……ト……ケ……ル……
「由宇。鶴っち。聞こえたよね?」
「おまえらも『ありがとう』って聞こえたのか?」
「…聞こえた…幽霊から感謝されたのは初めて…」
「みなさんもヒトミ姉さんの声が聞こえたのですか?」
「あぁ。改めてよろしく。ヒトミ姉さん」
『よろしく。大き……みんなごめんね。もう一度名前教えてくれないかな?』
「僕は根本晶です」
『よろしく。アキラちゃん』
あれ?……返事が無い……ただのしかばねはワタシだ……
『アキラちゃん。訳さないでね。みんな。ワタシの声が聞こえる?』
反応が無い。
むしろアキラちゃんへ「ヒトミ姉さんは?」と尋ねている。
ゴスロリ娘もワタシを見失ったようでキョロキョロとあたりを見回している。
彼女は『悪霊しか見えない』と言っていたっけ。
どうやらワタシは悪霊から脱したみたいね。
『……聞こえていないのね。さっきはどうして聞こえたのかしら?』
「……とヒトミ姉さんが疑問に思っています」
「…きっと【想いの力】…人間の一番強い感情は怒り…だから悪霊の声は聞こえやすい…」
「ヒトミ姉さんは『ありがとう』だったぜ?」
「…だから私も感謝の言葉は初めて聞いた…」
「ヒトミ姉さんの体から光の粒が天に昇っています!」
「成仏なの? 成仏ね! くぅぅ直接見られないのが残念だわ」
「まもなく急行列車が通過します。危ないですから白線の内側までお下がりください」
自分でも体から光の粒子が天へ昇っていく事が確認できる。
直感的に『あぁこれからワタシは天に召されるのだ』と実感している。
急行列車が通過をするなら、同級生達はまだホームに居るはず。
彼女達にワタシの言葉が届くかは分からない。
だけどワタシの【心からの願い】ならばきっと届く。
心へ積った【黒い雪】は完全に溶けて無くなっていた。
『みんなありがとう。ワタシは成仏するまでにやりたい事があるの。行くわね』
聞こえたのはアキラちゃんだけだったみたい。
アキラちゃんは「いってらっしゃい。ヒトミ姉さん」と最高の笑顔で送り出してくれた。
ワタシは「まもなく急行列車が通過します」とアナウンスを聞きながらホームへ走る。
同級生の四人は跨線橋を渡る必要なく見つかった。




