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カルナディアにも何種類か生息する竜、ドラゴンに似ている。
背中に翼が無いタイプのドラゴンだ。
ドラゴンは穴からこちら側に進み出た。
体長10mはある。
全身をびっしりと覆った鱗は血のような赤。
ぎらつく双眸で辺りを睥睨する。
(これは異世界からの干渉か!?)
サイラスに戦慄が疾る。
カルナディアからの追手の可能性も無くはないが、ドラゴンは明らかにサイラスが知る種類ではない。
思考を巡らせるうちにドラゴンが巨体を揺すり、咆哮した。
すさまじい叫びがサイラスの耳を突く。
が、玄関のガラス戸は震えない。
(この世界への影響はシャットアウトされている?)
どうやら侵入してきた側は、この世界に被害を与えるのは避けたいようだ。
彩音と対峙するドラゴンの背から、何者かが地面に飛び降りた。
「龍王院彩音!!」
その人物が大声で呼ぶ。
彩音は相手をにらみつけた。
「リディア!!」
「異世界転生しろ!!」
正義の女神リディアが怒鳴る。
「絶対にしない!!」
彩音が即答する。
リディアは前回と違うデザインの、赤色のドレスを着ている。
相変わらずの美貌と完璧なプロポーション。
(何者だ? 龍王院さんと面識があるのか…)
サイラスは校舎玄関から外に出て、2人の様子を窺った。
彩音がリディアへと一歩踏み出す。
「痛めつけてやれ!!」
リディアが叫ぶと同時に、ドラゴンがまたも咆哮した。
彩音の制服に「銀河」の2文字が浮かび上がる。
(このバカ女神、しつこいな)
ウーが呆れた。
(あれだけボコられたのに、全然懲りてない)
(ウーちゃん、頼むね)
彩音が頭の中で答える。
(あいよ! もう銀河十二星座拳はセットしたから大丈夫。この前みたいにシメてやりなよ!)
(了解!!)
彩音が前方へ走りだす。
が、リディアは後方へと跳び、側に居たドラゴンが彩音の進路を塞いだ。
大口を開け、突進してくる敵に向ける。
口の中に炎が燃え上がった。
「いけない!!」
サイラスが思わず叫び、グラウンドに踏み出した瞬間。
その右腕を掴んだ者が居る。
サイラスが振り向く。
「モグ!?」
メイドのモグが立っていた。
サイラスの腕を掴んで放さない。
「王子、ダメです!」
「しかし!」
サイラスがそう言うと同時に。
ドラゴンの口から、球状の炎が轟音と共に発射された。
「龍王院さん!!」
モグの手を振り払ったサイラスが再び一歩踏み出すが、その刹那、火球は彩音へと突っ込む。
当たれば即死は免れない。
だが。
彩音は両腕を腰の横で構え、束の間の後、諸手突きに打ち出した。
「うおおおおーーーーーっ!!」
両拳が火球に叩き込まれる。
(危ない!!)
サイラスの心臓がギュッと締めつけられた。
以前も感じた無力感。
今回はさらに激しい痛みも伴っている。
彩音が火だるまになる姿が頭を過った。
しかし、その予想は裏切られた。
諸手突きを受けた火球は粉々に消し飛んだ。
飛び散る火の粉は彩音にも降り注ぐ。
しかし見えないフィールドのようなものがそれを防ぎ、肌はおろか制服にさえ燃え移らない。
己の攻撃が敵に何のダメージも与えていないと悟ったドラゴンは、怒りの雄叫びを上げた。
その口から再び、炎が吐き出される。
今度は火炎放射器のような線状の炎だ。
彩音はこれをジャンプして巧みにかわした。
彩音を助けに入ろうとサイラスが進む。
しかし、それをまたもモグの手が止めた。
「邪魔するな!」
「王子!!」
いつもの控えた調子ではない。
モグの口調は真剣だ。




