表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に愛された子供たち  作者: 七星北斗
こちらからお読みください

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/74

七 遠征前の下準備

 模擬戦が終わってから――

 僕が目を覚ましたのは、二日後のことだった。

 ゆっくりと瞼を開く。

 視界いっぱいに広がるのは、病的なほど白い天井。

(……あれ?)

 消毒液の匂い。

 柔らかすぎるベッド。

 どうやら、眠っていたらしい。

 上体を起こし、周囲を見渡した瞬間――目が合った。

「やぁ、白馬君。お目覚めかい?」

 そこには、心配そうな顔をした傭推さんが立っていた。

「うちの医療班は優秀だからね。もう痛くないでしょ?」

「……痛くは、ないですけど」

 そう答えながら、頭を押さえる。

(……怪我?)

 ――ああ、思い出した。

 模擬戦。

 ボス。

 ぼっこぼこ。

「……何だか、記憶が曖昧で」

「まあ、あれだけ派手にやられればね。記憶も飛ぶよ」

 さらっと言わないでほしい。

(少しくらい……手加減って言葉、知らないのかな……)

「それはそうと」

 傭推さんは軽く手を叩いた。

「目覚めたばかりで悪いけど、ボスが話したいそうなんだ。呼んでくるね」

「あ、はい……」

 嫌な予感しかしない。

 傭推さんが部屋を出ていってから、約二十分後。

 ――ドアが勢いよく開いた。

「黒水、元気ー?」

 ブンブンと手を振りながら現れたのは、

 元凶――狂花だった。

「……元気に見えます?」

 正直、げんなりだ。

「模擬戦ですよね!? 僕を殺す気でしたよね!? 少しは手加減してください!」

「殺す気なら、もう死んでるよ」

 即答だった。

「それよりさ」

 狂花はニヤッと笑う。

「聞きたいことがあるんだろ? えーっと……私のスリーサイズだっけ? 上から――」

「違います!!」

 顔が一気に熱くなる。

「僕が聞きたいのは、神についてです! ボスが知ってること、全部教えてください!」

「……あ、そっち?」

 少しだけ、つまらなそうな顔。

「まあ、いいや。私の知ってる範囲でなら、教えてやる」

 狂花は椅子に腰掛け、語り始めた。

「神ってのはな」

「運、才能、畏怖、創造、権力、徳……そういうもんが人に崇拝されて生まれる存在だ」

「……生まれる?」

「そう。神は最初からいたわけじゃない」

 狂花は指を立てる。

「奇跡による神格化。要するに――偶然だ」

「偶然……」

「昔、火を発明した人間がいたろ?」

「いますね……」

「そいつは理解を超えた存在だった。だから人は畏れ、崇めた。それが神だ」

 なるほど、と頷く。

「王や英雄を神にした時代もある。で、負けたらどうなると思う?」

「……悪神?」

「正解。勝ったやつが、新しい神だ」

 淡々とした口調が、逆に怖い。

「私たちの敵はな」

 狂花は、はっきりと言った。

「畏怖による創造で生まれた神だ」

「畏怖……」

「小さい頃、夜中にトイレ行くの怖かったこと、ないか?」

「……あります」

「暗闇に何かいる気がする。それを怖いと思う」

「それも畏怖だ」

 背中が少し寒くなる。

「人は闇を恐れ、光を称える」

「自然という圧倒的な存在を前にしても、神は生まれる」

「それら全部が、畏怖による創造だ」

 狂花は肩をすくめる。

「現代じゃ、宗教ごとに神がいる。自分の信じる神が絶対で、他は全部悪神」

「……じゃあ」

「そう。私たちが戦うのは、いくつもの想像が集まった集合体だ」

 正直――勝てる気がしない。

「……そんな相手に、勝てるんですか?」

「勝算はない」

 即答だった。

「でも、挑まなければ負けはない」

「ただし、勝つこともできない」

 重い沈黙。

「だから、神の子を集める」

 狂花の視線が、僕を射抜く。

「そして――お前には、限界を超えてもらう」

(簡単に言うなぁ……)

「その前に、アンナプルナへ遠征に行く」

「遠征……?」

「安心しろ。今のお前を連れていくほど、私は甘くない」

 ですよね。

「だから」

 ニヤリ。

「死ぬほど修行して、連れていけるレベルにしてやる」

「……努力します」

「うん、頑張れ」

 狂花は立ち上がった。

「今日は飯食って休め。明日から地獄だ」

「私は寝る」

 そう言い残して、部屋を出ていった。

(……ラノベの主人公なら、今頃どうしてるんだろ)

 覚悟を決める?

 燃える?

 叫ぶ?

 僕は――

(神について、もっと知らなきゃ)

 でも、今は無理だ。

 意識が、重い。

 布団を被り、目を閉じる。

 明日から始まる地獄を思いながら――

 僕は、再び眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ