0話 プロローグ 前編
どうも、続きを書くか不明な小説です。
ただ、読んでみて続きが読みたいと思えたなら、今書いている方が終わったら書くかもしれません。
そんな気楽な気持ちで、読んでもらえれば幸いです。
警報音が鳴り響く朝焼けに、一人の青年がヘリポートの入り口付近で空を見上げながら立っている。寝起きなのか黒髪はボサボサで、狼のような目つきは『とても眠そう』である。完全に寝起きのようで欠伸をしている。薄い灰色のワイシャツに黒のズボンを着ており、青年が履いている黒革の靴の履き口部に裾が届く程の長さはある灰色のコートを羽織っている。コートの背には『竜の頭部』の横顔のみが絵描かれており、腰辺りに黒革のベルトが巻かれており、ベルトには拳銃とマガジンを入れる黒革のポーチが付いている。右手には長方形の黒革のアタッシュケースを持っており、表面には竜の絵が描かれており、厳重に封印しているのかダイヤル式の南京錠がついていた。ゆっくりと此方へと向かって来るヘリを待ちながら、青年は左手に握る通信端末を操作していた。
「旧韓国と旧北朝鮮の国境付近での生存者救助か。旧中国に落ちた『あの巨大な隕石』の落下の衝撃波で、街どころか山すらも吹き飛んで瓦礫の惨状だった。それどころか、周辺の国が甚大な被害の後にやって来た、隕石の流星群がその他の国に落下したんだろ。ノストラダムスの大予言が遅れてやって来たんじゃないかって、今下町ではその話題で持ちきりらしいぞ」
「馬鹿か、ノストラダムスの大予言なら、もう人類は滅んでるだろうが。まぁ、どちらにしても、この現状の中で生き残りがいるだけでも恩の字だな。生き残った軍隊が護衛しているようだが、今から出立して流石に間に合うか……いや、間に合わせるんだったな。隕石のせいで、殆んどの国の機能が死んでいるとは言え、何とか今を生き残れている。こうして生存者がいるってだけでも嬉しい限りだ」
「そうだな。今の時代、生存者がいるだけでも有難いもんな。このご時世、魔物が増えたことで生き残っている人間が殺されまくってる。生殖機能を持たない魔物にとって、俺たちは捕食対象ではなく殺すべき対象なのだろうさ。俺たちは、生き残るためにも魔物を殺しまくるだけだ」
真剣な表情で語る兵士たちは、胸ポケットから通信端末を取り出した。そして、何かを確認するかのように端末を弄ると、溜息を溢すと胸ポケットに戻し話し始めた。
「まだ、他の国のトップが決まってないらしい。いい加減に『旧呼び』は嫌なんだがな。トップが決まれば、ちゃんとした国呼びが出来るだが。それもこれも、隕石落下に伴う事が原因なんだがな」
「それは同感だな。それ程、人類が追い詰められてるって事だろ。俺たちだって運よく首相や天皇様が生存されていたから助かったようなものだからな。各都市の最重要都市に隕石が落ちたことで、殆んどのトップが亡くなったんだからな」
「そうだな。よし、湿っぽい話はここまでだ。そうだ、この前だが美味い酒と料理を出す店を見つけたんだがよ、この仕事の後一杯付き合えよ。ついでに、狩人の兄ちゃんも誘って――」
近くで兵士らしき者の話し声を聞いてか、青年は通信端末の操作を一時止めた。先ほどの言葉を聞いたからか、溜め息と欠伸が同時に出た。面倒な依頼だからではなく、眠たさと疲れが一気に出たような表情をしており、話を盗み聞ぎしながらも通信端末を再度操作し始める。メールを打っているのか、何回か操作をすると通信端末をコートの内ポケットにしまった。その後、ガムを取り出し口の中に居れようとしたのだが、青年はすぐにそれを辞め、近くにある自販機へと向かい缶コーヒーを買い、缶の蓋を開けると珈琲を飲む。
「あぁ、マジで眠い。朝っぱらから『狩人通信』で叩き起こされたと思えば、俺への直通の指名依頼が来るとか。4時間前に戻って寝てたっつうのに、今早朝の5時だぞ。馬鹿じゃないのか、上の奴ら。まったく、今度は何をしでかしたんだ――」
眠たさがまだ残っているのか、文句を言いながら口に手を当てて大きな欠伸をした。すると、ヘリの音が近づいて来る事に気が付いた。青年は呑み終えた缶珈琲を缶入れに捨てると、音のする方へと目を向けた。徐々に此方に近づくのが観え、青年はジッとヘリを見つめている。数分後には、此方へと無事にヘリポートの真上に到着すると、そのままゆっくりと降下し始めた。上空からゆっくりと降りて来る事で、その姿は『CH-47』と呼ばれる軍事輸送用のヘリであることが分かる。ゆっくりと降下する事で起こるヘリの風に、青年の来ているコートの裾が激しく揺れる。ヘリが着陸すると同時に青年は歩き出し、ヘリの中へと入って行く。ヘリの中には運転手と数十名の武装兵がおり、一人の兵士が青年の元へと駆け出すと敬礼をし、すぐにインカムを手渡した。青年はインカムを受け取りすぐに付けると、そのままインカムの通信先へと話しかける。
「此方、グレイブ。情報斑、今回の依頼についての説明と現場の現状況についての報告を頼む」
『此方、シルバー。今回は『生存者の保護』の依頼を頼みたい。先ほど『生存者を旧韓国支部まで無事に護衛した』と報告を受けた。しかし、その道中で野盗と遭遇してしまい、そのまま交戦となった。現在は、旧韓国ソウル支部を守りながら野盗との戦闘を行なっていると報告が来ている。また、戦闘の音か死体から出ている血の匂いに連れられてか、野盗の後方から魔物の大軍で行進し、そのまま野盗を襲撃している。現在、野盗側は被害甚大であり、支部側はまだ被害が出ていない。だが、このまま野党が全滅すれば、次は支部を襲うのは明確だ。直ちに、旧韓国ソウル支部へ向かい救助活動をお願いする』
インカムを通して情報斑に声をかけると、それに答えるように男性の声が応える。声からして二十代前半の青年の声なのだが、飴玉を舐めているのか『カラ、コロ』と言う小さな音が聞こえてくる。小声ではあるが『またか』と青年は呟き、溜め息を溢した後に確認をする。
「依頼と現状の事は分かった。依頼は、確かに受けよう。それよりもだ、また通信越しで飴舐めてるだろ。通話中は控えろって上司に言われてなかったか」
『ハッハッハッハ、そうだったかな。まぁ、眠気覚ましだ、気にするな』
「まったく、通話中に飴を舐めてる奴がいるか――って、お前が居たか」
インカム越しから『ハッハッハ』と偉そうな笑い声を聞きながらヘリの中へと入り、ヘリの操縦席に居る操縦者に離陸指示を出し、そのまま目的地へと向けてヘリは離陸し動き出した。ヘリの中では数十名の兵士が左右の席に座り、武器の手入れをしながら談笑をしている。また、近くには車輪が固定された一台のバイクが置いている。後部にはサブマシンガンやアサルトライフルなどの遠、中距離用武器や、コンバットナイフ等の近接用の武器が納められた収納ボックスが左右に取り付けられている。
(用意周到と言うか、俺の単独行動を前提に用意されている様だな)
青年は嫌な表情をしながらも席に座り、手に持っているアタッシュケースを開ける。そこには『赤黒い籠手』と『赤黒い鞘に納められた双剣』が入っている。まずは、籠手の方を取り出し、傷は無いかを確認してから装着する。腕にフィットする感覚だが、生きているのか赤黒い外装が脈動するかのように動いている様に見える。そして、次に双剣を取り出し、鞘から刀身を抜き出し刃こぼれがないか確認する。ヘリの窓から太陽の光によって刀身が鮮血のように紅く輝いている。刃こぼれは無い事を確認後、鞘に戻し腰に差した。そして、コートの内側に付けているガンホルダーに下げている二丁の拳銃を取り出す。元々は一丁だけで十分なのだが、予備としてもう一丁を携帯している。両方とも『コルトパイソン357マグナム』であり、狩人に支給されている拳銃である。人型や昆虫型、植物型の魔物を仕留めるために使用しており、支給されている弾丸にはルーン文字が刻まれている。その弾丸を装填しながら、青年はシルバーと呼ぶ男へ質問を投げる。
「んで、野盗だったか。早朝に叩き起こされたと思えば、狩人の俺が駆り出される必要があるか? まぁ、旧韓国ソウル支部の事だが、確か近く――と言うほど近くではないか。冒険者ギルドから『ダンジョンから魔物が溢れ出た』と情報を受けている。だが、あそこの担当は旧韓国ソウル支部の管轄だったはずだ。俺たち日本支部が介入する必要はないと思うのだが」
『あぁ、確かダンジョン内に魔物が溢れ出ている情報は受けている。それに、冒険者や狩人からは、旧韓国及び旧北朝鮮支部関連の依頼を嫌っている事もね。確か、あそこはゴーレム種の魔物しかおらず、戦闘が困難であると言う理由だったな。最近になって、新武器の開発によってゴーレム討伐を容易になる聞いている。ただ、今回は救助がメインであり、魔物との戦闘は無理に行わなくて良い。今回は生存者の救助の他、支部の連中は全員撤退させると上からの指示が出ているからな。本当なら君ではなく別の狩人に対応してもらう予定だったが、支部側で応戦している魔物の中に問題があってね。君以外はまったく経験がない事もあり、現状対応可能な君を叩き起こしたと言うわけだ』
「なるほど、つまりドラゴン関係か。一般の狩人では対応が難しいのは確かだが、少しは力を付けてもらいたいものだ。現地に常駐している狩人から野盗を襲撃しているドラゴンについて、見た目などの情報が欲しい。情報次第では、救助と討伐の班編成を再度割り振らねばならないからな」
真剣な表情になる青年に対し、近くにいる武装兵は不安な表情をしながら無言で聞いている。この場にいる武装兵たちは、一度もドラゴン種との戦闘をした事が無いのだとすぐに分かる。不安になるのは当然であるが、今回は救助がメインであるため、リーダーである青年の指示を待っている状態であった。
『情報を聞いた限りでは、ワイバーン系統らしい。通信衛星上から分かる限りでは、1匹だけのようだ。魔物討伐後、君が持っている保管カードに収納し、此方の研究機関に提出して欲しい。現在、各国の生き残った者たちと協力している水上都市の建設に、どうやらドラゴンの素材が必要らしいのでね』
「ワイバーン種か。彼奴ら、群れになって襲って来るから面倒くさいんだよな。まぁ、別に構わないが。素材関連は其方に提供するが、奴らの肉は此方が貰うぞ。冒険者の知り合いにワイバーン種の肉を食わせる約束をしているからな」
『まぁ、確かに食料確保に関してはまだ備蓄もあるから問題ないだろう。報酬に関しては、それで構わない。別途、口座にお金は振り込んでおく。では、グレイブ。君の健闘を祈る。オーヴァー』
シルバーとの連絡が勝手に切れると、武装兵たちは銃器を手に握りながら青年をジッと見つめる。指示を待っている状態であることは分かるのだが、相手はドラゴンを含む魔物と野盗であり、今の部隊ではドラゴンの討伐は不可能であった。その為、どう行動してもらうべきか考え、そして結論を導き出した。
「彼奴、俺の返答を待たずに切ったな。まぁ、別に良いが――さて、今回の作戦について説明する。ニルヴァーナ部隊はこのまま旧韓国ソウル支部に向かい、支部の支援と野盗を潰せ。野盗については、指揮官を見つけ次第確保し、情報を吐かせろ。その後は、生存者を保護後し、そのまま日本支部へと送れ。旧韓国は隕石のエネルギーの影響で、魔物の量も増加している。現状、安全地帯は近くても日本支部しかないからな。野盗の処理については、お前たちに任せる」
「「「了解」」」
「到着次第、俺はこのままワイバーンを追う。魔物を討伐後、旧韓国ソウル支部に戻り、そのまま日本支部に戻る。何か質問はあるか」
武装兵たちは何も言わず、銃器を縦に構え見つめる。質問は無い事を確認したのか、最後に武装した青年は彼らに檄を飛ばす。これは、狩人ならば必ず行われる――言わば、お決まりの宣言。狩人としての戦いは常に死と隣り合わせであり、生き残った人間を安全な地区まで守ることも仕事である。だからこそ、青年 警報音が鳴り響く朝焼けに、一人の青年がヘリポートの入り口付近で空を見上げながら立っている。寝起きなのか黒髪はボサボサで、狼のような目つきは『とても眠そう』である。完全に寝起きのようで欠伸をしている。薄い灰色のワイシャツに黒のズボンを着ており、青年が履いている黒革の靴の履き口部に裾が届く程の長さはある灰色のコートを羽織っている。コートの背には『竜の頭部』の横顔のみが絵描かれており、腰辺りに黒革のベルトが巻かれており、ベルトには拳銃とマガジンを入れる黒革のポーチが付いている。右手には長方形の黒革のアタッシュケースを持っており、表面には竜の絵が描かれており、厳重に封印しているのかダイヤル式の南京錠がついていた。ゆっくりと此方へと向かって来るヘリを待ちながら、青年は左手に握る通信端末を操作していた。
「旧韓国と旧北朝鮮の国境付近での生存者救助か。旧中国に落ちた『あの巨大な隕石』の落下の衝撃波で、街どころか山すらも吹き飛んで瓦礫の惨状だった。それどころか、周辺の国が甚大な被害の後にやって来た、隕石の流星群がその他の国に落下したんだろ。ノストラダムスの大予言が遅れてやって来たんじゃないかって、今下町ではその話題で持ちきりらしいぞ」
「馬鹿か、ノストラダムスの大予言なら、もう人類は滅んでるだろうが。まぁ、どちらにしても、この現状の中で生き残りがいるだけでも恩の字だな。生き残った軍隊が護衛しているようだが、今から出立して流石に間に合うか……いや、間に合わせるんだったな。隕石のせいで、殆んどの国の機能が死んでいるとは言え、何とか今を生き残れている。こうして生存者がいるってだけでも嬉しい限りだ」
「そうだな。今の時代、生存者がいるだけでも有難いもんな。このご時世、魔物が増えたことで生き残っている人間が殺されまくってる。生殖機能を持たない魔物にとって、俺たちは捕食対象ではなく殺すべき対象なのだろうさ。俺たちは、生き残るためにも魔物を殺しまくるだけだ」
真剣な表情で語る兵士たちは、胸ポケットから通信端末を取り出した。そして、何かを確認するかのように端末を弄ると、溜息を溢すと胸ポケットに戻し話し始めた。
「まだ、他の国のトップが決まってないらしい。いい加減に『旧呼び』は嫌なんだがな。トップが決まれば、ちゃんとした国呼びが出来るだが。それもこれも、隕石落下に伴う事が原因なんだがな」
「それは同感だな。それ程、人類が追い詰められてるって事だろ。俺たちだって運よく首相や天皇様が生存されていたから助かったようなものだからな。各都市の最重要都市に隕石が落ちたことで、殆んどのトップが亡くなったんだからな」
「そうだな。よし、湿っぽい話はここまでだ。そうだ、この前だが美味い酒と料理を出す店を見つけたんだがよ、この仕事の後一杯付き合えよ。ついでに、狩人の兄ちゃんも誘って――」
近くで兵士らしき者の話し声を聞いてか、青年は通信端末の操作を一時止めた。先ほどの言葉を聞いたからか、溜め息と欠伸が同時に出た。面倒な依頼だからではなく、眠たさと疲れが一気に出たような表情をしており、話を盗み聞ぎしながらも通信端末を再度操作し始める。メールを打っているのか、何回か操作をすると通信端末をコートの内ポケットにしまった。その後、ガムを取り出し口の中に居れようとしたのだが、青年はすぐにそれを辞め、近くにある自販機へと向かい缶コーヒーを買い、缶の蓋を開けると珈琲を飲む。
「あぁ、マジで眠い。朝っぱらから『狩人通信』で叩き起こされたと思えば、俺への直通の指名依頼が来るとか。4時間前に戻って寝てたっつうのに、今早朝の5時だぞ。馬鹿じゃないのか、上の奴ら。まったく、今度は何をしでかしたんだ――」
眠たさがまだ残っているのか、文句を言いながら口に手を当てて大きな欠伸をした。すると、ヘリの音が近づいて来る事に気が付いた。青年は呑み終えた缶珈琲を缶入れに捨てると、音のする方へと目を向けた。徐々に此方に近づくのが観え、青年はジッとヘリを見つめている。数分後には、此方へと無事にヘリポートの真上に到着すると、そのままゆっくりと降下し始めた。上空からゆっくりと降りて来る事で、その姿は『CH-47』と呼ばれる軍事輸送用のヘリであることが分かる。ゆっくりと降下する事で起こるヘリの風に、青年の来ているコートの裾が激しく揺れる。ヘリが着陸すると同時に青年は歩き出し、ヘリの中へと入って行く。ヘリの中には運転手と数十名の武装兵がおり、一人の兵士が青年の元へと駆け出すと敬礼をし、すぐにインカムを手渡した。青年はインカムを受け取りすぐに付けると、そのままインカムの通信先へと話しかける。
「此方、グレイブ。情報斑、今回の依頼についての説明と現場の現状況についての報告を頼む」
『此方、シルバー。今回は『生存者の保護』の依頼を頼みたい。先ほど『生存者を旧韓国支部まで無事に護衛した』と報告を受けた。しかし、その道中で野盗と遭遇してしまい、そのまま交戦となった。現在は、旧韓国ソウル支部を守りながら野盗との戦闘を行なっていると報告が来ている。また、戦闘の音か死体から出ている血の匂いに連れられてか、野盗の後方から魔物の大軍で行進し、そのまま野盗を襲撃している。現在、野盗側は被害甚大であり、支部側はまだ被害が出ていない。だが、このまま野党が全滅すれば、次は支部を襲うのは明確だ。直ちに、旧韓国ソウル支部へ向かい救助活動をお願いする』
インカムを通して情報斑に声をかけると、それに答えるように男性の声が応える。声からして二十代前半の青年の声なのだが、飴玉を舐めているのか『カラ、コロ』と言う小さな音が聞こえてくる。小声ではあるが『またか』と青年は呟き、溜め息を溢した後に確認をする。
「依頼と現状の事は分かった。依頼は、確かに受けよう。それよりもだ、また通信越しで飴舐めてるだろ。通話中は控えろって上司に言われてなかったか」
『ハッハッハッハ、そうだったかな。まぁ、眠気覚ましだ、気にするな』
「まったく、通話中に飴を舐めてる奴がいるか――って、お前が居たか」
インカム越しから『ハッハッハ』と偉そうな笑い声を聞きながらヘリの中へと入り、ヘリの操縦席に居る操縦者に離陸指示を出し、そのまま目的地へと向けてヘリは離陸し動き出した。ヘリの中では数十名の兵士が左右の席に座り、武器の手入れをしながら談笑をしている。また、近くには車輪が固定された一台のバイクが置いている。後部にはサブマシンガンやアサルトライフルなどの遠、中距離用武器や、コンバットナイフ等の近接用の武器が納められた収納ボックスが左右に取り付けられている。
(用意周到と言うか、俺の単独行動を前提に用意されている様だな)
青年は嫌な表情をしながらも席に座り、手に持っているアタッシュケースを開ける。そこには『赤黒い籠手』と『赤黒い鞘に納められた双剣』が入っている。まずは、籠手の方を取り出し、傷は無いかを確認してから装着する。腕にフィットする感覚だが、生きているのか赤黒い外装が脈動するかのように動いている様に見える。そして、次に双剣を取り出し、鞘から刀身を抜き出し刃こぼれがないか確認する。ヘリの窓から太陽の光によって刀身が鮮血のように紅く輝いている。刃こぼれは無い事を確認後、鞘に戻し腰に差した。そして、コートの内側に付けているガンホルダーに下げている二丁の拳銃を取り出す。元々は一丁だけで十分なのだが、予備としてもう一丁を携帯している。両方とも『コルトパイソン357マグナム』であり、狩人に支給されている拳銃である。人型や昆虫型、植物型の魔物を仕留めるために使用しており、支給されている弾丸にはルーン文字が刻まれている。その弾丸を装填しながら、青年はシルバーと呼ぶ男へ質問を投げる。
「んで、野盗だったか。早朝に叩き起こされたと思えば、狩人の俺が駆り出される必要があるか? まぁ、旧韓国ソウル支部の事だが、確か近く――と言うほど近くではないか。冒険者ギルドから『ダンジョンから魔物が溢れ出た』と情報を受けている。だが、あそこの担当は旧韓国ソウル支部の管轄だったはずだ。俺たち日本支部が介入する必要はないと思うのだが」
『あぁ、確かダンジョン内に魔物が溢れ出ている情報は受けている。それに、冒険者や狩人からは、旧韓国及び旧北朝鮮支部関連の依頼を嫌っている事もね。確か、あそこはゴーレム種の魔物しかおらず、戦闘が困難であると言う理由だったな。最近になって、新武器の開発によってゴーレム討伐を容易になる聞いている。ただ、今回は救助がメインであり、魔物との戦闘は無理に行わなくて良い。今回は生存者の救助の他、支部の連中は全員撤退させると上からの指示が出ているからな。本当なら君ではなく別の狩人に対応してもらう予定だったが、支部側で応戦している魔物の中に問題があってね。君以外はまったく経験がない事もあり、現状対応可能な君を叩き起こしたと言うわけだ』
「なるほど、つまりドラゴン関係か。一般の狩人では対応が難しいのは確かだが、少しは力を付けてもらいたいものだ。現地に常駐している狩人から野盗を襲撃しているドラゴンについて、見た目などの情報が欲しい。情報次第では、救助と討伐の班編成を再度割り振らねばならないからな」
真剣な表情になる青年に対し、近くにいる武装兵は不安な表情をしながら無言で聞いている。この場にいる武装兵たちは、一度もドラゴン種との戦闘をした事が無いのだとすぐに分かる。不安になるのは当然であるが、今回は救助がメインであるため、リーダーである青年の指示を待っている状態であった。
『情報を聞いた限りでは、ワイバーン系統らしい。通信衛星上から分かる限りでは、1匹だけのようだ。魔物討伐後、君が持っている保管カードに収納し、此方の研究機関に提出して欲しい。現在、各国の生き残った者たちと協力している水上都市の建設に、どうやらドラゴンの素材が必要らしいのでね』
「ワイバーン種か。彼奴ら、群れになって襲って来るから面倒くさいんだよな。まぁ、別に構わないが。素材関連は其方に提供するが、奴らの肉は此方が貰うぞ。冒険者の知り合いにワイバーン種の肉を食わせる約束をしているからな」
『まぁ、確かに食料確保に関してはまだ備蓄もあるから問題ないだろう。報酬に関しては、それで構わない。別途、口座にお金は振り込んでおく。では、グレイブ。君の健闘を祈る。オーヴァー』
シルバーとの連絡が勝手に切れると、武装兵たちは銃器を手に握りながら青年をジッと見つめる。指示を待っている状態であることは分かるのだが、相手はドラゴンを含む魔物と野盗であり、今の部隊ではドラゴンの討伐は不可能であった。その為、どう行動してもらうべきか考え、そして結論を導き出した。
「彼奴、俺の返答を待たずに切ったな。まぁ、別に良いが――さて、今回の作戦について説明する。ニルヴァーナ部隊はこのまま旧韓国ソウル支部に向かい、支部の支援と野盗を潰せ。野盗については、指揮官を見つけ次第確保し、情報を吐かせろ。その後は、生存者を保護後し、そのまま日本支部へと送れ。旧韓国は隕石のエネルギーの影響で、魔物の量も増加している。現状、安全地帯は近くても日本支部しかないからな。野盗の処理については、お前たちに任せる」
「「「了解」」」
「到着次第、俺はこのままワイバーンを追う。魔物を討伐後、旧韓国ソウル支部に戻り、そのまま日本支部に戻る。何か質問はあるか」
武装兵たちは何も言わず、銃器を縦に構え見つめる。質問は無い事を確認したのか、最後に武装した青年は彼らに檄を飛ばす。これは、狩人ならば必ず行われる――言わば、お決まりの宣言。狩人としての戦いは常に死と隣り合わせであり、生き残った人間を安全な地区まで守ることも仕事である。だからこそ、青年はいつものように仲間たちに告げる。
「よし、無いようだな。これより作戦を開始する。死ぬことは絶対に許さん!! 全員、生きて帰るぞ」
「「「了解」」」
先ほどまで不安だった表情は消え、やる気に満ちた表情へと変わる。それとほぼ同時に、ヘリを操縦する者から「5分後に目的地に到着する」と報告が入る。生存者と魔物の討伐を行なう為か、青年は両腕に装着した籠手と腰に差した双剣を確認すると「さて、今回の生存者は何人生き残れるか」と呟き、目を閉じるのであった。はいつものように仲間たちに告げる。
「よし、無いようだな。これより作戦を開始する。死ぬことは絶対に許さん!! 全員、生きて帰るぞ」
「「「了解」」」
先ほどまで不安だった表情は消え、やる気に満ちた表情へと変わる。それとほぼ同時に、ヘリを操縦する者から「5分後に目的地に到着する」と報告が入る。生存者と魔物の討伐を行なう為か、青年は両腕に装着した籠手と腰に差した双剣を確認すると「さて、今回の生存者は何人生き残れるか」と呟き、目を閉じるのであった。