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 女神リディアと彩音が戦った日、すなわち彩音とサイラスが偶然出逢い、いっしょに登校した日から1週間が過ぎた。


 星雲学園2年B組の教室で、2人は2限目、世界史の授業中。


 後ろから2番目中央の席に座るサイラスは教師の説明を聞き流し、気づけば左の窓際に居る彩音の横顔を見つめていた。


 彩音は前を向き、真剣に教師の授業を聞いている。


 いっしょに登校した日以来、2人は挨拶しか言葉を交わしていない。


 気になっていた彩音と偶然、あれほどの会話が出来たのは嬉しかったが、そこから妙に意識してしまい、なかなか自然に声をかけられなかった。


 彩音は元々、人見知りだと言っていた。


 サイラスもクラスメイトたちが居る中では、気後れしてしまう。


 魔法でクラスメイトたちの意識を逸らせる手もあるが、なるべく使いたくはない。


 結果、話をする前よりも彩音を見つめる回数が増えるだけで、この1週間を過ごして居るのだ。


 彩音の白い肌と凛とした表情。


 クールな面差しは見ていて、吸い込まれるようだった。


 まったく飽きない。


(これは…もう…)


 サイラスは思った。


 自分でも気づいている。


 カルナディアに居る時、ついぞ誰にも抱かなかった感情。


 マレーネが薦める数多の女性たちには感じたことのない…そこまでで思考が止まった。


 1週間前、マレーネが口にした「若妻」の姿を思い出す。


 愛情は感じていなかった。


 ただ不憫に思う。


 政略結婚。


 しかし2歳下の彼女は健気にサイラスを愛し、そして…。


 胸がズキリと痛んだ。


 彩音と話した際の胸の(うず)きとは違う感覚。


 ああ。


 何故、あんなことになってしまったのか?


 突然。


 空間が(ひず)んだ。


 周りの空間が強制的に切り替わったような感覚。


 教室内の全員が突如、完全に停止している。


(これは!?)


 サイラスには分かる。


 これは魔法だ。


 何者かが教室…否、もっと広い範囲に魔法をかけたのだ。


 おそらくは時間を止め、空間を切り離す効果か。


 この世界に対するカスタマイズが施されているようで、カルナディア出身のサイラスには影響が無かったようだ。


 術者は異世界から来たサイラスの存在を知らない?


 裏切った大臣たちの追手ではないのか?


 どうも魔法の匂いが違うというか…妙な違和感がある。


 カルナディア魔法っぽくないのだ。


 とにかく現状を把握するのが優先。


 そうサイラスが考えたところで。


(!?)


 視界の中で突然、動き出した者が居る。


(龍王院さん!?)


 そう、それは彩音だった。


 席を立ち、険しい表情で教室を出ていく。


 あまりの驚きに、サイラスは呆然とそれを見送った。


 自らがカルナディア人であるという事実を知られたくない心理が働いたせいもある。


(これはいったい!?)


 彩音もこの世界の住人ではないのだろうか?


 だからこの大規模範囲魔法の影響を受けない?


 一瞬の思考の後、サイラスも席を立ち、彩音を追った。


 ぎりぎり彩音が階段を下りていく姿が見える。


 サイラスも足音を殺し、隠れつつ続く。


 状況が分かるまでは、彩音に声をかけるのはやめた。


 彩音は校舎玄関から広いグラウンドへと走り出る。


 グラウンドの中央で立ち止まった。


 校舎の玄関まで来たサイラスも、そこで足を止める。


 彩音の前方の空間に、真っ黒い穴が出現した。


(何だ!?)


 穴の入口で小さな放電がバチバチと音を立てる。


 その穴から。


 巨大な生物が、ぬっと頭を出した。


(ドラゴン!?)


 サイラスは驚愕した。












 

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