮支部の狩人たちがやって来た。彼らは俺に敬礼をすると、そのままダンジョン内で死んだ魔物たちを回収していく。旧は付いているが、韓国も北朝鮮も、そして中国も、本来なら国のトップが早々に決まるはずだった。だが、中国に落ちた巨大な隕石のせいで国の中枢は破壊され、その衝撃波で北朝鮮も韓国も凄まじい被害を出したのだ。
「久しぶりですね、グレイブ。変わらず元気そうで安心しました」
此方に話しかける狩人に、俺は頷いた。ボサボサの黒髪に淡い茶色い瞳、頬には切り傷がある。旧中国支部のリーダーであり、日本語で話してくれたこの男性は『王・劉林』さんと言う。ちなみに、狩人にはお互いにコードネームが存在する。俺の場合は『グレイブ』で、王さんのコードネームは『グリムリーパー』である。彼は大鎌を使った戦闘を得意とし、大鎌で多くの魔物の命を刈り取った事から死神と呼ばれるようになった。
「久しぶりですね、グリムリーパー。えぇ、睡眠不足ではありますが、元気ですよ。グリムリーパーも元気そうでよかった。俺たち狩人は『人命救助がメイン』とは言え、狩人の死亡率も高い。まぁ、その原因の大半は、新たに発見したダンジョンへの潜入ですが」
「そうですね。冒険者ギルドの方も同じくらいの死者数でしたね。新規ダンジョンの調査は、本当に骨が折れる。まぁ、だからこそ我々のようなトップがいるのですが」
ダンジョンコアのあった場所を観ながら言う彼に、俺は「確かに、そうですね」と言う。先ほど回収したダンジョンコアの欠片を全て入れ終えた容器の蓋を締め、彼の方へと身体の向きを変えた。
「確かにそうですね。それにしても、このダンジョンも終わりなんですね」
「えぇ、ダンジョンコアの回収をされましたからね。この国の住人も生存者が、もう我々が保護している数十名だけになってしまいましたから」
悲しそうに言う彼に、あの日の事が脳裏に過った。隕石落下直後に出現した魔物の大軍。彼奴らとの戦いで、人類はかなり追い詰められてしまった。現在、生存している人間の数を考えてみても、殆んどの国が消えてしまった。ジュラ紀を氷河期へと導くきっかけとなった隕石のように、多くの国へと隕石は落ちて多大な被害を及ぼした。核弾頭などを打つ暇などなく、流星群のように多くの場所に落ちたのだ。
「島国は奇跡的に無事でしたが、それでも津波などで被害は出ましたからね。あの隕石のせいで、多くの命が消え、魔物たちとの戦争で更に命が潰えた。我々は、どんなことがあろうと生き残らねばならない。グリムリーパー、何かあればいつでも呼んでくれ。必ず助けに行く」
「ありがとう、友よ。だが、それは俺もだ。狩人同盟は、裏切りは許されない。我々は、共に苦難に立ち向かい、あらゆる敵を駆逐する。多くの狩人たちと共に生き残ろう。確か、アメリカの方に居る狩人が、こっちに来るらしいんだ。なんでも、此方の地区のダンジョンは俊敏な獣系の魔物が多い事で、戦闘に慣れさせたいらしい。我々も、防御力の高い魔物が多いアメリカのダンジョンに派遣するのでね」
「ほぉ、そうなのか。おれが所有しているダンジョンなんて、俺だけしか攻略出来ないとか言う理由で、強制的に任せられてるし。さっさとドラゴン狩れるレベルまで上がってくんないかねぇ。たまには楽したい」
切実な気持ちを吐露すると、彼は乾いた声で笑いながら遠い目をしていた。それはそうだ。俺が所持しているダンジョンは『ドラゴン種しかでない難易度張り高なダンジョン』なのだ。そのせいか、全ての狩人が来ようとしないのだ。そのくせ、国の連中からはドラゴンの素材を催促されるのだ。素材を流すの止めようかと本気で悩んだ。
「さて、そろそろ俺は撤退させてもらう。グリムリーパー、また会おう」
「あぁ、また会おう。グレイブ、今度こそあの竜を共に狩ろう」
「そうだな。今度こそ、彼奴を殺して見せる」
互いに握手を交わし、狩人の別れの挨拶を告げる。
「「人類の明日の為に」」
バイクに乗り、回収した欠片をバイクの収納して走り出す。ダンジョンを抜け出すと、俺を迎えに来たヘリが止まっていた。ヘリの外ではニルヴァーナ部隊が立っていた。俺はバイクから降り、手で押しながら向かうと部下たちが敬礼をする。皆の前に到着すると、部下たちがバイクを代わりにヘリの中へと入れる。そして、青髪の青年が此方へと資料を持ってやって来た。彼はニルヴァーナ部隊の副リーダーである『サイファー・アグリゲス』である。
「隊長、此方が今回の報告書になります」
「ありがとう、サイファー。やはり、生存者は――」
「他の狩人たちからの報告ですが、このダンジョンの近くに隠れた集落が点々と存在していたようです。今回救出した者たちは、その集落の住人らしいですが、他にも点々とあった集落は全滅しておりました。生存者は、救出した20名だけです」
悔しそうに告げるサイファーに、彼の肩に手を乗せ「詳しくはヘリの中で」と告げ、そのままヘリの中へと入る。俺の後について、部下たちは全員ヘリの中へと乗ると日本支部へと帰還する。ヘリの窓から見える巨大な隕石が大地に突き刺さった光景を観て、俺は手に持っている書類を強く握りしめた。これが、この世界なのだ。人類は本当の意味で『生存の危機』に落ちいっている。俺たちは、この世界で戦い、この世界で生き残っている。
「これが、この世界の現状か」
ヘリの中で呟きながら、無線から流れる各部隊の情報を危機ながら、俺は日本支部へと帰還するのであった。




