……ホ……ウ……カ……ゴ……
『おーい。みんなここだよー』
と本当は大きな声でみんなを呼びたいけど、恥ずかしくて実行出来ない。
肘だけ曲げて腰まで上げた右手を小さく振る事がワタシの精一杯。
五人は中学がバラバラで高校へ入学してから知り合った。
仁美、義子、礼子、智子、信子。
こんな名前が一つのクラスへ集り自然とグループを作った。
引っ込み思案で話し下手なワタシが自然と所属できたグループ。
放課後はお互いの電車へ乗るまでホームでくだらない話をする事がワタシ達グループの日課。
みんなが楽しげに話しながら改札口を通りワタシと合流。
時刻表を確認して電車が先に来るホームへ移動する。
今日は運悪く下りが先。
みんなで跨線橋を渡る必要がある。
ワタシは最後までみんなと一緒だから毎日往復するけどね。
「ゲッ。今日は往復かぁ」
「うちらは毎日、階段登るし」
「五分遅れかぁ。運ないわぁ」
「そう言えばレイ。例の噂は知ってる?」
「ヨッシー。この駅で霊が出るって噂でしょ?」
「レイはレイのレイが出る噂を知っている。同じ仮名に正しい漢字を入れなさい」
「トモ! やめてよ。放課後までテストしたくないわ」
「シン。うちらも受験生よ。テストからは逃げられない」
四人は名前に【子】が付く事を嫌っていて、お互いを仇名で呼び合っていた。
ワタシだけが『ヒトミ』と本名のままだ。
話し下手なワタシは今日も四人の会話を最後尾から楽しく聞いている。
「あの娘だったりして」
「あの娘?」
「あぁ。一年の時、うちらの後ろへいつも付いて来てた娘?」
「そうそう」
「わざわざ入場券まで買って付いて来た!」
「それ! うちらがいつもホームへ行く事で分かれって」
「痛い娘。いたっけねぇ。ホントウザかったわぁ」
「名前何だっけ?」
「覚えてないって。むしろしゃべった事ないし」
「うちもしゃべった覚えないわぁ。生きてる時からすでに幽霊だったよね?」
「言えてる」
「それじゃ。うちら電車来たから行くわ。あいつ思い出したくないし話題にしないでよ」
下りの電車が出発した。




