……ジ……コ……
金属と金属の擦れ合う甲高い音が大音量で長く長く鳴り響く。
その音がだんだんと小さくなるのに代わり、人の声とは思えない悲鳴が辺りを満たしていく。
「人が……女子高生が轢かれたぞ!」
電車に轢かれた学生は三人。
一人は鉄の車輪と線路でバラバラにされ軌道内にばらまかれた。
一人は電車とホームに挟まれ擦り下ろされ、赤と白と桃色の塊となり、長い線をホームへひく。
一人の姿はどこにも見つからなかったが、駅を離れた遠くからも人の悲鳴が聞こえてくる。
最後に三人を突き飛ばした一人は人の形をした別の何かに変化していた。
「……うちは悪くない……うちは悪くない……うちは悪くない……うちは悪くない赦して……」
目を閉じ、耳を手で塞ぎ、歯をカチカチ鳴らし、へたり込んだホームへ水溜りをつくる。
彼女のスカートの中から「ブリブリヴゥゥ」と凄い音がした。
夏の陽射しで焼けたコンクリートが水溜りを湯気に変えていく。
辺りからは「クセェ」と言う非難の声もチラチラと上がる。
ホームから悲鳴が消えると次はスマホを使う音が満ちてきた。
写真を撮る者、電話をかける者、文字を入力する者、みな一様に狂っている。
かく言うワタシの視界は白と黒だけしか色が見えなくなっていた。
見上げれば青いはずの夏の空は黒で染まり白い雲が余計に際立つ。
太陽も見えるのに辺りは夜より暗くなっていた。
「……姉さん」
改札口の方からワタシを呼ぶ声が聞こえる。
振り向けば、そのコは夏の太陽よりも明るく輝いていた。
ワタシの体は、誘蛾灯に誘われる羽虫の如く、明るく優しい灯火へ向かう。
ワタシは『どうしてこんな事になったのか?』と思いながらヨロヨロと歩む。
一つ残った大事な人の元へ……
『……アキラちゃん……』
ワタシの呟きは、ざわつく周囲の喧騒に掻き消されるまでもなく、誰に聞かれる事もなかった。
ワタシの存在は、誰からも無視され通り抜かれて、誰も歩みを止める事はしない。
ワタシの意識は、消えゆく記憶を少しでもとどめる為、最近の出来事を必死に思い出す。
ワタシは……




