……ヌ……ケ……ル……
あれ?
もしかして「あの娘」ってワタシの事?
でもはっきりとワタシの名前が出た訳じゃないし……
仁義礼智信で揃ったワタシの名前を忘れる訳ないし……
恥ずかしくて返事はなかなかできなかったけど「ヒトミ」って名前で呼ばれるし……
ワタシは残った二人と共に跨線橋を渡り上りホームへ戻る。
「本当は名前覚えているでしょ?」
「ヒトミの事?」
「そうそう。あの娘居ても居なくても変わらないし」
「今も後ろへ居たりして」
「やめてよ。幽霊とか苦手なんだから。目の前で死んでるし。ホント迷惑」
「あっ。ヒトミ。久しぶり」
嬉しい。
慌ててワタシも手を小さく振る。
でも、どうして毎日会っているのに「久しぶり」なのだろう?
「やめてったら」
「嘘だし。あたし見える人だから。ヒトミはここに居ないし……」
ワタシは『いるから。ずっと一緒にいるから』と言いたいのに、喉から声が出ない。
いつもこうなる。
言いたい事があってもしゃべられない。
無理にしゃべろうとすれば嗚咽となり「気持ち悪い」と言われてしまう。
「……と言うよりヒトミが幽霊で居ても気付かないし。顔覚えてないし」
「言えてる」
「幽霊なんてあちこち居るし。ほら。あそことか」
「だから。やめてって」
そう言い残して彼女達は上りの電車へ乗り込んだ。
電車は、放心したワタシを一人残して、動き出す。
この日を最後にワタシは自分からグループを抜けた。
そういう事にした。




