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土の怪物ゴーレムが、野太い両腕を振り上げ、耳を突く大声を上げた。
がっしりとした巨体が揺れる。
「新手か!!」
サイラスは叫び、内心で首を傾げた。
ゴーレムは何故、このタイミングで現れたのか?
先ほどのワイバーンと共に襲撃してこないのは、何か不自然さを感じる。
あのリディアという女神が2匹を同時に召喚できないのか?
かなりハイレベルな魔法を使えると思ったのだが…。
ゴーレムが両腕を一気に振り下ろす。
彩音たちは皆、3様にその攻撃をかわした。
元々居た近辺に着地するが、そこをゴーレムの両拳が叩いた地面の激しい震動が襲った。
3人の身体がバランスを崩す。
その隙に、再びゴーレムが両腕を振り上げる。
次の攻撃が来るまでに彩音は何とか地を蹴り、跳び上がった。
サイラスはモグがもたつくのを見て、回避する機会を逸した。
その2人にゴーレムの右拳が振り下ろされる。
「させないっ!!」
ジャンプした彩音がゴーレムに急降下した。
巨大な拳が2人を叩き潰す前にゴーレムを倒すしかない。
その気迫で彩音は敵の頭に右拳を打ち込んだ。
「あ!?」
彩音が驚愕する。
銀河十二星座拳を体得してから初めて感じる、打ち抜けない手応え。
完全に弾き返されたのだ。
「おおおおおっ!!」
彩音は諦めず、空中ですさまじい連打を繰り出した。
全ての拳がゴーレムの硬い頭部に当たるが、ダメージは与えられない。
(ウーちゃん!!)
(こいつ、めちゃくちゃに硬い!!)
ウーの声が上ずる。
ゴーレムの両拳がサイラスとモグに迫った。
モグを両手に抱えたサイラスが、横跳びで巨大な拳をぎりぎりでかわす。
しかし攻撃による衝撃で吹き飛ばされ、地面を何度かバウンドし、転がった。
「くっ!!」
サイラスが呻く。
彩音が空中からゴーレムの前に着地する。
ゴーレム、相対する彩音、モグを抱き抱えたサイラスの位置取りとなった。
ゴーレムが再び咆哮する。
両拳を振り上げた。
(ウーちゃん!!)
(分かってる!! 水瓶座、いくよ!!)
彩音の頭の中に技のイメージが浮かび上がる。
「銀河十二星座拳、奥義その11!!」
彩音が両腕を伸ばし、身体の前で両手の指先を合わせ、ゴーレムに向ける。
「アクエリアスッ!!」
彩音の叫びと共に、合わせた両手の隙間から、猛烈な勢いの大量の水流が発射された。
それをまともに浴びたゴーレムの動きが止まる。
苦悶の叫びを上げ、身体を震わせた。
水流の勢いはさらに増し、巨体のゴーレムを1歩退がらせる。
また1歩、そしてまた1歩。
ゴーレムの全身はもう、ずぶ濡れになっていた。
(よし!! 次は双子座!!)
ウーの叫び。
(え!? でも、あいつには攻撃が効かないよ!?)
(大丈夫! 今の水瓶座の攻撃でふやけたから、もうあいつは硬くない!!)
彩音の頭に必殺技のイメージが浮かんできた。
ゴーレムがまたも両腕を振り上げるが、その動きは緩慢で弱々しい。
「銀河十二星座拳、奥義その3!!」
彩音の咆哮。
「ジェミニーーーーッ!!」
叫びと同時に、彩音の身体が2つに分裂する。
先ほどのアリエスの時とは違う、完璧な状態の2人の彩音。
「「うおおおおおおーーーーーーっ!!」」
同時に叫び、2人の彩音がゴーレムに突進した。
片方の彩音が跳び上がり、ゴーレムの頭部に迫る。
もう一人の彩音は地を駆け、ゴーレムの太い脚へと突撃する。
2人の彩音が眼前のゴーレムに、猛烈な打撃を繰りだす。
両手両脚を駆使して、ゴーレムの身体に連打攻撃を打ち込みまくる。




