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「あっ…うぅっ…」


 リディアの両眼から涙が流れ落ちた。


 自分が触れてはならない領域に足を踏み入れたと理解した。


「ゆ…許して…」


 リディアが泣きながら命乞いする。


 もう、恥も外聞もなかった。


 この世から存在を消されたくない。


 そのためなら何でも出来る。


 くだらないプライドに固執するべきではない。


 自分の生命を懸けてまで、他の世界を救いたいとは思わなかった。


 所詮(しょせん)は女神としての遊び。


 自己満足。


 いくつもの世界を助けたというトロフィーが欲しかっただけ。


 使命感など欠片(かけら)もない。


 虚構(きょこう)の正義。


「ゆ…ゆるじて…」


 リディアの顔が醜く歪んだ。


 一方の彩音。


 その精神の中では。


(こんな奴…ぶっ殺すしかないね!!)


 ウーの怒りは、すでに爆発している。


 最初から、リディアを殺すと決意していた。


 彩音のやり方は甘すぎる。


 結局のところ、全ての世界は弱肉強食。


 次々と湧いてくる卑怯で最悪な奴らは、容赦なく叩き潰す。


 悪、即、滅。


 それが正解だ。


(彩音ーっ!! 今度は止めるなよっ!!)


 彩音は黙っている。


 ウーは感じた。


 自分よりもさらに猛烈な彩音の怒りを。


 リディアを生かしてはおかぬという、強い意思を。


 存在そのものを細胞レベルで消してやる。


(ウーちゃん…私…この人を殺すよ…)


 彩音の憎しみに満ちた決意が、ウーに流れ込む。


(やっと分かったんだね)


 ウーが喜ぶ。


(そう、こういうゴミは殺すしかない!!)


(うん、()る!!)


 2人の意思は完全に重なった。


 リディアの前に立つ、彩音の右拳が振り上げられる。


 リディアが恐怖で震えだす。


((死ねっ!!))


 彩音の憎悪が解放される瞬間。


 突然、リディアの前に1人の美しい女が出現した。


 リディアを庇うように両手を広げ、彩音に立ち塞がる。


 落ち着いた淡いブルーのドレスに身を包んだ、その女の容姿はリディアによく似ていた。


「お、お母様…?」


 彩音の前に立つ女、女神ヘレスは両手を地に突き、深々と頭を下げた。


「今回は我が子の仕出(しで)かした不始末、親である私がお詫びします」


 ヘレスの声は苦しみに沈んでいる。


「お…お母様…」


 リディアが(うめ)き、母神に右手を伸ばした。


 必死に這い寄る。


 ヘレスがその姿に、怒りの一瞥(いちべつ)を向けた。


「本当に情けない…自分がどんなことも許される存在と思っていたのか…これではお前が救ったと自慢する世界を力で支配していた悪人たちと何も変わらぬではないか!!」


 怒声を上げるヘレスの瞳から、涙が溢れ落ちた。


 ヘレスが再び彩音に土下座する。


「どうか…どうかお許しください…異世界転生をあなたに強要したことを。今後、2度とこのような真似はさせぬよう私が責任を持って、この娘を管理します。ですので、何卒(なにとぞ)、何卒、(ひら)にご容赦(ようしゃ)いただきたい」


 ヘレスが地に頭を(こす)り付け、懇願(こんがん)する。


 しかし。


 彩音の怒りは一切、(おとろ)えなかった。


 リディアは越えてはならない一線を越えた。


 その罪は死をもって(あがな)うより他、道はない。


 リディアの母親の言うことなど信用できない。


(ウーちゃん!!)


(分かってる! 私も彩音に賛成!! 邪魔するなら母親も殺す!!)


(殺す!!)


 再び彩音の胸中に必殺の闘気が充満していく。


 十二星座、獅子座の能力で何十倍にも高められた攻撃力は確実に2人の女神を抹殺できるはず。


 MAXボルテージまで上昇した怒りを今、解放する。


「おおおおおおおーーーーーっ!!」


 彩音の大咆哮。










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