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「目立つなと(おっしゃ)られたのは王子です!!」


 モグの言葉にサイラスはハッとした。


 確かに、その通りだ。


 眼前の戦いは明らかにサイラスとは無関係。


 だが。


 クラスメイトが。


 しかも龍王院彩音が。


 危険と向き合っている。


 助けたい。


「王子!!」


 モグの声。


「もしも王子に万が一があれば、マレーネ様はどうなります!?」


 サイラスの動きが止まった。


(こんな…これではまた…あの時と同じ…)


 以前の記憶に胸が痛む。


(彩音!!)


 ドラゴンの炎をかわす彩音にウーが呼びかけた。


(何!?)


(このままじゃ、らちが明かない!! 必殺技かますよ!!)


(使えるの!?)


(うん!!)


(じゃあ、使おう!!)


(まずは天秤座!!)


「銀河十二星座拳、奥義その7!!」


 彩音が叫ぶ。


 と同時に大地が揺れた。


 地面にひびが入り、下から巨大な物体がせり上がってくる。


 彩音以外の全員が驚愕で言葉を失った。


 物体の正体は巨大な天秤。


 一点の曇りもなく、金色に輝いている。


 地中から現れる際、左側の半円球の受け皿にドラゴンの身体をすっぽりと収めたため、そちら側に天秤が傾いた。


 ドラゴンは突然の事態にパニックを起こし、器の中でバランスを崩すとひっくり返った。


「な、何じゃこれは!?」


 ようやく呆然から回復したリディアが叫ぶ。


 前回の戦いから、まだ完全に立ち直ってはいない。


 策はそれなりに考えたのだが、結局、具体的な案が浮かばないうちに、一介(いっかい)の小娘に敗れた屈辱感が甦り、怒りのままに再戦を挑んでいる。


 この世界には魔法のフィールドを張ってある。


 その効果で母神ヘレスには気づかれない。


 後は彩音を痛めつけて改心を(うなが)し、異世界転生を承諾させるだけ。


 それだけという思いが(かえ)ってリディアの恨みの炎に油を注いだ。


 早く。


 とにかく1秒でも早く、彩音を屈服させ、泣きながら謝る顔が見たい。


 反省し「リディア様が正しかったです」と言う姿を。


 そして最後にはこの正義の女神を(うやま)い、忠誠を誓った勇者の1人となるのだ。


 それが叶うまでは、一時も心が休まらない。


 気がつけばリディアは配下の火竜を召還し、彩音の世界への門を開いていた。


(今度こそ!!)


 しかし今、現実に眼の前に繰り広げられる光景とは。


 ドラゴンが天秤の左の器内でもがく姿。


 彩音が空中高く飛び上がった。


 そして飛び蹴りの姿勢で、右の天秤へと猛スピードで落下してくる。


「ライブラーーーーッ!!」


 彩音が叫ぶ。


 轟音と共に彩音が右天秤に激突する。


 その勢いで左天秤がシーソーの如く、跳ね上がった。


 天秤は、まるで投石機のようにドラゴンの巨体を上空に射出した。


 体重を感じさせず、ドラゴンが宙を舞う。


 必死にもがくが、翼の無い身では空中で体勢を制御できない。


 ただジタバタするのみ。


(とどめは山羊座!!)


 ウーが吼える。


「銀河十二星座拳、奥義その10!!」


 彩音が咆哮した。


 またも呆然としていたリディアが、ビクッと身体を震わせる。


 打ち上げられた後、今度は猛烈なスピードで地上へと落ちてくるドラゴンへ彩音が跳躍する。


 その身体が空中で天地逆となり、両脚を上にして天に昇っていく。


「いやん!!」


 技の最中にも関わらず、彩音が突然、妙な声を上げた。


 体勢が逆さになったので、このままでは膝辺りまでの長さのスカートがめくれ上がり、下着が(あらわ)になると気づいたからだ。


 校舎近くで彩音を見上げるサイラスが、スカートがめくれる気配を察知して「わ!?」となる。


(りゅ、龍王院さんのが見える!?)


 しかし次の瞬間には、サイラスの両眼はモグの小さな両手で塞がれた。


「ダメです、王子! 眼の毒です!!」


「な、何も見えないー!!」


 サイラスが、やや残念そうに叫ぶ。

















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