表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/38

23

 そこでサイラスは眼が覚めた。


 彩音がリディアの連れてきたクラーケンを倒した次の日の朝。


 自室のベッドの上だった。


 嫌な夢だ。


 アリアの最後は、今でも心を重くする。


 結局、この世界へ転送されたのはサイラスたち4人だけだった。


 アリアの姿は消えていた。


 おそらく魔法の指輪の効果は死者には及ばなかったのだろう。


 何故。


 あの時、何故、アリアはあんなことを。


 それがサイラスの妻としての彼女の役目だったのか?


 それにしても悲しすぎる。


 暗い気持ちでサイラスは身を起こした。


 制服を着て、台所へ向かう。


「「王子、おはようございます」」


 IHコンロの前のモグと、マレーネの側に立つメグが同時に頭を下げた。


「おはよう、メグ、モグ」


 サイラスが返した。


 そして続けて「おはようございます、母上」とマレーネに挨拶する。


「おはよう、サイラス」


 マレーネが頷く。


 サイラスの「田中英雄と呼んで欲しい」という願いは完全に却下されている。


「モグから聞きましたよ」


 マレーネが不機嫌そうに言った。


 台所のモグの背中がビクッと震える。


(モグのやつ、余計なことを…)


 モグの背中をしばし、にらみつけるが全くこちらを向かない。


「この世界の娘を随分(ずいぶん)、気にかけているようね」


 マレーネの瞳がギラッと光る。


「あー」


 サイラスは誤魔化(ごまか)すように、斜め上に視線をやった。


「ど、同級生ですよ」


 マレーネが眼を細め、サイラスを見つめる。


 完全な疑いの眼差し。


 テーブルの上の紅茶をひと口飲み、カップを戻すと再び口を開いた。


「あなたは王子なのですよ」


「はい、分かっています」


「遊ぶ相手は選びなさい」


「遊び!?」


 サイラスの眉が一気に吊り上がる。


「母上!!」


「妃は由緒正しい家柄の者でなければなりません」


「由緒正しい!?」


 サイラスが呆れた。


「この世界のどこにカルナディアの名家の者が居るのです!?」


「そ、それは…」


 マレーネが口ごもる。


「その条件では僕はこの世界では実質、恋愛禁止になります。アイドルじゃないんだから!」


「サイラス様は私たちのアイドルです!」


「そうです、アイドルです!!」


 メグとモグが横入りする。


「恋愛!?」


 今度はマレーネの眉が吊り上がった。


「やはり、その娘に気があるのね!」


「あっ!」


 サイラスの眼が泳ぐ。


「た、ただの同級生ですよ」


「とにかくあなたは庶民とは違うのよ! 自覚を持ちなさい!!」


「はぁ」


 肩をすくめ、ため息をついたサイラスは席に着き、朝ごはんを食べ始めた。




 星雲学園の上空に渦巻く黒雲。


 すでに別空間よりの干渉を受け、時間は停まっている。


 グラウンドで向かい合う2人。


 龍王院彩音とリディア。


 激しく、にらみ合う。


「小娘、異世界転」


「断るっ!!」


 リディアの言葉に彩音が割って入る。


 彩音の背中には「銀河」の2文字。


(そろそろ本当に始末した方が良くない?)


 頭の中でウーが提案する。


(それは嫌)


(何でよ?)


(何でも!!)


(しょーがないなー。じゃあ、さっさと追い払うか。アタシはこの世界の日常生活を楽しみにしてんの。こんなわけの分からない異世界わがまま女の(つら)を拝んでる暇はないからね)


 彩音が両手を胸の前で構える。


 相対するリディアは、首にかけたネックレスを外すと右手で上にかざした。


 首飾りについた大きなエメラルドが、強烈な光を放つ。


(な、何!? この光!?)


 彩音が慌てた瞬間。


 全てが闇に包まれた。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ