高嶋ともつぐオリジナル辞書
●あやしい→塀に囲まれているような、見通しの悪い十字路の角を曲がるときに、誰かとぶつかったら嫌だから、亀よりも遅く、慎重に慎重に曲がろうとしてしまう、僕のような人のこと。
●いとしい→奇人や変人の類いが大好きな僕が、変わった言葉遣いや考え方、変わった行動やファッションをしている人に会ったときに、胸の中に芽生える気持ちのこと。
●いやしい→ファミリーレストランで、スパゲティ一をフォークに巻き付けることをせず、勢いよくすすって、音を立ててしまった昔の僕のこと。
●うれしい→財布の小銭が一時期、30枚ほどになってしまったのにも関わらず、ある日の会計時に、財布にある全ての小銭を一気に使い果たしたときに、僕に生まれた感情のこと。
●おいしい→豆腐を皿に開けて、その上に納豆をかけて、その上から醤油を回しかけた、大豆だらけの、大豆による大豆のための大豆たちの融合、みたいなものを食べたときに感じた気持ちのこと。
●おかしい→スーパーマーケットで、手にカゴを持って野菜を見ていたら、右側を塞ぐように斜めにカートを停めてきた女性がいて、その直後に左側にも別の女性に、同じようにカートを停められて、囲われてしまって、身動きがとれなくなった僕の気持ちのこと。
●かなしい→自信がある小説なのに、誰も見てくれなくて、ほとんど誰にも評価されなくて、なのに、あまり自信がないエッセイは、思っている数倍、評価されてしまっている、そんな状況を目の当たりにしたときの、僕の心のこと。
●きびしい→お弁当屋さんに入ったとき、店長っぽい人が、お客さんにオマケを付けていて、優しいなと思っていたら、店員の女性には、かなり怒っていて、そんな店長に僕が思った感想のこと。
●くやしい→車の運転中に、左側を走っていた自転車を抜かして、だいぶ走ってから、赤信号に捕まったのだが、その間にその自転車の人は、僕に追い付き、その信号が変わったと同時に走り出し、横断歩道を先に渡られてしまったことがあって、そんな状況になってしまった、僕の気持ちのこと。
●けわしい→僕が最寄り駅に行くときに通る、2本平行に並んでいる、狭くて、自転車の立ち漕ぎで、やっと登れるくらいの、急すぎる坂のこと。
●こいしい→甘酒豆乳という、小さい紙パックに入った商品が好きだったのに、もう一年くらいスーパーマーケットなどで、見かけなくなっていて、また飲みたいと思っている、僕の心のこと。
●さみしい→9時オープンの本屋さんに、オープンしてすぐに行ったけど、一通り店内を回ったのに、誰一人お客さんがいなくて、ガラリとしていた、その本屋さんの店内の雰囲気のこと。
●すずしい→冬のショッピングモールに行って、モール内を歩き回って暑くなったあと、帰ろうとしたときに、扇風機だと理解せずに、扇風機のド真ん前を通ってしまい、突然風が顔に掛かってしまったのだが、そのときに、顔に感じた感覚のこと。
●せわしい→スーパーマーケットのセルフレジをするときに、後ろで並んでいるお客さんに、はやく回してあげたくて、無駄なく、はやく終わらせようと、両手を全速力で動かしてしまう僕のこと。
●たのしい→ダジャレを言おうとしているわけではないのに、本当にたまたま、同じ文字が連なってしまって、ダジャレになったときの、僕の心のこと。
●とぼしい→歌詞などは、100回くらい読まないと理解できず、100回読んだとしても、完璧には理解できない、そんな僕の理解力のこと。
●はげしい→毎朝、僕が部屋にいるときに、どこからか聞こえてくる、バックショーンという、おじさん風のクシャミの強さのこと。
●ひとしい→一年間の日にちの数は、365日で、僕が牛乳を飲む日にちも、365日であるということ。
●まずしい→中学時代に、折り目がついたお札を、分厚いマンガ雑誌の間に挟んで重ねて、伸ばしていたら、お金の行方をすっかり忘れてしまい、使えるお金がほぼ無くなってしまった僕のこと。
●やさしい→会社帰りに寄ったコンビニで、おでんを買ったのだが、つゆを沢山入れてくれて、溢れてしまわないように、袋も二重にしてくれたり、色々してくれた、そこの店員のオバサンのこと。
●ゆゆしい→中学生の頃に、美術の授業のデッサンのために、持っていったニンジンを、美術バッグに入れたまま、放置してしまい腐ってしまった、その状況のこと。
●りりしい→顔が平らだねとか、薄い顔だよねとか、よく言われるけど、そのなかで、ぐんぐんと勢いよく伸び続け、存在感を放っている、まつ毛のこと。