シンデレラは悪役令嬢
母が再婚した男には子供がいた。
シンデレラという美しい女の子だ。
つまり、彼女は私の血の繋がらない妹というわけだ。母も姉も私も気に入らないと感じた。だから、みんなで彼女に冷たく当たった。
ある日、義父が死んだ。母が気落ちするのを見て私も辛くなった。あの子も一人でひっそりと泣いてた。
父親を亡くしたあの子はもうひとりきりなのだ。
より一層辛く当たる姉と母をよそに私はあの子に優しくした。彼女たちがあの子に床で眠るように言うと、私はこっそりと布団をかけて枕を渡した。
「ありがとう、ねえさん。優しいのね」
私だけでも彼女に優しくしてやろうと思った。
ある日、お城の舞踏会に誘われた。王子様と騒ぐ母たちのことは別にしても何かいい出会いがあるかもしれない。そう期待した。シンデレラは置いていかれたが仕方ない。だって、あの子はとても可愛いもの。
舞踏会は思ったよりも退屈で早く帰りたかった。そんな舞踏会にハッとするような美しい人が現れた。何となくシンデレラに似ていると感じた。
夜が更けて日が昇ってきた頃、ようやく私たちは帰った。それからはかわりばえしない日常だった。
あの子はとても美しい。心の綺麗な人だ。きっと外に出ればいくらだって男の人が寄ってくるだろう。外に出なくていい。ずっとここにいればいい。
お城から使いの者が来た。何やら舞踏会で会った女性を探しているらしい。国中の女に靴を履かせて。よくわからないが靴が履けた女性を妃にするらしい。それにしても小さな靴で私も姉も、母も当然履けなかった。
でも、シンデレラは履けた。何かの間違いだと姉たちが喚くのに私も入る。そんな、だって、まさか、うそ。
とんとんと話が進み、あの子は王子と結婚するらしい。
「靴が脱げたからってそのままにしないわ。わざと脱いで置いていったの。舞踏会に行けば何とかなると思ったわ。お金で着飾っただけの人に私か負けるはずないもの」
ねえさん、と彼女が私を呼んだ。
「私はずるくて醜い心の歪んだ女だからこれ以上あなたのそばにいられないの。あなたのことが好きだから」
彼女にキスをされて自分の感情に気付いた。彼女の想いを理解したところでもう手遅れだ。
ハッピーエンドでこの話は終わるんだ。頑張ったあの子が幸せになった話として。私はこの想いを一度も口にすることなく終えるのだ。