召喚された理由
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何やら私に説明することがあるそうだが、ランチを食べながらすると言うのでダイニングに移動した。
ダイニングは長方形のテーブルに椅子が10脚置かれた広い部屋だった。
私が住んでいたワンルームアパートはキッチンや風呂場を足しても負けているだろう。
「こちらにお掛け下さい。」
セリューさんが椅子を引いてくれたので腰かける。
他の3人も執事が椅子を引いてから座っている。
これが当たり前であるという動作だ。
そういえば、この世界にもテーブルマナーがあるのだろうか?
「セリューさん、もし食べ方におかしなところがあったら教えて下さい。」
小声で話しかける。
するとセリューさんは優しい笑みを浮かべ、アランさんを見て言った。
「旦那様、マナミ嬢にはマナーなど気にせず食べていただいてよろしいですよね?」
私は驚いてセリューさんを見たが微笑んだままだ。
「勿論だ。
ランチは食べやすいようにサンドイッチにしたからリラックスして食べてほしい。」
アランさんは口髭を蓄え彫りが深く威厳のある顔をされているが、今は親しみやすい笑みを浮かべている。
「まだ緊張されてるでしょうけど、たくさん食べてくださいね。
デザートにはプリンも用意していますよ。」
マリーさんは小顔なのに私より大きそうな目を優しく緩ませている。
「お気遣いありがとうございます。
たくさん食べます。」
私も笑顔を浮かべた。
皆さんが優しく接して下さるので段々緊張も解けてきた。
「お食事をお持ちしました。」
そう執事の方が言うと目の前に大皿が置かれた。
皿にはサンドイッチ、ナゲット、ポテト、プリンが盛り付けられている。
元の世界にあったランチプレートを思い出させる。
「異世界の方が好きだと伝え聞いたのですが、マナミも好きですか?」
ルイが尋ねる。
私の他にも異世界人がいることに驚いたが、その人に感謝したい。
私もサンドイッチは好きだし、とても食べやすい!
「大好きです!」
テンション高く答える。
するとルイが驚いた顔になり更に赤くなった。
その表情を見て私も赤くなる。
「喜んでいただけたようで何よりだ。」
アランさんが楽しそうに言う。
「ポテトが冷めないうちにいただきましょう。」
マリーさんも微笑んでいる。
「いただきます…」
私は誤魔化すようにサンドイッチを一口食べて感動した。
パンも卵もフワフワの卵サンドだ。
「フワフワでとても美味しいです!」
素直に感想を伝えると
「口に合って良かった。」
アランさんも卵サンドを片手に微笑んだ。
卵サンドを食べ終えるとルイが切り出した。
「マナミ、説明したいことがたくさんあるので食べながら聞いて下さい。」
私はハムサンドを手に取り、先を促すため頷いた。
「まずは、なぜ異世界から召喚したのかを話しましょう…」
要約すると
・20年前にコリーヌベルト国は隣国との戦争に敗れた
・敗戦国の賠償として若い女性が根こそぎ奪われた
・女性がいないため子供が作れず途方に暮れた
・魔法に長けたものを結集し異世界から女性を召喚する方法を10年かけて編み出した
・魔法は貴族が得意なことが多いため、貴族の跡継ぎに召喚方法が伝授された
・ルイは何度か挑戦し、やっと成功して私が召喚された
ということらしい。
「こちらの都合で召喚したことは申し訳ないと思っています。
だから、生活では不自由させないよう努力します。
私と結婚し子供を産んでください。」
ルイが真剣な顔でプロポーズする。
この部屋にいる全員が同じように真剣な顔で頷く。
私は元の世界で、こんなに必要にされたことはなかった。
それに戻ったところで、トラックに轢かれ死んだ状態だろう。
私は、この人達のために頑張ろう。
子供を産むのも育てるのも大変そうだけど。
"貰えるものは貰っておけ"が母の口癖だった。
このチャンスも貰っておこう!
食べかけていたハムサンドを急いで食べ、水をぐいっと飲み干した。
「私は元の世界では、皆さんのような高貴な方に会う機会もないような平民でした。
それに結婚もしていません。
ここに召喚されたことは幸せになるチャンスだと思っています。
ふつつかものではございますが、よろしくお願いします。」
座ったままではあるが、できるだけ深くお辞儀した。
一瞬の静寂の後、拍手が響いた。
顔を上げるとルイは、ほっとした表情で私に笑いかけた。
アランさんとマリーさんは満面の笑みで大きな拍手をくれている。
セリューさんは泣き笑いで拍手してくれているし、他の執事達も拍手してくれていた。
更に、いつの間にか扉が開いていて兵士や執事達も拍手していた。
「ありがとうございます!
皆、マナミをよろしくお願いします!」
ルイが立ち上がって大声で言うと拍手が止んだ。
私も慌てて立ち上がり
「よろしくお願いします!」
と言うと
「「「喜んで!!」」」
と色々なところから声が飛んだ。
嬉しくてルイを見ると満面の笑みで近付いてきてハグされた。
驚いたけど私もハグを返すとまた拍手が起きた。
ゴホンとアランさんが大きく咳払いをし
「マナミさんに説明することは、まだまだあるぞ。」
と言ったので、拍手は止み私達は離れた。
椅子に座り直すとセリューさんがグラスに水を注いでくれたので一口飲む。
「次は何を説明しましょうか?」
ルイはまだ赤い頬を擦りながらアランさんを見た。
「結婚について、まだ説明が足りていないではないか。」
とアランさんは呆れたように言った。
「あぁ!
最も大切なことが抜けていましたね。
実は結婚するのは私だけではないのです。」
そう言われても意味が理解できず、私は言葉を発することができない。
「つまり多夫一妻となって欲しいのです。」
とマリーさんが付け足した。
理解した私は、今度は驚きで言葉を発することができなかった。
ハッピーエンドが好きなので、ご都合主義で進んでいきます。
次回は異世界生活についての説明が多くなると思います。
投稿目標は1週間後です。
よろしくお願いします。