……ナ……ミ……ダ……
アキラちゃんは絵が上手だった。
高校の美術部並だ。
頭は右目から上が無くなっているし、制服はズタズタに裂けている。
裂けているのは制服だけじゃなさそうだ、絵を良く見れば体もバラバラに千切れている。
『この絵は本当にワタシ? 自分が見えるかぎり怪我一つ無いけど?』
「僕は見えているまま描きました」
「…晶の言う通り…彼より下手だけど私も描いておいたわ…左右逆だけど…」
ワタシはアキラちゃんとゴスロリ娘の絵を見比べる。
確かに左右は逆で絵の上手い下手が違うけど、同じ傷が描かれていた。
ゴスロリ娘と比べるとアキラちゃんは傷を目立たなく描いてくれていた。
自分の姿はワタシが見る限り変化は無い……アキラちゃんの優しさが胸に広がる。
「うらやましいわ。鶴っちも晶君も本当に幽霊が見えているみたいね」
『あなた達は幽霊が怖くないの?』
「……とお姉さんが聞いていますが、僕は怖い幽霊が沢山います。だけどお姉さんは平気です」
「…全く怖くない…」
「あたしは見えないから。見えないものをどうやって怖がれば良いの?」
『ワタシなら見えないからこそ怖いと思うのに。最近の小学生は強いわね』
「お姉さん。彼女達が特別です。僕は普段なら絶対に近づきません」
『……どうしてワタシへ話しかけてくれたの?』
「お姉さんが泣きながら人を呪っていたから。黒井さんから悪霊になる過程を聞いたから」
『ワタシが泣いていたの?』
「はい。いっぱい涙を流して」
自分には全く覚えが無いけど、アキラちゃんが言うのだから本当だと思う。
どんなに辛くても泣かないと頑張っていたのに。
そうか……ワタシは泣いていたのか……なんかスッキリした気分なのはアキラちゃんのおかげ?
気分良くなっているところへ大きな少年が女子トイレに平気な顔で入ってきた。
「男子トイレは掃除道具の中から便器の中まで調べたけど何も無かったぞ」
「何を平然と女子トイレに入って来ているのよ!」
「ヴァガラロヲ! ヲヅゼヌダヂジラグァル!」
健康的美少女のかかとが大きな少年のつま先を踏み抜く。
大きな少年は言葉にならない悲鳴をあげながらトイレの床を転げ回った。
ワタシの良い気分は二人の行為で霧散した。
どうしてワタシじゃなくて、こんな二人がアキラちゃんといつも一緒に居られるの。
ワタシは『死後の世界も不条理だ』と神様を呪った。




