44 甘さと苦さ
その日は雲ひとつない青空で、おでかけするにはもってこいの天気だった。団員の女の子が隣町の人気スイーツが食べたいと言い出し、ミナサや静香も興味を持ち。白馬も半ば強引にスイーツ店に行くこととなった。
スイーツ店に辿り着いた白馬は店の前に並ぶ行列に目眩を感じた。やはり来るべきではなかったと直間的に思った。しかし白馬の気持ちとは裏腹にミナサや静香達の目の輝き、今更帰るとは言えなかった。
「先輩、どうしたんですか、そわそわして。私の魅力に今更気付いてドキドキしちゃいましたか。そういうことならこれでどうです。」
静香は白馬の右腕に腕を絡ませる。それを見ていたミナサは白馬の左腕に体を寄せしがみついた。周りの男性客は羨ましそうに白馬を睨んでいた。白馬は居た堪れなくなり、今すぐに逃げ出す算段が頭の中でぐるぐると同じことを考え続けていた。
それからしばらく時間が経ち、ようやく白馬達の順番が回ってきて、窓際の席を案内される。ミナサはパンケーキ、静香はクレープ。白馬は悩んだ末にチーズケーキを注文した。それぞれの注文したスイーツが運ばれてきてミナサも静香も目をキラキラさせていた。
「クレープのクリームって甘くて美味しいですね。先輩のチーズケーキも美味しそうです。一口ください。私のも一口あげますから。」
仕方なく白馬はフォークでチーズケーキを静香の口元に運ぶと静香は小さく口を開けチーズケーキはフォークから口の中に運ばれる。そして静香はミナサを見るとニヤリと口元を綻ばせた。
「うん、うん、美味しい。先輩のチーズケーキも中々のモノですね。では先輩も、あーん。早く口を開けて下さいよ。」
白馬は渋々口を開けクレープを口にする。クレープの柔らかさや様々な甘味や酸味、純粋に美味しい。これは行列が出来るのも納得だ。ミナサは怒りでプルプル震えながら静香を睨み付けた。
「白馬、私のパンケーキも美味しいよ。一口食べてよ。静香のクレープを食べたんだから、私のパンケーキは食べないなんて選択肢はないよね。」
白馬は冷や汗をかきながら、ミナサが白馬の口元に運んだパンケーキを口にする。上品な甘さ優しい口当たり。今の状況でなければ確かに美味しいのだと言えるだろう。しかしミナサと静香が睨み合い、とても落ち着いて食べれる状況ではない。
一人の学生服を纏った、目付きの悪い茶髪の学生がお店に入ってくる。男は店の中を虚ろな目で一瞥すると舌打ちをして店員を睨み付けた。
「何だこの店は平和ボケに色ボケした奴らばかりで反吐が出る。マトモな奴はおらんのか。下らない幻想に包まれ、法律に守られた甘カスばかりじゃ、つまらんのう。そこの店員、うちのリーダーは甘党でな。クレープのオススメを一つくれんか。」
店員の女性は引きつった顔でクレープを用意し、男は満足した顔で釣りはいらないと千円置いて行った。一体何者なのか。白馬はいずれまた出会う、そんな予感がした。




