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斎月千早の受難なる日常5

  プロローグ


 ウラン人形事件は、似非オカルト配信者の仕組んだ事で、幕を降ろした。まあ、本人は『呪物人形』の障りで、死ぬに死ねない状態で延々と苦しんでいる。その姿は、見るも耐えないものとなっているらしい。『御神体人形』を手にした女も、人形が封印していた疫病を、障りとして身に受けて、見るも無惨な姿で苦しんでいる。二人は、一円兄ちゃんが診ているというが。時には、この世の裁きを受ける方がマシだと思える程の苦しみを受ける。二人は、苦しみの中、何を思っているのだろうか? 

そんなことを考えても、私には関係の無いコト。

それより、教授から、ゼミ生のフィールドワークの引率でもしろと言われてしまったこと。

私は、ずっと一人で行っていたけど。私が一緒だと、ゼミ生は困ると思うけど。教授は、なんで? と思ったが、ゼミ生が頼み込んだとか。仕方がないので、同行する。一応、アドバイスはするが、それ以上は知らない。 

 ゼミ生・木瓜さんと清水さん。テーマは『ひなびた温泉』らしい。古い温泉地には、廃業になった旅館や店がある。廃墟とかもあるので、それが心霊スポット化している。そのあたりを調べるとか。

私が学生の時は、公共交通しか使わなかったが、今回は、細川君に車を出して貰うという。宿代とガソリン代を出すと言ったら、OKしてくれた。

二人が、とある寂れた温泉地を選んだのは、観光ガイドやサイトに一切の記事が無かったからだという。なんとか見つけた情報によると、古代から知る人ぞ知る湯治場らしい。


 その温泉地がある場所は、日本のへそに近い山深い土地。私が調べたところ、平安の頃には湯治場になっていた。それに、バブル期には、リゾート開発の案があったが、案が形になる前に、崩壊したので、温泉地は静かなまま忘れ去られた。

選んだ彼女達には、頑張ってもらい、私はゆっくり、論文でも書く事に。

ただ、何も起こらない事を願うが。




    エピソード1  地図から消えた村



 大通りから、山間部の狭い一本道。消えかかっている中央線と、錆びたガードレール。左右は林。開けたと思ったら、田畑と小さな集落。すれ違う車は、ほぼ無い。そんな道を小一時間走っていると、かすかに硫黄臭がして、〇〇温泉という古びた看板が見えた。片側の林が開け、下方向に町が見えた。

都内から数時間、知る人ぞ知る温泉町に着いた。

秘湯系の情報サイトにすら、出ていない。私も、歴史物の書物から記述をなんとか見つけた。大手の地図アプリに、かろうじて表示されているだけ。彼女達は、それを偶然見つけて、色々調べて見たけれど情報がまったくなかったので、逆に興味が湧いたから調査に来たというところ。自分達で調べて発表すれば―と言ったところ。

 宿に荷物を置くと、彼女達は、さっそく調査にでかけた。

二泊3日の予定。私は、その間は、論文と記事を書き、細川君は温泉を楽しむらしい。

少し休んだ後、細川君は外湯巡りに出掛けた。

私は、毎回恒例としている、土地神様へ挨拶周り。温泉には詳しくないけれど、温泉地というのは、土地の力が強いので癒やしになる。それに、土地神や氏神に対する信仰が残っているので、神様達の気配と力を感じられる。彼女達が、ソコに気付くかが問題だけど。

その先が、秋葉ゼミにとって重要なコトなのだから。

 寂れている。シャッター商店街には、朽ちかけた看板があり、昭和を思い出させる。湯治場とはいえ、無名。だけど、それなりに固定客が年に数回とか、定期的に来ているのだろう。湯治場ならではの、信仰があって、今もなお祈願されている。

現代医学の考え方とは、まったく別の考え。温泉と信仰が、湯治の一つの考え方かもしれない。そのコトに、彼女達は気付くコトが出来るのか。

そんなコトを考えながら、歩く。

温泉は、地脈や水脈と深く関係していて、いわば『脈』だ。それに、この辺りは火山帯の一部。地の力や水の力が流れ込んできたり、溢れて来たりして、何処かへと流れていく地点。

ーそれで、また来たくなる温泉なのか。

心地の良い癒やしの気が漂っている。護られている土地ならではの、モノだ。自然と癒やされる。漂う気を探りながら、歩いていると

『ーワスレラレタ。ーダレモイナイ。ーカエリタイ』

気の中を漂う小さな囁きが聴こえた。気配は薄いが、強い思いが籠もっている。気配からして、ここの土地のモノでは無い。何処からか、流れてきたのか? その気配を探ってみたけど、掴めなかった。ここは、歴史のある温泉だ。それなりのモノが在っても不思議では無いけれど。そういうことは、よくあるコトなので、その時は、そのまま流しておいた。

 

 これといって何事も無く、彼女達のフィールドワークを終えた。私が、同行する必要があったのかと思うが。結果は、教授が判断するだろうし、指示をするはず。

そういうことで、帰路についた。



 その帰り道に、異変は起こった。

両側が林の道が続いているのは、行きの変わっていない。だけど、車は山奥へと進んでいる。この様な道は、来る時には無かった。カーナビには『正しい』道が表示されているが、現在地のアイコンが動いていない。来る道は、カーブが多かったが、今、走っている道は、真っ直ぐな道。路面は廃道の様に荒れ果てている。

ーああ、またか。

私が、内心思ったと同時に

「細川君、道間違えているみたいだよ」

と、清水さんが言った。

「こんな道、無かったよ。なんだか、山の中に入っているみたいだし」

木瓜さんも続く。

細川君は、チラッと私を見て、カーナビを見る。

「斎月先輩、どう思います?」

細川君は、異変に気付いていたようだ。

「ナニかに呼ばれている。だから、このまま進んだ方がいい。ガソリンも温存できるし。それに、ヘタに引き返せば、多分、ループに迷い込む」

私の答えに、彼女達が『え?』という感じになる。

「そうですね。そんな感じです。とりあえず、このまま進みます」

と、言って運転を続ける。

おそらく、今、走っているのは”幽世”との、狭間だ。スマホは、圏外と圏内の表示を数秒で繰り返している。

こういうことは、私にとっては『日常』なので、ああ、またか。と、いったところ。

細川君は、二度目だろうか。

彼女達は、初めてなのか、パニクっている。だけど、このフィールドワークは、彼女達が選んだモノだ。秋葉ゼミは『そういう』ゼミだ。そこを、理解して欲しいのだけど。


現世と幽世が重なる場所は、たまにある。その例が、あの『マヨヒガ金蚕』の屋敷。そこで、細川君は死にかけたのだけど、それによって耐性が付いたようだ。

「何者かが、”私”達を読んでいる。そういう時は、そのまま従った方がいい場合もある。ヘタに逆らうと、戻れなくなるし、神隠しのようになってしまう。歩きの時は、歩きまわれば体力無駄になるし、車だとガソリンの無駄になってしまう。悪意は感じないから、このまま行けばいい」

木瓜さんと清水さん、細川君だけなら『なにも』起こらなかっただろう。でも、私を同行させたから、『呼んでいるモノ』に一緒に巻き込まれてしまった。

『私』そういう者であり、その様なコトになってしまうコトは、秋葉ゼミの人なら知っているはずだけど?


 山の中、かなり山深い辺り。アスファルトは凸凹。廃道そのもの。見えていた山肌や錆びたガードレールや木々も見えなくなっていた。明るくも暗くもない道。周囲は見えないが、走っている道の正面しか見えていない。現世と幽世の重なっている空間か、他の車が来ることの無い道を十数分走ったか、急に視界が広がった。

そこは、木々に囲まれた広場みたいな場所で、道はそこで終わっていた。

見える景色は、段々畑と数軒の家屋。もちろん、人間の気配はまったく無い。

私は、車から降りる。悪意とか邪悪なっていう気配は感じない。そのあたりは、大丈夫だ。

ただ、寂しさというのか、望郷の思いというのか、その様な『想い』が漂っていた。



「廃村か廃集落の、ようですね」

三人とも降りてきて、細川君が言った。

「なんで、こんな処に着いたの?」

ワケが解らないと、いった感じで、清水さんが言う。

ーそれは、『私』が呼ばれているから。そのコト、本当に知らないのか?

説明するのが面倒で、思わず溜息が出た。

「斎月先輩って、本当に”そういう”人だったのですか?」

木瓜さんが、驚きの顔をして言った。内心、溜息。

「そうですよ」

私の代わりに、細川君が答えた。

彼女達は、互いに顔を見合わせて「へー」とか言っている。

私は、気にせずに、この場所を探ってみた。

生きている存在は、私達だけ。幽霊とかの気配も、無い。寂しさ的な感情はあるけれど、悪意みたいなモノは、感じない。なんていうか、今までに無いパターン。これは、探りを入れるだけでなく、物理的に、ここを調べる必要がある。

スマホの電波を確認する。微弱だけど電波が届く圏内。現世の圏外といった場所か。

「GPSが表示されていないです。あの道に迷い込む前の履歴は残っているのに」

カーナビとタブレットの地図を見ながら、細川君は言う。

「迷い込んだ地点を、メモしておいて」

細川君に言って、私は車から、調査セットを取り出す。

計器が一式と、人数分の防護マスク。

「そんなに必要ですか?」

清水さんが、問う。

「ー硫黄の臭いがする。この辺りは、火山帯だから」

答えて、空気のチェックをする。空気は、大丈夫だ。

「放射線も、大丈夫です」

と、細川君。

私は、ガス検知器と防護マスクを三人に渡す。

「アラートが鳴ったら、すぐマスクを着けて」

と、私は、使い方を説明する。

「あと、窪地には絶対に入らないで下さい」

細川君が言うと、二人は顔を見合わせた。

「迷い込んでしまった以上、その理由を調べないと」

言って、私は集落の方を見た。

細川君が、先頭を歩き間に二人。私は、後ろを歩く。

「狭い集落ですね。だけど、廃屋にしては、そんなに傷んではいない。近年まで、人が暮らしていたのでは?」

廃屋を写真に撮りながら、細川君は言う。

彼の言う通り、暮らしの後が残っている。それに、人が暮らしていた頃の残影が、視えるが、『呼んだ』存在は、集落には、いない。でも、この辺りの何処かにいるはずだ。

「ここ、人が住んでいないのに、リアルな生活感があって、それが気味が悪いよ」

木瓜さんが、言う。それなりに、素質があるのか?

「そうですね。外壁とかが崩れているし、屋根も崩れかかっている。ここから見える家の中、生活していた頃の跡があります。そういうのが、気になります」

写真を撮りながら、細川君は、その廃屋へ入る。私も、周辺を撮影し、その廃屋へ。

彼女達は、恐る恐る入って来た。

「なんだか、引越したというのとは違うみたいです。家主が死亡して誰もいなくなったとしても、こんなに生活感丸出しっていうのが、気になります」

細川君は、ライトで部屋の中を、照らして言う。

彼の言う通り、ちゃぶ台には、コップや皿が並べられていて、埃が積もっている。服なども畳の上に広げられている。同じく、埃まみれだし、家具の上にも置物にも埃。花瓶には、ドライフラワーの様に朽ち果てた花に、埃と蜘蛛の巣がまとわりついている。

そんな物が、あるせいなのか。他の部屋も、覗いたけれど、生活感が残っている。


 ここは、現世にある廃屋。そこは、間違い無い。

私を”呼んだ存在”を、探さないといけないが、もう少し廃屋を調べた方がいいかもしれない。現世にある廃墟、廃集落なのに、ネットに載っていてもいいような場所なのに、見たことが無い。未発見の胚珠楽なのか? それとも、一度、幽世を通らないと入れない場所なのか? ー気になる。危険はなさそうだから、このまま、ここを調べたいし、それを追求したい。だから、この際。二手に別れて、集落を調査する事にした。彼女達は、困惑していたけれど。これくらいで、困惑するなら、秋葉ゼミに入った意味が無い。その様な事を問うと、彼女達は、しぶしぶ納得した。

 私と木瓜さんは右側。細川君と清水さんは左側。左右にある廃屋を調べて、三十分後に、集落の真ん中にある道に、集まる。

本当は、勝手に入っては、いけないけれど、迷い込んだので、調べる必要がある。現実であり幽世でもある、その様な場所は。

 仏壇も、位牌や遺影が残されている。仏具なども、田代物で良い品だろう。積もっている埃が、時の流れを感じさせる。洗濯物も、部屋に吊るしたまま。台所の流し台には、食器。残されている野菜や果物は、かろうじて原型が分かるまま、カピカピになっている。原型が判るあたりが、妙にリアル。家財そのものが、そのまま残されている。

「夜逃げでも、したのかな?」

木瓜さんが、言う。

こんな山の中で、夜逃げ?

そんな状態の家は、他の廃屋も同じだった。何処も、生活を急に投げ出して、いなくなった様だ。残されている家電製品は、数十年前の物。壁や襖に貼られている新聞は、昭和時代。カレンダーは、1990年。風雨にさらされて、あちらこちら崩れているが、フラリと住人が帰って来そうな感じがする。

 細川君達と合流して、情報を確認する。お互いの結論は『夜逃げ』あるいは『集団疾走』秋葉ゼミ的には『神隠し』と、なった。



「不気味というより、不思議な場所ですね」

と、細川君。

私的には、怪異よりも、人意を感じる。


今にも雨が降り出しそうな空と、生温かく湿った風。その風には、硫黄臭が混じっている。

何処かに、温泉だか噴出孔があるのだろうか? いまのところ、数値は大丈夫だけど、車を停めた場所よりは、臭いは強い。

「斎月先輩が、呼ばれたのなら、呼んだ存在は、ここの何処かに?」

と、細川君。そう言われたが、まだ掴めていない。『呼ばれた』のは、確かなのだけど。探ってみても、凄く弱い気配だ。迂闊に探り歩くのは、場所的に危険だし、と考えていると

「あの林の奥に、何かあります」

山の方へ歩いていた、細川君が言った。

そちらへ向かうと、生い茂った木々の中に、人工物が見える。計器をチェックして、虫除けスプレーを全身に吹き付ける。人工物がある辺りから、朧気な気配。そこに、いるのだろうか。草木を、かきわけて進む。普段着だと、枝や棘が刺さってしまうが仕方がない。そうして進むと、コンクリート製と思われる建物があった。半壊している上に、土砂に埋もれている。そこは、キツイ硫黄臭がし、壁や岩などに、黄色っぽい色が付いていた。

「硫黄ですね。だとすれば、崩れた先は」

そう言って、細川君は、計器を崩れた建物の奥へと向けた。その瞬間、全員同時にガス感知のアラートが鳴った。二人は、驚いて、あたふたしていたが、なんとかガスマスクを着けた。

「妙な静けさは、幽世ではなくて、ガスのせいで、鳥も虫も、いなかった。そういう事だったのか」

私も、少し焦ってしまった。

水谷教授に、レクチャーされていなければ、危なかった。ー物理的な危険。

あまり長くは、いられない。

でも、ここは、何の場所だろう? 枯れてしまった温泉?

そう考えながら、辺りを見回す。すると、茂みの中に、崩れ倒れた鳥居を見つけた。

ーああ、ここの主が、呼んだのか。

この土地の神様の様だけど、人がいなくなり祀る者もいなくなった。だから、力を失いかけている。完全に力を失う前に、この土地から去りたかったのだ。でも、祀られている以上、この土地に縛られている事になる。

ー神送り。

この土地を離れ、在るべき場所へと還りたかったのか。その為に、私を呼んだのか。

あの時、あの温泉地で聴いた、囁き声は、この土地神様のモノだったのか。


「先輩を呼んだのは、ここの神様?」

細川君が問う。

「そう。ここを知って欲しい事と、そして、この土地から開放して欲しい為に、呼んだ」

答えて、私は、カバンを広げて、神事の用意をする。

「これから、するコトは見ては駄目。だから、藪の外で待っていて」

と、伝え、三人が藪の外に出るのを待って、私は、御神酒を周囲に撒いて、簡単だけど祝詞を奏上して、神送りをする。

ボロボロに朽ち果てた木造の小さな祠の中には、御神体が残されていた。この土地で採れた鉱石だろうか、掌に収まる程の玉。それを取り出して、白い布で包んで用意していた木箱に納める。コレは、後日、知人に渡して、後のコトをやってもらう。

彼女達の、フィールドワークに付き合わされる事になった時、何故か『神送り』が心の中に浮かんで、その準備が必要だと思って用意をした。すべては、繋がっていたのかと、思った。


 私が、神送りの神事を行っていた間、細川君は、土や石などのサンプルを採取していた。ここは、現世・現実に存在している場所なのに、何故か忘れ去られ、地図にも載っていない。地図から消えた村という、都市伝説をは、そういうモノなのだろうか?

ガスマスクが必要ということは、そういうコトなのかもしれない。

土とか石は、持ち帰っても、障りは無い。むしろ、そうした事で、この集落の事が判明する方が、ある意味、良いのかもしれない。

 雨が落ち始める。本降りになる前に、急いで車に戻る。車に乗り込む前に、私は、集落に向かって一礼。一瞬、賑わっていた頃の風景が、視えた。


 木々の間の廃道。おそらく、ここは幽世。その道を走る。木々に覆われトンネルの様な処を抜けた。視界が白くなる。

細川君は、そこでブレーキを踏んで、私を見る。

「幽世を抜けただけ。振り返らない方がいい、このまま進んで」

私の言葉に、細川君は再び車を発進させた。

チラッと、ミラーを見る。後ろは、山だった。そこに道は無かった。現実の廃道を、そのまま進んでいると、もとの道へ。そこからは、何事もなく、帰路に辿り着けた。

帰りの車内、木瓜さんと清水さんは、疲れ切っていた様子だった。

それを、励ます気は無いけど。

「秋葉ゼミでは、こういう事がフツウだから。ただのオカルト好きでは、やっていけないよ。オカルトは広域な言葉だけど、好きではなく向き合う事が必要だから」

私の言葉に、彼女達は、微妙な顔をする。

私が色々と『呼ぶ』ということを、理解していなかったみたいだし。他のゼミは、人間関係なので、合う合わないで辞めるってことがあるだろうけど、秋葉ゼミは、人を選ぶ。

ゼミで、眠っている才能が開く人もいれば、駄目な人は駄目。それに、時に命の危険もある。そういうゼミなのだ、秋葉ゼミは。秋葉教授自体が、そのような存在だから。

「斎月先輩は、いつも、あの様なコトをやっているのですか?」

木瓜さんが、問う。

「そう。忘れられたモノを見つけ、ソレを伝え残す。ソレが、私の宿命だから」

その答えに

「それは、歴史とは別なのですか?」

「記録や学問の歴史とは、別だと考えている。例えるなら、歴史の中にある『想い』かな?

信仰や、それに対する人々の想い」

すごく簡単に言えば、そんなところ。

「ー人々の、想いですか」

木瓜さんは、呟いた。

「そこに、カミやモノ、信仰や怪異が共にある。ソレを追い後世へ残す為の研究をしているのが、秋葉ゼミ」

細川君が言った。

「うーん。人の想いが、あってこそ、かぁ」

木瓜さんは、窓の外を見ながら呟いた。

とりあえず、そのコトに気付いたら、秋葉セミでは、やっていける。秋葉ゼミ・秋葉教授は、その様な人間を探している。何時だったか、教授が自分で言っていた。相変わらず謎だらけの教授だけど。


 それから数日後。私達四人は、水谷教授のラボに呼ばれた。

あの廃集落で、採取した物の分析結果が出たと。あの土地に関する話を聞く為に。

「資料が殆ど無いし、記録も極わずか。昔、あの辺りには、小さいが硫黄鉱山があった。なんていうか、流刑地だったのか、部落から逃げた者達の集落だったとかあるけれど、詳しい事は知らない。あの辺りは、火山帯で温泉もある。あの廃集落では、良質な硫黄が採れていた。当時としては、硫黄が貴重だったのだろう。だから、あの様な場所でも集落が出来た。だけど、海外から安い硫黄が入ってきて、日本の鉱山は軒並み閉山してしまった。閉山しても、あの場所で暮らしていたが、地震活動が活発になり、噴出するガスが増えた。暮らしに少なからず影響があったが、住み慣れた土地を離れる事を嫌で、残った者もいたが、ある日、一気に吹き出した有害なガスのため、取る物も取らず逃げた。ガスが収まれば戻るつもりだったが、不運は重なり、豪雨と地震で大規模な地滑りが起こり、集落は山の中に閉ざされてしまい、戻る事は不可能となった。その記録があるのが、平成の始め頃だ」

言って、水谷教授は、モノクロの写真を数枚並べた。

あの時、一瞬視えた集落の光景が、その写真の中にあった。

「それにしても、秋葉といい、斎月は何時も、妙な事に首を突っ込んでいるというか、巻き込まれているな。今回の、廃集落の件で、いかに計器が身を守るのに重要だと解ったよな!

ゼミ生達も」

と、ガハハと、笑った。


秋葉ゼミのフィールドワークは、超常的な危険と物理的危険、その2つがセットになる事が多い。それをしっかりと、頭に刻んで、細川君を始めとするゼミ生達には、頑張って貰いたい。私の代わりに、秋葉教授の手伝いを雑用を受けれるようになって欲しい。


 梅雨も半ば。ようやく色々な事が片付いたのか、秋葉教授の講義が再開される。アシスタントは、細川君が引き受けてくれたので、私は自分の事がゆっくり出来る。編集部の方には、記事の原稿があるから行かないといけない。編集長は、犬棚の事を根に持っていて、

「似非オカルト配信者と、極端なオカルトアンチ配信者は潰す」と、宣言し、色々と手を回しているらしい。何故、そこまで『本物』に拘るのかは、タテマエしか教えてくれない。

その辺りは、秋葉教授も護国の樹高さん達もお同じ。

何か、言えないモノがある様な感じがしてならない。

その本当の理由を、いつか教えて欲しい。



   エピソード2 忘れられた場所


 編集長から、食事に誘われて、何時も打ち合わせで利用している、レストランへ。

お酒が入った、編集長は、色々と愚痴り始めた。どうやら『本音』で愚痴れるのは、私達だけらしい。

「昨年は、廃病院を利用した、似非心霊スポットで殺人事件。炎上配信者の犬棚は『呪物人形』を模した、ウランの首飾りの都市伝説を再現して、テロみたいな事して死人が出たし。なんで、オカルトの神聖さを蔑ろにして。本当の意味を知ろうとしない。本当の意味での

”オカルト”は、エンタメでもサブカルでも無いの。人間の『想い』と、その向こう側と通じるコトなのに」

普段より、愚痴の内容が複雑だ。

オカルト・神秘や超常現象的な、心霊や呪術、それに怪異などの話。そこに、UFOやUMAなど。オカルトが、カルト教団を狂気に駆り立てた事もあったが。オカルトは、色んな意味で、複雑で深いので、説明しにくいが。おそらく、編集長が追っているのは、物質世界の対極にあるモノだろう。エンタメなどで楽しむオカルトとは、別物。

「まあまあ、編集長。そう言っても、駄目な人は、いくら言っても駄目だから」

左京が、なだめる。

「でもねぇ、解りやすいように”オカルト”で、括っているだけで、ホントは、物凄く大きく広いけれど、ソレが凝縮されたモノを説明するのは、フツウの人には無理だわ」

と、編集長は、深い溜息。

ソレは、おそらく、現代文明と相反するセカイ。そのようなコトなのか?

「それより、編集長。この前、千早ちゃんがゼミ生の子達と、地図から消えた村に、迷い込んだのよ」

左京さんが、愚痴前回モードの編集長の関心を、私に無理矢理向ける。すると、編集長は口直しなのか、お茶を一口飲んで、私を見ると

「その話、詳しく聞かせて」

と言って、ボイスレコーダーを起動させた。

私は、内心、溜息を吐いて、先日の話をした。


「ーなるほど。ネタには、なりそうだけど。物理で現実的な答えがあるし。もう少し、かな」

そう言って、ニッコリ笑う。

「隠れ里といえば、この様な情報があるのだけど」

編集長は、話し始めた。

「ある地方で、太陽光と風力発電のエコ発電所を造る工事をしていたのだけど、作業員が、急にフッと消えて、またフッと現れるの。大勢の目の前でね。目撃証言だと、消えた人は、何かに引き寄せられる様に、フラフラ歩きだして、パッと消える。消える瞬間の表情は、何かに驚いた様な感じ。消えた作業員を探すと、翌日、消えた場所で座り込んでいる」

「神隠しとは、違うの?」

左京さんが、問う。

「違う。話を聞いてみると、作業中に視線を動かしたら、工事現場には、ありえないモノが現れている。随分と、昔、時代劇に出てきそうな山里の風景みたいな。ソレを見ていたら、気付いたら、ソノ世界にいて、驚いてパニクっていた。どうしようと思っていたら、もとの場所に戻っていた。どう思う? この話。集団ヒステリーでは、無いよ」

と、私を見て、また笑う。

「曰く付きの、場所ですか?」

私は、問う。

「曰くどころか、神社も寺も無い土地ね。その土地の歴史も調べさせたけれど、歴史が、これといってない。そんな土地での出来事」

「見えた風景とか、迷い込んだ世界っていうのは、同じですか?」

左京さんが、問う。

「みたいね。戦国時代の田舎とも言っていたから、同じ世界だと思う。作業員達は、酒に酔っていたわけでも、変な薬をやっていたわけでもない」

「そこは、結局どうなったの?」

「山一つまるごと、エコ発電所になっているわよ。山全体にソーラーパネルと、風車が立ち並んでいる。迷い込むコトは無いけれど、陽炎の様に、その風景が見えたりする」

「でも、そんな現象が起きていたら、今の時代、ネットで有名になっているのでは?」

大学の方でも、その様な話は聞かない。

「作業員は、年配の人が殆どだったらしいから、そういうコトには詳しくなかったの。それに、そういうコトは信じないって人も。それに、見て迷い込んだ人は、その後、しばらくして、全員、亡くなったから。聞き取り調査は出来なかったの」

「亡くなった原因は?」

「表向きは、心不全。でも、なんていうか、急性ストレス障害と老衰って話もある」

歯切れの悪い、言い方。『裏』から、圧力があるのか?

「だから、実際に現場に行ってみて、本当に、その様な事が起こるのか、その先が、どうなっているのかを、調べない?」

ニコニコと笑い、編集長は、私達を見た。


「……それを、取材するという。幻なのか現実なのか、隠れ里的なモノなのかを、調査しろ、そういう企画ですね?」

左京さんは、溜息を吐き言った。

「そういうコト。千早ちゃんが、行けば、真相が判るかもしれないしね」


そういうコトで、作業員が見たというモノが、何であるかを調べるため、隠れ里を企画にして、動くコトになった。



 隠れ里と言えば、柳田国男の遠野物語。現実的な話だと、平家の落人や部落から外れた人達の集団が住んでいる地、あるいは、漂流し日本に漂着した外国人など。その様な、人達が暮らしていた集落。ここでいう『隠れ里』は、それとは意味が違う。オカルト的、神秘や怪異が関係しているコト。それは、現世ではなく幽世に存在しているモノ。マヨヒガと似ているが、里というくらいだから、それなりの広さがあるのだろう。

昔話のパターンだと、幸を授かれる者と罰や祟りを受ける者に別れている。マヨヒガや隠れ里には、ある種の決まり事があり、禁忌が存在している。これは、私の考えなのだけど、マヨヒガや隠れ里では、迷い込んだ人間の心を試されるのだ。その存在が、神仏だとは限らないけれど。パターン的に、『欲深で決まりを守れない者』の末路が、教訓として語られている。私達が、探し求めているのは、その向こうの存在。



 とある地方にある、小さな半島。海と温泉がある、小さなリゾート。海水浴シーズンには、まだ早いが、すでに海の家や釣宿は営業している。温泉地といっても火山帯にある温泉とは違う。海産物も、一つの名物。平日の割には、それなりに客が入っている。温泉地ならではの、『氣』は無い。それに、この土地には、昔話も歴史の秘話も残されていない。バブル期に一気に開発した土地、だという。

『曰く』や『心霊話』が、まったく無い。ある意味、フシギな土地だ。そんな、小さな半島の土地の山に、太陽光と風力発電がある。開発によって、昔から在る存在が消されてしまう話はあるが、ここには、その様なモノがいない。遠い昔に失われたとしても、少なからず痕跡は残っているのだけど。なにも、ない。

 海と温泉街や街が、一望できる山。そこに、太陽光パネルと風車が設置されている。山の斜面全体にパネルが敷かれ、山頂付近には風車がある。景観などから、反対が起こるものだろうけど、ここは、そんな反対は起こらず、あっと言う間に出来上がったそうだ。

次世代エネルギーとかエコ発電というが、根本的に何かが違う。そもそも、エコというけれど、材料は結局、鉱害などを起こすだろうし、大地を掘り返す以上、環境破壊だろう。それに、設置するのに、木々を伐採している。山の斜面に設置して、豪雨で崩壊して甚大な被害も出ているのに。

「ここ、神様とか、土地のモノとかが存在していないし、土地の『氣』も無いに等しい。どの様な土地でも、それなりに在るのに。まったく無いよ。左京さんは、どう思う?」

「そうだねぇ。例えるなら、逆パワースポットみたいなものかしら。う〜ん、そういうのも、違う気がするような。発電設備と送電線が、地場を乱すって聞いたことあるけど」

左京さんも、判らないと。

考えて、浮かぶのは

「発電設備と送電線の都市伝説との、関係」

ポツリと出た言葉に、左京さんは

「あー。異世界への扉が出来るとか、脳に電波が入ってきて、とかか。でも、住民が見たとか巻き込まれた話は一切無いし、作業員が見た頃は工事中だった。まったく別の原因があるのかも」

と、大きな送電線を見上げた。

「場所は、合っていますよね?」

「うん。編集長の話を考えてたから、もっと気が乱れているとおもったけど、それも無い。何時もの無茶振りな、調査内容とは毛色が違う感じがするし、なんだか変な感じ」

左京さんは、考え込む。

「本物に拘り過ぎて、見失って”本物”が視えなくなっているとか?」

私は言うと

「それも、思ったけれど、さすがにソレは無いと思う。どちらかというと噂を調べて、白黒着けたいのかな。もし、ブッラクな職場環境に嫌気がさした作業員の狂言だったなら、他の雑誌が取り上げているだろうし。あの編集長が、そういう狂言に引っかかるとは思えない。なんていうか、隠れ里の調査は『表』向きなのかなって。千早ちゃんは、どう思う?」

左京さんが言う、『表』とは。だったら『裏』があるのか? その『裏』が、この件と関係しているのだろうか。

考えても、判らない。なにも、手掛かりになるようなコトが、無いのだから。何も無い?

「もしかしたら、この土地に『何も存在していないコト』が、原因なのかもしれない。存在していない理由と、関係しているのかもしれない」

そんなコトが、浮かぶ。それに、なんていうか、景色が幾重にも重なって視える。同じ景色ではなく、色々な景色が。そのコトは、言わずにおいた。いままで、その様なコトは無かった。新しい、パターンだった。

「それは、何時もの直感? 何か、考えがあるみたいだけど」

「なんていうか、もやもやしていて、ザワッとする感じ。よくわからないけれど、樹高さん達も、何処かで関わっていそうな気配」

「護国の人が、関係しているのなら、編集長は言うはず。でも、言わなかった。私達に、何かを探させたいのか……」

左京さんは、大きな溜息を吐いて、山を見た。


 私の中に、脈や点が浮かぶと同時に、流浪の巫女が過ぎって行った。

「ー本当は、護られるべき土地だった」

心の中で、呟いたつもりが、口に出てしまった。

「なるほど、ありえなくもないか。だとしたら、この先、難しくなりそうね。今のうちに、美味しい物でも食べて、備えましょう」

左京さんは、笑顔で言った。

私の、直感を信じてくれるのは、嬉しいけれど。時々、その直感が怖くなってしまう。

なんで、今になって、そう思うのだろう。この土地が、そうさせているのか?

なんだか、不安だ。だけど、左京さんの、前向きな明るさが、私を励ましてくれる。

 昼食を食べながら、今後の計画を話し合う。

「資料は、全く無い。作業員の噂話だけ。でも、話から考えて、あの山だけなんだよね」

と、左京さん。

「気になるのは、この土地に、神社などが一つも無い事。お寺も無いし。墓地はあるけれど、そこに幽霊の類も無い。視えないし感じない。ソレが、何かの意味かもしれないけれど。逆パワースポットとも、違う。そういう場所は、嫌な気がするけど、ソレすらも無い。ホント、何も無い」

私は、考えていた事を、話す。

「そうすると、やっぱり、送電線? でも、その都市伝説とも違う気がするね」

「例えば、呪術的な何かが仕組まれているとか?」

私は、呪術の事は解らない。

「いや、それも無いよ。もし、そうだとしたら、すぐに判るし。千早ちゃんの言う通り、不気味なくらい、何も無い」

呪術関係も、無いとしたら

「こうなったら、暑い中、山を歩いてみるしかないですね」

と、言うと、左京さんは、大きな溜息を吐いて、頷いた。


 天気予報と直感によれば、雨は降らない。

念の為、フィールドワーク用の計器は持ってきている。発電所や送電線のある場所は、磁場が乱れるというけれど。磁場の激しい乱れは、空間に歪みが出来るというけれど。

それは、物理的な現象だし。


 思うのは、流浪の巫女。彼女達、この土地に関係しているのだろうか?


海からの風が無ければ、蒸し暑さが増しているだろう。山頂には、観光地をアピールした様な公園がある。ソーラーパネルや風車などが無ければ、この景色も良いはず。その上、大きな送電線もある。

「どういう感じで、探す?」

左京さんが、問う。

「山全体を、探すと、何日かかるか、分からないですね」

作業用の道が張り巡らされている、そこを歩きながら話す。

「さすがに、それは嫌だね。ダメ元で、式を使ってみる? 反応してくれるかは、不明だけど。式が駄目なら、ダウジングとか?」

「式か。でも、施設の中を示したら、入る許可をもらわないと」

「まーそのあたりは、編集長に手を回してもらわないと」

ニヤっと、笑う。

「それじゃあ、式を」

「ええ、行くわよ」

と、二人して、同時に式を飛ばした。


2つの式神は、しばらく私達の上を飛んで、山を一周してきて、山頂の公園、私達の上に戻って来て、地面の中へ消えて行った。

「どういうこと? ナニかには、反応したみたいだけど」

左京さんは、二つの式が消えて行った、地面を見つめる。

どこにでもありそうな、デザインレンガの地面。

”ナニ”かには、反応したけれど、ソレが判らない。山を一周、この山にナニかがあるのは、確かなようで、街の方には、反応しなかった。

「この山に、ナニかがあるのは確かだけど、送電線とかの影響なのか、式も動作不良って感じだよ」

探りを入れても、反応は無い。深く探ろうとすれば、全身に静電気の様なビリビリ感がして、それがキツイ。

「これは、千早ちゃんの直感も、あてに出来なさそうねぇ」

溜息混じりに、言う。

「編集長は、何で、こんな何も無い土地を、調査しろと言ったんだろう」

左京さんは、式の消えていった地面を見つめる。

山や、発電所の資料は貰っている。こまかい設計資料や地質調査などの。

神隠し、隠れ里の話は、この山で工事が始まってからだ。それ以前には、そんな話は全く無い。工事がきっかけなら、山の主とかだ。だけど、その様な存在すら無い。

フィールドワークに行った、様々な土地には、必ず何らかの存在は在ったのに。

ここには、何も存在していない。古き時代からなのか、それとも消えてしまったのか。

山頂から見える景色を見つめ、考える。


ーワスレラレタ

何者かの囁き。それと同時に『依月』が浮かんだ。やっぱり、流浪の巫女『依月』が関係しているのか。

「ー左京さん。もしかしたら、この土地は、流浪の巫女と関係しているのかもしれません」

と、今、感じた事を伝えた。

「なるほど、他には?」

「解らないです。迷い込んだ人の話が、聞けたら良かったのですが、皆、亡くなっているんですよね」

「残念な事にね。降霊も難しそうだし、専門じゃあない。ソレに、隠れ里の障りで亡くなったとしたら、無理ね」

お互いに、肩を落とす。


『依月』は、私に『ナニ』を伝えようとしているのだろう。

頼りになるのは、私の魂にある『依月』の記憶。ソレは、どうしても探れない。なのに『依月』は、私の心に現れて消える。それに、編集長が、ナニかを隠しているのが気になる。




 宿の部屋に戻り、一人で考える。

この土地の古い地図は無いらしく、編集長でも手に入れれなかった。古いものは、全て新しいもので塗りつぶしている感じを受けるのは、何故だろう。

仕方がないので、現代の地図でやるしかないか。

正確な答えを、導けるかは、判らないが。

私は、紙の地図を広げ、何時も行っているように、小さなパワーストーンを、地図の上に落とす。石は、山の上に落ちる。何度、やっても同じ結果。発電所のある山を示す。何も無く、何も感じ無かった山。この方法だと、山だけを示す。カミやモノ、人霊すら存在しない土地なのに。その代わりにあるのは、自然と相反する、自称エコ発電所。それが、送電線の都市伝説と関連つけてしまう。電波から受ける悪影響で、幻覚と死因に繋がる?

何故、一部の作業員だけが視て迷い込んだ、その理由は? それに、地元住民が巻き込まれていない事も、何か理由が、いや無い。偶然が重なった?

それに、異世界ゲートの都市伝説は『物理現象』だから、『依月』は、関係ないのでは? と思うが。考えていると、左京さんからの電話。

「思い切って、施設に入り込まない? 内側からだったら、何か判るかもしれないし」

「バレたら、ヤバいですよ。不法侵入になるし」

左京さんは、時々、無茶振りをする。

「そうだけど。尻拭いは、編集長にやって貰う事にして。式は地下を示した。パネルの下、地下には配線設備がある。それは、山頂の地下辺りにあるの。地下設備に、何か手掛かりがあるのかなって。都市伝説の中心かもしれないし」

左京さんも、都市伝説の線を考えているのか。私は、パワーストーンの結果を話した。

「だから、その線で探ってみようよ。もしバレたら、ID出して、心霊スポットの調査してるとか言えばいい。カメラも防犯よりも、施設の管理みたいな性能らしいから、気にする程でもないみたいだから」

左京さんは、行く気だ。

本当は、駄目な事だけど、他に手は無い。尻拭いは、編集長に任せておく。

それで、手掛かりが掴めればいいけれど。


 翌日。山頂の公園に車を停めて、ソーラーパネルが並んでいる場所へ、入り込んだ。

「肌が、ビリビリする」

他の太陽光パネルの場所では、こんな事はなかったのに。

「山全体に、こんな物があれば、電気に敏感な人には影響があるかもね。私は、何も感じないけど。千早ちゃんが、そのようなモノを感じる地点を探そう」

私達は、パネルの間を歩く。念の為に、人払いの結界を貼ってある。

探ってみても、何も感じない。でも、肌に感じる、ビリビリ感は相変わらずだ。

ータドリツケナカッタ

依月の声がした。

やっぱり、『依月』が?

「何か、判った?」

左京さんが、問う。

「依月の、声がする」

答えた瞬間、視界が歪んだ。

「なに、コレ?」

私達は、歪んでいく景色に飲み込まれていった。


歪む景色に、目を閉じてしまう。その歪みの感覚が、収まった感じがしたので、目を開く。

辺りは、まったく違う景色に変わっていた。

「ちょっと、なに?」

左京さんが、驚き、辺りを見回した。

「これが、編集長の言っていた、隠れ里?」

スマホを見ると、圏外。

周りの木々とかは、幻ではなく本物。巨大な送電線も、見当たらない。

境界は感じなかった。マヨヒガの時は、境界は、ハッキリと解ったのに。その感覚が、まったく無かった。

「呪術的なモノは、感じなかったから、呪術では無いね。初めて感じる感覚。でも、ここは、山の中で、里では無いよね? どうする?」

左京さんに、問われるが、答えれない。私は、しばらく考え込む。

「千早ちゃんの方が、こういう現象には、詳しいよね? それに『依月』が関係しているのなら、千早ちゃんの直感に、任せるよ」

と、言うけれど。

幽世には、何度か迷い込んだコトがある。経験上、そういう時は、深く考えても無駄。自分の直感を信じるしかない。

ータドリツケナカッタ。ーワスレラレタ。

『依月』の声がする。その声が『ナニ』を示しているのかは、未だ解らない。でも、ここに迷い込んでから、より強く『依月』を感じている。

山の中、その獣道の先に、人の手で造られた道があった。

左京さんと、はぐれない様に、その山道を直感で歩いていく。二人並んで歩く。二人並んで歩くのが、やっとの狭い山道。人の行き来がある様だ、古い街道なのだろうか。

虫や鳥の声、獣の気配がする。

編集長が言っていたのは、平安から戦国時代。こんな山の中では、時代が判らない。

もし、隠れ里が、過去か幽世だとして、この世界の住人との接触は、大丈夫なのだろうか?

「これから向かう里? その人達からして、私達、マレビトになるのかな?」

と、左京さん。

「たぶん。話が通じる相手だと、いいのだけど」

そんなコトを話しながら歩いているうちに、山道から開けた場所に出た。

そこは、木々を切り開いて出来た、小さな集落だった。歴史資料や、時代劇で見るような風景が、そこにあった。平安から戦国時代。資料の記憶からすれば、おそらく、そうだろう。

私と左京さんは、顔を見合わせて

「どうしよう」

と、お互い呟いた。

 

 私達に気付いたのか、集落の人達が集まってくる。昔の日本人って、感じがする。

一定の距離を保ち、私達を遠目に見ている。悪意も敵意も好奇なども、感じない。生きている人間。ここが、例の隠れ里だろう。

どうするべきか?

『呼ばれた』のなら、ソレが完了しないと戻れない。それに、迷い込んだ世界には、その世界においての、理と禁忌が存在している。そこは、気をつけなければ。

だけど、ここは少なからず『依月』が、関係している。

流浪の巫女・依月は、各地を巡っていた。

もしかして、この土地にも?

と、考えていると、遠巻きに見ていた人達の中から、長であると思われる人物が、こちらへと歩みより

「巫女様。お待ちしておりました」

と、深々と頭を下げた。

ー待っていた? 誰かと間違えているのでは?

「各地を旅して廻り、土地に神様を祀られる力を持った巫女様が、おられると、噂に聞いて、ずっと待っていました。巫女様が、来てくれた事で、この土地にも、やっと神様を祀る事ができます」

そういわれても、

「千早ちゃん、呼ばれてたね」

左京さんが、耳打ちをする。

『依月』『流浪の巫女』どちらも、同じであり、ひとつの『集団』でもある。どの時代の『依月』なのか、それとも『初代』なのかは、解らないけれど、私達は『依月』達に見られているみたいだ。


「荒ぶるカミやモノを鎮め、土地を護る神様にし祀ってくれる。その様な、神様を、この土地に祀ってくださる時を、ずっと、お待ちしておりました。祀るカミが、いない、この土地に、どうか、神様を」

一同で、頭を下げる。


祀られている存在が、不在。カミやモノは、存在しているけれど、祀れないでいる。この土地は、強い力を秘めているし、豊かだ。ここが、あの土地の過去だとして、なにも祀られていなかったのなら、あの土地が、空っぽなのも、判るが。

『辿り着けなかった、忘れられた土地』

とは、この土地のコトだった。

過去において、依月が果たせなかったコト。それを、完遂させる為に、私を呼び寄せた。時間を超えてまで。

だとしたら、私は、この申し出を受けなければならない。


私と左京さんは、流浪の巫女として、集落へ入る事にした。


 集落は、幽世とはまた違う、感じがする。隠れ里というなら、あの廃集落の方が、イメージとして近い。ここは、過去だ。作業員は、ここへ迷い込んだ事になるし、なぜ死亡したのかも謎になる。禁忌に触れたのか? それとも……。

私達は警戒しながらも、集落の中を案内され進む。肌にくる、ビリビリとした感覚は強くなっていて、全身が粟立つ程だ。この様な感覚は、何度かあったけど、その理由と原因が、思い出せない。

集落は、『御神体人形』の集落と似ているけれど、あの集落より山奥だ。閉ざされた土地というわけではなく、それなりに人と往来はある感じ。

私達の服装は、まったく時代と違うのに、誰も触れない。集落の人達には、どの様な姿が、見えているのだろう? もしかすると、なんらかの力が働いて「この時代」に合った姿に見えているのかもしれない。

 畑には、何かの作物。米ではなく、ヒエやアワ、あるいは麦だろうか、水稲ではないようだけど。土地自体が豊かだから、貧しくは無い様子。山の方で煙が上がっているのは、炭焼きでもしているのだろう。豊かな土地だけど、やたら強い気が湧き上がっているのを、感じる。その『力』を神様として、祀って欲しいのだろうか。

連れて来られた場所には、巨大な岩があった。ー磐座。

その磐座からは、かなり強い力を感じるけれど、祀られている感じは無く、集落で崇めているだけの感じがした。

「これは、どれくらい昔から、あるのですか?」

左京さんが、問う。

「ずっと昔から。ワシの爺様が生まれるより、ずっと昔。ワシらは、正しい祀り方を知らない。旅人から、色々なモノを神様として祀ってくれる巫女様の、噂を聞いて、ずっと待っていました」

と、長は答えた。

「巫女様が、お祀りくださったのなら、地鳴りも山の揺れも、きっと収まってくださると想います」


 地鳴りに山の揺れー地震?

そこにきて、私は、ようやく肌にビリビリくる感覚の正体と意味が、判った。あの感覚は、大きな地震の前に感じるモノだ。

『辿り着けず、間に合わなかった』

依月の言葉、その意味は

ーこの集落を、大きな地震が襲うー

ここを、目指していた依月達は、間に合わなかった。祀られるべきモノを、祀れなかった。だから、あの土地には、山には、神様も歴史も存在することがなく、誰も反対することなく、エコ発電所となったのだ。


 ソコから先の記憶は、曖昧。

私は、磐座に、集落や土地を護るべきモノと、人々が望むモノを神様として降ろし、磐座を依代とし土地神として、祀った。

集落の土地と人々の想いが一つになっていくのを、感じた。

ーヨカッタ、コレデー

依月の声がした。

振り返ると、左京さんの笑顔。


 ザワメキがする。

左京さんも、ソレに気付いたのか、辺りを見回す。

鳥や獣が、叫んでいる。木々が、ざわめくと同時に、鳥が一斉に飛び立った。同時に、大地と視界が激しく揺れて、視界が暗転した。


 暗闇の中。浮いているのか、沈んでいるのかさえ、判らない。潮上島の、闇夜の波間を思い出させる。

私は『依月』の、望みを叶えられたのだろうか?

左京さんは、無事なのか? 集落は、どうなってしまったのか?

色々な、考えや想いが、グルグルと回っている。


ーありがとう。これからも、この国の古き神々を護ってー

依月の声が、する。

私の意識は、沈んでいった。



   エピソード3 護るべきモノ


 自分が、何処にいるのか、解らない。白い空間だけど、闇とも似ている。

ー時空の狭間 空間の狭間、みたいな空間なのか。

そこに、私だけ。左京さんは、見当たらない。

依月は、どうして各地を巡りながら、モノを神として祀り継いでいるのだろう。

あの集落を、目指していたのだろうけど、辿り着く前に、集落は地震で……。

それが、依月と志を共にしていた者達の、心残りか。

考えていると、また視界が変わっていく、その瞬間、

激痛と息苦しさに襲われた。思わず、苦痛で声が出た。

それと同時に、眩しくなる。

ここが、何処だか判りまで時間がかかった。


「千早ちゃん!」

知った声が、する。この声は、左京さん。

目を開くのも、やっとな感じ。全身が痛み、息苦しい。

ー病院。あの時、何が起こったんだ。

「良かった。目が覚めて」

と、左京さんが泣いている。

「ど、どうし、て」

やっと、出せた声。

「直下地震」

別の男性の声。樹高さんの。地震って?

「あの山、エコ発電所のある山の地下深くには、未発見の断層があった。それが、動いたのですよ。斎月さん達は、その地震に巻き込まれたのです。山は、原型を留めない程、崩れてしまいました」

話を聞いているうちに、意識が、ハッキリしてくる。毎度のこと、痛みが強くなる。酸素マスクが着けられている。呼吸が苦しいし、息を吸う度に胸の辺りが痛む。

「隠れ里は」

一言いうのが、苦痛。

「戻って来たの。あの集落で、千早ちゃんが神事を終えると同時に、戻って来れたけれど、さらに同時に大きな自揺れがして、足元が崩れて……その辺りの記憶は、私も曖昧。それに、私は、ほとんど無傷だったのだけどー」

左京さんは、申し訳なさそうに言った。


でも、どうして?


「必然。文明の科学と、『理』は別のモノ。なるべきコトは、なるべくしてなるし。起こるべきコトは、起こる。時に、ソレは、人知を超越する。あの山、エコ発電所のある山がある場所は、『脈』の一つでした。見落とされてた地。忘れられた『脈』でした。ソレを、明るみに出したのは、斎月さんです。祀られる存在は、いなかった。だから、この土地には神社などは、無かった。だけど、祀られた存在があり、神社が出現した。ーつまり」

私が、あの集落で、神様を勧請し祀ったから。隠れ里・あの集落は過去。

地震の直前だったのだろうか? 祀られるモノが無いまま、地震で崩壊した集落。だけど、私が祀った。それはつまり、私は歴史に干渉して、結果、変えてしまったのだ。

「あとのコトは、私達が、やりますので、斎月さんは、ゆっくりと身体を治してください」

言って、樹高さんは、病室を出て行った。


 断層。それは、ある意味、パワースポットであり、神社などがあるのも珍しくもないし『脈』でもある。未知の断層なんかは、たくさんあるだろう。その全てが『脈』の一種。

そうだとしたら、護国の者である樹高さん達に、任せる方がいいのか。

痛みのせいか、考えが、まとまらない。


ー縁が、あるのならば、またー

私は、あの集落を思い浮かべ、目を閉じた。


 私は、一円兄ちゃんの病院へ。

左京さんは、何度も、謝っていた。どうやら、本来なら左京さんが受けるべきダメージを、私が全て被ったカタチとなったから。そんなに、謝ってくれなくても、いいのに。

仕事とはいえ、私と組んだばかりに、共に巻き込まれてしまった。それに、私は、歴史に干渉してしまったコトになる。

仮にソレが、決まっていた『理』だったら?

始祖にして初代『依月』は、何者だったのだろう?

時間に干渉できる力がある。『万物の理』『時の理』その様なモノを司っている存在を、奉じている者だったとしたら? そのコトを探ると、戻れない程、ハルカ・カナタに在るモノに辿り着く感じがする。

ー創まりの魂ー

その様な、言葉が浮かんだ。

ソレは、どういう存在なのか。疑問が、増えるだけで、答えは解らない。



 未知の断層のズレによる、地震は、エコ発電所の太陽光パネルや風車を跡形も無く、山ごと破壊させた。ニュース映像を見て、よく生きていたなと思う。

ー死なせてもらえない。

そんなコトを、思う。

地震は、山とエコ発電所を崩壊させた。街の方も、それなりに被害があったけど、死者は出ていない。


 それからは、毎度のパターン。説教や心配させるなと、言われる日々。


あの山に『脈』を定め、改めて神様を祀る。そうするコトで、地鎮とするのだ。地鎮の要、ソレは、ずっと護られるモノであって、そうするコトで防災にもなる。ソレが、古代日本から伝え残された術でもあるのかもしれない。

古くからある、名も由来も不明の神社は、案外、そういった意味あいがあるのかもしれない。護国の者は、ソレを知り護っている。表向きは、日本を守る。本当に護らなければならないのは、『脈』や『点』、レイラインに関係するコトだ。


 私は、歴史に忘れられた、ソノ存在を見つけ出し護り継ぐ。それは、護国の者に。

この国を、護る存在として、共にある。

 梅雨が明け、夏本番。

一円兄ちゃんの病院の、個室。自腹を切らないでいいので、一番良い個室だ。

カーテンを閉めていても、夏の日差しを感じる。エアコンで快適だけれど、今回ばかりは、大怪我どころではなかった。折れた骨が肺に刺さっていたらしい。だいぶマシには、なっているけれど、クシャミや咳をすると、強い痛みが走るし、酸素のカテーテルは、まだ必要らしい。全身、ボロボロ。回復が、遅い理由は、一円兄ちゃんによると「時空を超えた」コトが、原因らしいのこと。どうやら、研究対象にされているらしい。色々と、ガタがきていることもあって、夏いっぱいは、入院が必要。

入院中の身の回りの世話は、左京さんとゼミ生が、やってくれている。

「まるで、不死身だな。護るべき存在が、お前を護るコトで、自分を護らせようとしている感じがするな。実に、興味深い」

入院費とか、心配しなくていいとか言い、そんなコトを言われた。

「お前の、宿命と使命。その本当の理由を、いつか解明したいな」

と、教授は言って、帰って行ったけど。


 ー宿命と使命。

私は、そんな存在なのだろうか? そういう、さだめ? 婆ちゃんは、ソコまで私のコトを視れなかったのかもしれない。『斎月』の家と血にある『力』に拘り過ぎて。

 

 左京さんの他に、何故か風間さんも顔をよく出しに来る。

「本来、この件は、私達が、なんとかするべきコトでした。未知の断層は、現代科学だけでは、見つけられない場所もあります。その様な時、私達、護国の者の仕事となります。そのコトについて、編集長と話していました」

申し訳なさそうに、風間さんは言う。

「なぜ編集長に。編集長に話したら、私に、その様な話が来る。とは、思わなかったのですか?」

「ま、まあ。そうですが。あの方は、あらゆる分野に長けていますし、顔も広いので、私達だけでは、やりにくい仕事の根回しが出来るので、力を借りているのです」

と、風間さんは、答えた。

編集長は、何者だ。本名すら、知らない。教授も、謎が深い人物だし。

「”依月”のコトは、知っていたのですか?」

「ー代々の記録に、少し出ている程度で。私は、知るのは、その程度です」

風間さんの答えは、なんだか微妙な感じだった。

「これからも、なにかとあると思いますが、よろしくお願いします」

そう言い残し、風間さんは病室を後にする。

どういう意味だ。それって、少なからず縁が、あるというコトか。

そう思うと、溜息が出た。




     エピローグ


 秋晴れのある日、前々からの約束で、イナリ様への奉納神事を行う。

ボロボロだった、江戸時代の着物は、なんとかキレイに修繕されていて、当時のコトを、思い浮かべれる。

この着物は、神様ーイナリ様と人間の想いが通じ合った証の様な物。

修繕された着物を、再奉納。イナリ様の嬉しそうな感情が、伝わってくる。

女将さんや、職人さんも、嬉しそうだった。あとは、跡継ぎの人に任せればいい。

私は、まだ他に、やるべきコトが沢山あるのだから。

それは、宿命であり使命なのだから。

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