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結婚生活について

続きをご覧いただきありがとうございます。

楽しいランチの合間にルイからプロポーズを受け喜んでいたのも束の間、多夫一妻となるよう頼まれてしまった。




グラスの水を少し揺らして一口飲む。


「他の夫となる方は、どのような人ですか?」


ルイはいい人だと感じられるのでプロポーズを喜んで受けたが、それ以外の人は会ってもいないのに引き受けられない。


私のテンションが一気に下がったのを見てルイは慌てて説明する。




要約すると


・ベルナルド領にいる若い男性のできるだけ多くの人と結婚してもらいたい

・ルイの兄弟である2人の弟も候補である

・弟達はコリーヌベルト国の中心地で働いているが休暇が取れ次第帰ってくる

・その他の領内の男性は1ヶ月後の祭りで会う


だそうだ。




「分かりました。」


私が一言だけ発して黙りこむとマリーさんが泣き出した。


「それが当然の反応です!

私はルイとの結婚に応じてくれるだけでも本当にありがたいと思っています!」


そしてアランさんを見て続けた。


「マナミさんが決心できるまでは、他の男性と無理に会わせるのは止めましょう。」


ルイもそれに同調し


「私からもお願いします!」


と頭を下げてくれた。


アランさんは、やれやれと頭を振り


「私は説明しろとは言ったが、無理強いしろとは言っていないつもりだがな。」


と私を見て苦笑した。



それを聞いて私は肩の力が抜けるのを感じた。

強制ではないのか。

それに相手だって選ぶ権利があるだろうから私と結婚したい人なんていないかもしれない。

早とちりしてしまった。

自己嫌悪にかられる。

元の世界でも思い込みによってミスをすることがあったのに中々直らない。


「思い込みで失礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。」


と私が謝ると皆さんは直ぐに否定してくれた。


「私の説明が下手なばかりに不安にさせて申し訳ないです。

まだ会ったばかりなので信じていただけないかもしれませんが、本当は私だけのマナミでいてほしいと思っています。

それだけは忘れないで下さい。」


ルイの真摯な声に思わず顔を向けると辛そうな笑顔が返される。



元の世界で言われても信じなかっただろうに、今はその言葉だけを信じたくなってしまう。

私は騙されやすい人間だったのかと自嘲する。

それでも、その言葉を信じていたい。


「ルイを信じます。」


とルイに笑いかけると


「ありがとうございます!」


と笑顔で返してくれた。




「マナミに説明することは他にもありますが続けても大丈夫ですか?」


「よろしくお願いします。」


私は白い陶器の器に入ったプリンに手を伸ばした。




要約すると


・私専用の寝室がある

・寝室の外には必ず1人執事がいる

・シャワー、トイレは寝室にある

・浴槽は1階の奥にあるが誰でも入れるので執事に声をかければ人払いしてくれる

・着替えは寝室に用意してあるが気に入らないようであれば別のものを用意してくれる

・食事はダイニングか寝室で食べることができる

・基本的には朝昼夕に準備が整い次第、執事が知らせるからダイニングで取ってほしい

・ルイは仕事があるので昼は会えない


とのことだ。


至れり尽くせりである。

でもご飯を食べる以外は何をすれば良いのか分からない。


「何か仕事はありますか?」


すると皆顔を見合わせた。

変なことを言ったようだ。


「強いて言えば私との夜伽ですかね?」


とルイが苦笑いして言った。


「昼間にすることはないですか?

魔法や貴族のマナーを習うとか。」


ルイは合点がいったようで


「お望みであれば家庭教師を用意します。

少し時間を下さい。」


と微笑んだ。

魔法が習えるのは楽しみだ。


「そういえば、魔法で言葉が翻訳されているそうですね?」


出会った直後にルイが言っていた気がする。


「そうです。

召喚する際、貴女の体はこちらの世界で再構築されるので脳に魔方陣を埋め込んでいます。」


凄い便利な魔法があるんだと感動するが、体が再構築されることに驚く。


「体がそのまま転移するわけではないのですね。」


「そのことを説明しますと…」


要約すると


・この世界と元の世界はパラレルワールドである

・元の世界では電気が発明されたが、この世界では魔法が発明された。

・パラレルワールド間では物質のやり取りはできないが情報はもらうことができる

・この召喚では情報として私の魂をもらった

・魂の器となる肉体はこちらの元素でコピーを作ることになる


ということだ。

私の化粧がなくなっていたのはコピーの対象にされていなかったためだろう。


「元の世界にも長距離を一瞬で転移するための理論として似たものがありましたが、それは実現されていません。

魔法は凄いですね。」


「危機があったから創られた魔法ですよ。

あのようなことがなければ今もなかったかもしれません。」


無神経なことを言ってしまったと自己嫌悪する。


「私からの質問は以上です。」


と言いつつプリンを食べ終えて器を置いた。


「では、食後の散歩に図書室へ行きませんか?」


ルイは若干疲れた顔をしていたので断ろうかと思ったが、また機嫌を伺わせることになる気がして散歩に行くことにした。




2階は大きな部屋が4つあるだけのシンプルな造りだった。

図書室、美術展示室、魔法研究室、儀式室である。

名前を聞けば用途が分かるが、それぞれ入って一周させてくれた。

どれも興味深いが私が使うのは図書室と魔法研究室だけになりそうだ。


「図書室は自由に出入りしていただいて構いません。

他の部屋も執事を伴っていただければ大丈夫です。」


「承知しました。」


「連れ回してしまったので疲れたでしょう。

寝室にご案内します。

夕食までゆっくり休んでください。」


「ありがとうございます。」




個室は広々としており中央にキングサイズはありそうなベッドが置かれている。

しかもお姫様が使いそうな天蓋付きである。

他には

大きなクローゼット

白塗りが美しいドレッサー

窓の近くに、座り心地のよさそうなソファとテーブル

が置かれている。

奥に扉が見えるがトイレやシャワーがあるのだろう。


「クローゼットの中にルームウェアがあるそうです。

良かったら着て下さい。」


そう言うとルイは出て行った。


早速クローゼットを開けてみると豪華なドレスと柔らかそうな生地のワンピースがいくつか掛けられていた。

その中から好きな色を見つける。

アイスブルーのワンピースだ。

ゆったりと作られていて丈は踝までありそう。

袖や裾にフリルがあしらわれている。

クローゼットの扉の内側に大きな鏡が付いていたので合わせて見る。

意外と似合いそうだ。


ワンピースを持って部屋奥の扉を開けると洗面台があり更に2つの扉があった。

それぞれ開けるとトイレとシャワーがある。

シャワーの扉の横に3段の細長いチェストがあり中にタオルや下着が入れられていた。


「このショーツやノンワイヤーブラも先に召喚された人が作らせたのかな?」


だとすれば、なかなか強気な人なのかもしれない。


「でも複数の男性と結婚しろと言われたら、そのくらいのワガママは許してほしいかも。」


バスタオルと下着を取り出してシャワーを浴びた。

シャワーも魔法で再現されていて驚いたが、ヘアドライヤーも付いていて更に驚かされた。




体が温まると眠気がやってきたので大きなベッドに寝転がる。

枕もマットレスも良い沈み加減で、あっという間に眠りに落ちた。




「マナミ…」


名前を呼ばれて目が覚めるとルイが覗き込んでいた。


「ディナーの準備ができましたよ。

食べられますか?」


「いただきます。」


と言って起き上がると水の入ったコップを渡されたので飲み干す。


「行きましょう。」


とルイが歩き出そうとするので慌てて言う。


「私は着替えてから行きます!」


「そのままで大丈夫ですよ。

私も部屋着ですし、父と母も楽な格好に着替えてましたから。」


貴族は一日中豪華な服を着ていると思っていたが偏見だったようだ。

ルイはシルクのような艶があるベージュのシャツと裾がゆったりと広がったネイビーのワイドパンツを履いている。

かなりリラックスした格好に見えるので、私のワンピースも浮かないだろう。


「では、このままで。」


と私が言うとルイは私の右手を取って自分の左腕に誘導した。

私が軽く腕を絡ませるとルイは歩き出した。




ダイニングには既にご両親がおり私達を見ると微笑んだ。

着席すると


「少し休めたかな?」


とアランさんが話しかけて下さったので


「お陰様でゆっくり休ませていただきました。」


と答えると今度はマリーさんが


「ワンピースよくお似合いです!

他にも色々用意したので遠慮なく着て下さいね。」


と誉めて下さった。


「ありがとうございます。

明日から着るのが楽しみです。」




そんな会話が続いていると扉が開いた。


「前菜をお持ちしました。」


ディナーはフルコースのようだ。

毎日なのだろうか?


「いつも通りで大丈夫ですからね。」


運ばれてきた温野菜のサラダと思われるものを観察しているとルイが言った。


「お気遣いありがとうございます。

そうさせていただきます。」


1番外に用意されたフォークとナイフを取りサラダを食べる。

この世界にもジャガイモやブロッコリー、ニンジンがあることに感動する。

オレンジ色のソースがかけられていてオーロラソースに似た味がする。

トマトに似た野菜もあるのかもしれない。

ケチャップもあれば、オムライスが食べたいな。


そんな妄想をしていると次の料理が運ばれてきた。

目の前に置かれた皿にはオムライスがのっている。


「もしかしてこれってオムライスですか!?」


思わず執事さんに声をかける。


「左様でございます。」


とスプーンを置きながら答えてくれた。


「お好きなんですか?オムライス」


とマリーさんから問われ


「はい!

ちょうど食べたいと思っていたので嬉しいです!」


とはしゃいで答えてしまった。


「私も好きです!

美味しいですものね!」


マリーさんもウキウキとした顔でオムライスを召し上がっていて、更に嬉しくなった。




楽しく夕食を食べ終えると食後のコーヒーを飲みながらルイが提案した。


「良かったら、もっと砕けた口調で話しませんか?

私だけでなく、この城の者には気を遣わずに打ち解けていただきたいです。」


これはありがたいと直ぐに賛成する。


「是非そうさせて下さい!

これからよろしくね、ルイ。」


「こちらこそよろしく、マナミ。」




お城の人とも仲良くなれるといいなと思う。

ここでの生活が楽しくなってきていた。


ご覧いただきありがとうございました。

ブックマーク、評価もありがとうございます。

次は登場人物が一気に増える予定です。

次回の投稿目標は明日の0時です。

よろしくお願いします。

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