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一話☆『ハシナモがやってきた!』

―――――――『ねぇねぇ、『ハシナモ』って知ってる?』


『知ってる知ってるー!なんでも願い事を叶えてくれる素敵な妖精さんでしょ?』


『そうそう、いいよねー。噂でしか聞いたことがないから実在するのかどうかも分からないけどもしいるのなら私の所へ来て欲しいなー。』


『それなー。あたしだったら"超イケメンの彼氏が欲しい!"って願ってるかも。あーいやあっちもいいなー、やっぱこっちもいいなー。選べねーw』


『言い忘れたけど願い事を叶えたら――――――』


――――――――――


「仕事行ってくるから大人しくしてるのよ。」


お母さんが仕事に出る。いつもの日常が始まる。


僕は遊助。僕の家庭はお父さんが働いてくれたおかげで普通の生活をしていたけど、ある日お父さんは交通事故にあってしまい他界してしまった。


今はお母さんが女手一つで僕を育てている。お父さんがいた時より家は貧しくて食べるものもろくに無くて、常時飢えていた。


僕は小学三年生、だから今日も学校に行く。でも学校は嫌だ。何故なら、


「よォ、貧乏人。今週授業参観あんじゃん?もしチクったら分かってるよな?」


彼はいじめの主犯格であるショウキ。スペックはデブ、クソ野郎、ドクズ。学校では基本自分では喋らない。触らぬ神に祟りなしってやつ。


「おい、無視すんなよろくに飯を食わせてもらってない分際でよ!!」


椅子を倒され、顔面を踏みつけられる。これが痛いのなんの。何か言っても殴られる、何かやろうとしても否定される。そうなるのなら無視が1番だろう。


「おいショウキwwやめたげなよwソイツかわいそうじゃんwwま、邪魔なんて入るわけねぇけどw」


邪魔なんて入ることないってのは教師もこのいじめを黙認しているからである。死なない程度には何をしてもいいと思っているのだろう。


授業中だろうがお構い無し。色んな奴が僕を蹴ったり殴ったりしてきて死にかけの状態になっていた。


そして給食の時間になってまたショウキとその取り巻きがやってくる。


「なァ、今日の給食プリンだってよw」


「まじぃ?ラッキー。」


こういう話をしながらチラチラ僕の方を向いてくる。恒例行事だ。


「おーい、そこの貧乏人クーン。いつもの事だから言わずもがな分かるよな?」


"いつもの事"というのは僕の給食をアイツらに渡すこと。一瞬でも嫌がれば暴行。従うのが自然の理だ。


給食が終わり腹ペコの中授業は始まる。授業の中でも嫌がらせは止まない。なにせ先生は無視。他の教室の先生も無視。まさに"No help"状態。


国語の時間には教科書を習字セットで塗りたくり僕の番が回ったら恥をかかせるのだったり、算数では僕が手を挙げてたと先生にチクッたり、水泳の授業では僕をプールに突き落としたりする。


――――――――――――――――


ここまでで何度も疑問に思った人がいるはず。何故彼の味方がいないのか。助けようという意志を持つ人間がいないのか。


それは、集団心理という物が働いているからだろう。集団心理というのは、例えば友達に嫌われたくないから、仲間外れにされたくないからという感情でそれに乗っかる事を示す。


いじめでも集団心理が原因で起こっている。クラスでの「普通」が成立していればしているほど起こりやすい。


例えば誰かが他の生徒と違うことが悪い意味で丸目立ちすればそのクラスの陽キャに目をつけられその陽キャがクラスを率いてその誰かをいじめるという事に繋がる。


主犯グループ以外の取り巻きは例えピンチになっても最終的に知らんぷりして日常に戻る。いやぁ、タチが悪いよねホント。


―――――――――


いじめを耐え抜き、やっと帰る時間。流石にお腹が空いたので今日も街のゴミ捨て場を漁ろう。


「(隠れてたけどアイツらに見つかんなかったな。)」


と嬉しさもあったが明日ボコられるだろうと悲観もあった。そしていつものようにゴミを漁る。そして食う。そして漁る。


「いたたたたぁ〜(´Д`;)ヾ」


それを何回かやっていたら怪我をしている変ないきものを見つけた。背中には羽が着いている。もしかして昔おとぎ話で聞いた『妖精』か...?僕はそいつをじっと見つめて


「・・・・・」


ポイッ(´-`)ノ⌒゜


またゴミ箱の中に投げ戻す。案の定妖精は大慌てで出てきた。


「何すんのさ!⸜( ‵_′ )⸝」


「うわ、喋った!」


「妖精なんだからそりゃ喋るわ!(ノシ `ᾥ´)ノシ バンバン」


その妖精は仕切り直して自己紹介をする。


「まあいいや。助けてくれたし。とりあえず自己紹介といこう。僕は『ハシナモ』。妖精の森から人間の願いを叶えるべくやってきた妖精さ!君のな――――」


「・・・・・・」


ポイッ(´-`)ノ⌒゜


彼は妖精を投げ入れ作業を再開する。だが。


「だーかーらー!とりあえず人の話聞こう!?あ、間違えた、人じゃなくて妖精だった。(๑>؂<๑)♡」


また出てきた。


「で、君は何してんの?」


「お腹空いたからゴミ漁って食べられるもの探してる。」


「へー。なるほどね。じゃあその願い、叶えようか?」


「じゃあやってみてよ。」


少年はまだ不審がるように妖精を見る。妖精は少年の警戒を解くべく願いを実践してみせた。


「でてこい〜でてこい〜ぱんっ!」


少年の手にパンとおにぎりが現れた。それもとても美味しそう。


「えっ!?」


少年は驚きを隠せない。彼はパンとおにぎりを見るやいなや食いつく。妖精の言ったことは嘘じゃなかったと少年は警戒心を解いた。


「っ!物凄く美味しい!」


「だろだろー?夜になったらこれよりもすんごいご馳走用意するからなー!」


「ほんとに!?やったー!ありがとうハシナモ!」


そう話し合って僕とハシナモは家に戻った。僕はいつも家じゃ一人ぼっち。お母さんが帰ってきても寝ては仕事に行って寝ての繰り返し。だから弁当も冷えたコンビニ弁当が朝昼晩の定番。


「今日は君の食べたい物をなんでも食べさせてあげるよ!なんでも言ってね!なんでも叶えてあげる!」


―――――ご馳走なんて僕なんかにはあまりにも贅沢すぎる。贅沢なんて学校の人たちみたいな一般の人達がすることだ。でも僕は底辺。生まれつきの底辺。しかしてそんな願いを願ってしまっていいのだろうか?


「どうしたの?別に強制じゃないけど食べないと死ぬよ君。」


「―――――ハシナモ。」


「なーに?」


「僕って皆みたいに贅沢してもいいのかな。僕は貧乏で底辺だからそういうのに手を出していいのかどうか。」


そう彼が言うとハシナモはこうアドバイスする。


「なんだ、そういう事だったのか。贅沢をするってのは人生の一興だろう?人である以上人生は楽しまなくちゃ。それに人を楽しませる為、笑顔にするために僕はいる!だから願いは何でも叶えるよ。」


ハシナモの言葉を受け僕は食べたいものをリクエストした。『ステーキ』『トンカツ』『寿司』『ハンバーガー』などなど。


僕がリクエストし終わるとハシナモは


「んじゃあ作るから待っててねー☆!」


とどこかに飛んで行った。楽しみだなぁ。楽しみだけど少し眠いなー。できるまで寝とこう。


――――――――――――――


「ん〜。今日も疲れたー!早く帰って遊助の顔が見たいなぁー。」


そう言って帰宅するは遊助の母、久子。何故今日は妙にテンションが高いかと言うと。


「明日はあの子の誕生日だから張り切って誕生日プレゼント買っちゃった。遊助は戦隊モノが大好きだからどんな顔するか楽しみだな〜!」


という訳だ。彼女は大盛りサイズレベルのケーキを手に持ち遊助が好きな戦隊モノのプレゼントを持って帰宅しようとする。


―――――――――だが。


ピュー


信号を渡る時、車が信号を無視してこちらに突っ込もうとしてくる。


「あ、あんた!危な――――――――」


およそ刹那の出来事だった。彼女は跳ねられ死を実感する。


「(嘘、明日遊助の誕生日なのに。遊助にはまだなにも寄り添ってあげられてないのに。)」


そう思いながら走馬灯を見る。


〝そういえば1歳の頃に遊園地に行ったね。お父さんに高い高いされて笑顔でいっぱいだったね。あの笑顔は何年、何十年経っても忘れてないよ。〟


〝2歳の時はベッドから転げ落ちちゃって大変だったね。何も大事が無くてよかった。〟


〝4歳の時は保育園に行ったね。初日はとても怯えていたけど、みんな優しくていつの間にか仲良くなってたね。それを見て始めて遊助の成長を感じてお父さんも私も嬉しかったよ。〟


〝6歳の時は幼稚園で色んなことがあったね。喧嘩したり人助けをしたり。〟


〝7歳の時はお父さんがいなくなって大変だったね。よく頑張ったね。遊助は世界一強い子だよ。〟


〝大丈夫、いつでも遊助にはお母さんが付いてるから。寂しがらないでね。〟


〝私は誰よりも遊助を愛してたけど物事も上手くいかなくて遊助に当たっちゃったり一人ぼっちにしちゃった。本当にごめんね。〟


――――――――――――――――


ぐっちょん、ぐっちょん。ぐっちょん、ぐっちょん。


包丁で肉を切る音がする。それも普通の肉ではない。


()()()()()()


「ステーキ、トンカツ、ハンバーガー...それと...。」


「はァ...アイツ腹減りすぎだろ。まぁいいけどさ。」


肉を切って調理しているのは妖精〝ハシナモ〟。


()()()()()()()()()()


「そうそう遊助、お前の母親の最後の言葉なんて言ったと思うゥー?」


「〝遊助、他のみんなみたいな快適な生活をしてあげられなくてごめんね。〟だってよぉwww」


「笑いすぎて腹が痛いぜwwwお前がこれから食うのが()()()()()()()()()()()()()()w()w()


「まァ、アイツ自身が快楽を望んでるんだしアイツに喰われるのもお前にとっては光栄だろ。...っと出来た。」


出来たのは何の変哲もないステーキ等の肉類の食べ物。妖精は豪快な笑いを飛ばして完成を喜ぶ。


そして遊助の元へ届けるべく踵を返す。


〝妖精〟なんてもんはただの謳い文句だ。ロマンティックなんてイメージを勝手に人間によって付けられてそうあらざるを得ない。


だが、醜悪。最低。非道。これらを兼ね備えた生き物にロマンティックなんて言葉は通用するのだろうか。"実際"と"妄想"は違う。そういうのを理解するにあたってこれはいい例だろう。


―――――――――――――


「遊助〜!帰ってきたぜー。頼まれてた夜ご飯用意出来たかんなー。楽しみに待ってろー」


キッチンに料理が現れる。美味しそうな料理。これから豪華なディナーが始まることを予感させる。


肉や野菜や魚。色々な種類が出揃っている。これに目をキラキラとさせながら「いただきます!」と元気に言葉を紡いでディナーを平らげる。


「ん〜!美味しい!でもこの肉なんか変な味がするような...まぁ、美味しいからいっか!」


「食え食えーもっと食えー!」


このように今日はハシナモと楽しい楽しいお食事をしました。







――――――そういえばお母さんの帰り遅いなぁ。













































読んでいただきありがとうございました(*^^*)

次回もほのぼのするお話を展開するのでお楽しみに!

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